熱中症と横紋筋融解症の管理
成人看護学 / 周術期・救急
解説
今回は熱中症と横紋筋融解症の管理について解説します。暑熱環境やマラソンなどの激しい運動によって発症する熱中症は、放置すると多臓器障害を引き起こす緊急疾患であり、特に労作性熱中症では横紋筋融解症から急性腎障害へと進展するため、看護師として病態と治療の流れを正確に理解しておくことが重要です。
熱中症の病態と分類
熱中症とは、高温多湿環境への曝露や激しい運動によって体温調節機構が破綻し、体内に熱がこもることで生じる障害の総称です。重症度はⅠ度(軽症:めまい・大量発汗・筋肉痛)、Ⅱ度(中等症:頭痛・嘔吐・倦怠感)、Ⅲ度(重症:意識障害・肝腎機能障害・凝固異常)に分類されます。Ⅲ度では中枢神経症状と多臓器障害を伴い、集中治療の対象となります。マラソンなど激しい運動による発症は労作性熱中症と呼ばれ、若年男性に多く、横紋筋融解症を高頻度に合併します。
横紋筋融解症の病態
横紋筋融解症とは、骨格筋細胞が広範に壊死し、筋細胞内成分が血中に流出する病態です。代表的な所見として、筋逸脱酵素であるクレアチンキナーゼ(CK)の著明高値(基準値約60〜250IU/L)、尿中ミオグロビン陽性、暗赤色尿(コーラ色尿)がみられます。さらに筋細胞内に多く含まれるカリウムが血中へ流出するため高カリウム血症を呈し、心室細動や心静止などの致死性不整脈を引き起こすリスクが高まります。
急性腎障害への進展
血中に流出したミオグロビンは腎の尿細管に沈着して尿細管を閉塞し、急性尿細管壊死による急性腎障害を引き起こします。尿素窒素・クレアチニンの上昇と乏尿がみられ、保存的治療で改善しない場合は持続的血液透析が必要となります。
急性期の治療と看護
急性期治療の柱は、第一に体表冷却や血管内冷却による速やかな冷却、第二に生理食塩水による大量輸液で、尿量2〜3mL/kg/時を目標とします。乏尿に対しては利尿薬ではなく輸液が第一選択である点に注意します。高カリウム血症に対してはグルコン酸カルシウム投与、GI療法、重炭酸ナトリウム投与、必要に応じて透析を行います。尿のアルカリ化はミオグロビンの溶解性を高め、腎障害の予防に有用です。
回復期の退院指導
急性腎障害の回復期では腎機能が完全には戻っていないことが多く、腎臓への負担軽減が指導の中心です。蛋白質の適度な制限(0.6〜0.8g/kg/日が目安)、減塩、適正エネルギー摂取を指導します。生野菜はカリウムが多いため、茹でこぼしや水さらしで調理する工夫を伝えます。また労作性熱中症の既往者には、暑熱下での運動時の水分・電解質補給、休憩、体調管理など再発予防の徹底を指導します。
まとめ
労作性熱中症ではCK高値・ミオグロビン尿・暗赤色尿から横紋筋融解症を、血清カリウム上昇から致死性不整脈リスクを読み取ることが重要です。急性期は冷却と大量輸液、高カリウム血症対策が中心となり、回復期には腎機能保護のための食事・生活指導を行います。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
熱中症の重症度分類で、意識障害・肝腎障害・凝固異常を伴う最重症はである。
- 2.
マラソンなど激しい運動を契機に発症する熱中症をという。
- 3.
骨格筋細胞が広範に壊死し、筋細胞内成分が血中に流出する病態をという。
- 4.
横紋筋融解症で著明高値となる筋逸脱酵素はである。
- 5.
横紋筋融解症で尿中に出現し、暗赤色尿の原因となる物質はである。
- 6.
筋細胞の崩壊により血中に流出し、致死性不整脈を引き起こすリスクとなる電解質異常はである。
- 7.
ミオグロビンが尿細管を閉塞することで発症する腎障害はである。
- 8.
労作性熱中症で乏尿を呈する場合、利尿薬ではなくが第一選択となる。
- 9.
急性腎障害回復期の食事指導では、腎負担軽減のための摂取を適度に制限する。
