病因と細胞死
疾病の成り立ちと回復の促進 / 病因・病態
解説
病気はなぜ起こるのでしょうか。病理学では、その原因を「病因」と呼び、生体側に備わっている内因と、体外から作用する外因とに大きく分けて考えます。さらに、病気の本質的な変化のひとつである「細胞死」にも、計画的に起こるものと事故的に起こるものの二種類があります。ここでは、病因の分類と細胞死の仕組みを順に整理していきましょう。
病因の分類
病因とは、疾病を引き起こす原因のことを指します。これは内因と外因に大別され、実際の発症は両者が相互に作用して起こります。
内因(素因)
内因とは、生体側にあらかじめ備わっている、病気へのかかりやすさを決める因子のことで、素因とも呼ばれます。具体的には、年齢、性別、遺伝素因、内分泌状態、免疫反応、アレルギー体質などが含まれます。たとえば、抗原と自己の抗体が結合してできる免疫複合体は、生体内で産生されて組織障害を引き起こすため、内因に分類されます。
外因
外因は、体外から作用して病気を引き起こす因子で、物理的因子(温度、放射線、外傷など)、化学的因子(薬物、毒物など)、生物学的因子(細菌、ウイルス、真菌、寄生虫など)、栄養的因子に分けられます。
細胞死の種類
細胞死には、計画的に進行するアポトーシスと、受動的に起こるネクローシス(壊死)の二つがあります。両者の違いを理解することは、病理学の基本となります。
アポトーシス
アポトーシスは、遺伝子によって制御された計画的細胞死で、プログラム細胞死とも呼ばれます。個体発生、組織の恒常性維持、免疫系の成熟、腫瘍抑制などに関与しており、胎児期の指の分離や、自己反応性Tリンパ球の除去などが代表例です。細胞は縮小して核が凝縮し、DNAが規則的に断片化してアポトーシス小体となり、マクロファージに貪食されて静かに除去されます。このため、炎症反応を起こさないのが大きな特徴です。経路には、Fasなどのデスレセプターを介する外因性経路と、ミトコンドリアからのシトクロムc放出による内因性経路があり、最終的にカスパーゼが活性化されてDNA断片化が起こります。
ネクローシス
一方のネクローシスは、虚血や外傷など外部からの強い刺激による受動的な細胞死です。細胞は膨化して破裂し、内容物が周囲に放出されるため、炎症反応を引き起こします。
まとめ
病因は生体側の素因である内因と、体外からの外因に分けられ、両者の相互作用で疾病が発症します。免疫複合体は体内で産生されるため内因に含まれる点が重要です。細胞死のうちアポトーシスは遺伝子に制御されたプログラム細胞死であり、細胞縮小とDNA断片化を経てマクロファージに貪食され炎症を起こさずに除去されます。これに対しネクローシスは受動的な細胞死で、細胞膨化と炎症反応を伴う点が決定的に異なります。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
アポトーシスは遺伝子により制御されたである。
- 2.
アポトーシスでは細胞が縮小し、DNAが断片化してとなり、マクロファージに貪食される。
- 3.
アポトーシスはネクローシスと異なり、反応を引き起こさない。
- 4.
虚血や外傷などにより受動的に起こり、細胞膨化と内容物放出を伴う細胞死をという。
- 5.
疾病の原因は生体側にあると、体外から作用する外因に大別される。
- 6.
抗原と自己の抗体が結合してできるは、生体内で産生されるため内因に分類される。
- 7.
外因のうち、細菌・ウイルス・真菌・寄生虫などは因子に分類される。
- 8.
アポトーシスの内因性経路では、ミトコンドリアからが放出され、最終的にカスパーゼが活性化される。
