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吐血患者の救急対応と意思決定支援

看護の統合と実践 / 救命救急・急変・その他

解説

今回は吐血患者の救急対応と意思決定支援について解説します。

吐血と消化管出血の基礎

吐血とは、口から血液を吐き出す症状のことで、主に上部消化管(食道・胃・十二指腸)からの出血を意味します。胃酸の影響を受けた血液は黒褐色のコーヒー残渣様となり、出血が急激であれば鮮紅色を呈します。 これに対し、口から鮮紅色の血液を喀出する喀血は気道(肺や気管支)からの出血であり、泡沫状で咳嗽を伴う点が吐血と異なります。下血のうち黒色でタール状を呈するものをタール便といい、上部消化管出血で血液が長時間消化管内にとどまり酸化されたために生じます。鮮血便は下部消化管からの出血を示唆します。 食後の心窩部痛に吐血とタール便が加わる場合は、胃潰瘍や胃癌(スキルス胃癌など)による上部消化管出血を疑います。

出血性ショックの病態と評価

大量出血により循環血液量が減少すると、組織への酸素供給が破綻する**循環血液量減少性ショック(出血性ショック)**に陥ります。代表的な徴候として、頻脈、収縮期血圧の低下、顔面蒼白、冷汗、四肢冷感、意識レベル低下、眼瞼結膜の貧血様所見などがみられます。

ショックの5徴候(5P)

ショックを身体所見から把握する指標として5Pが知られています。すなわち、Pallor(蒼白)、Perspiration(冷汗)、Prostration(虚脱)、Pulselessness(脈拍触知不能・微弱)、Pulmonary insufficiency(呼吸不全)の5つです。これらは出血性ショックでも典型的に出現します。

出血量による分類

出血性ショックは出血量に応じてClass I(循環血液量の15%未満)からClass IV(40%超)に分類されます。Class III以上になると収縮期血圧が低下し、脈拍は120回/分を超え、明らかな循環不全所見が揃います。早期にはまず頻脈が現れ、血圧低下は遅れて出現する点に注意が必要です。

救急対応の優先順位

吐血患者への対応はABC(気道Airway・呼吸Breathing・循環Circulation)の安定化が最優先です。吐血による誤嚥を防ぐため、意識レベルが低下している場合は気道確保と側臥位への体位調整を行います。酸素投与を開始し、太い静脈路を2本以上確保したうえで細胞外液(生理食塩水・乳酸リンゲル液など)の急速輸液で循環を補います。必要に応じて輸血を準備します。 バイタルサインと尿量、意識レベルを継続的に観察し、止血のためには上部消化管内視鏡による内視鏡的止血術が第一選択となります。

介護者の急な入院と地域包括支援センター

在宅で介護を担う家族が救急搬送・入院した場合、残された要介護高齢者の生活支援を緊急に調整する必要があります。その中核を担うのが地域包括支援センターです。介護保険法に基づき、原則として中学校区ごとに市町村が設置する高齢者の総合相談窓口です。 配置される3職種は、**保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)**です。主な業務は、総合相談支援、権利擁護(高齢者虐待対応・成年後見制度の活用支援など)、包括的・継続的ケアマネジメント支援、介護予防ケアマネジメントの4つです。 介護者の急な入院時には、緊急ショートステイや小規模多機能型居宅介護の利用調整など、被介護者が安全に生活を継続できる支援を行います。

終末期医療の意思決定支援

重篤な疾患を抱える患者では、終末期の医療をどのように受けるかをあらかじめ話し合っておくことが重要です。

リビングウィル

リビングウィル(living will、生前意思表明書)とは、本人が判断能力を有するうちに、終末期における延命治療の希望や拒否について自由意思で書面化したものをいいます。事前指示書(advance directive)の一種であり、本人の自律的意思を尊重するために用いられます。 日本ではリビングウィルそのものを規定する法律はなく、法的拘束力はありません。また、本人の意思が変わった場合にはいつでも撤回・変更が可能です。医療判断を信頼できる他者に委ねる「持続的代理権委任」もあわせて準備されることがあります。

アドバンス・ケア・プランニング(ACP)

**アドバンス・ケア・プランニング(ACP、人生会議)**とは、患者本人を中心に家族や医療・ケアチームが繰り返し話し合い、将来の医療やケアの方針を共有していくプロセス全体を指します。文書としてのリビングウィルとは異なり、ACPは「話し合いの過程」そのものに価値を置く点が特徴です。2018年の厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」改訂で重要性が強調されました。

まとめ

吐血とタール便は上部消化管出血を示唆し、出血量が多ければ循環血液量減少性ショックに進展します。蒼白・冷汗・虚脱・脈拍微弱・呼吸不全のショック5徴候や、頻脈先行・血圧低下後発の経過を理解し、ABCの安定化と内視鏡的止血につなげることが看護のポイントです。介護者が急に入院した場合は地域包括支援センターが3職種(保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャー)で総合相談・権利擁護・ケアマネジメント支援・介護予防の4業務を担います。終末期医療では、リビングウィルが本人の意思を書面化した事前指示書であり法的拘束力はなく撤回可能であること、ACPが本人・家族・医療者の話し合いのプロセスであることをしっかり区別して理解しておきましょう。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    口から血液を吐き出し、主に食道・胃・十二指腸など上部消化管からの出血を示す症状をという。

  2. 2.

    上部消化管出血で血液が消化管内にとどまり酸化されることで生じる、黒色でタール状を呈する便をという。

  3. 3.

    大量出血により循環血液量が減少し、組織への酸素供給が破綻する病態をという。

  4. 4.

    ショックの5徴候(5P)は、蒼白・冷汗・虚脱・呼吸不全とである。

  5. 5.

    介護保険法に基づき中学校区ごとに市町村が設置する、高齢者の総合相談窓口をという。

  6. 6.

    地域包括支援センターに配置される3職種は、保健師、主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)とである。

  7. 7.

    本人が判断能力を有するうちに、終末期における延命治療の希望や拒否について自由意思で書面化した文書をという。

  8. 8.

    日本においてリビングウィルにはがなく、本人の意思によりいつでも撤回・変更が可能である。

  9. 9.

    患者本人を中心に家族や医療・ケアチームが将来の医療やケアの方針について繰り返し話し合うプロセス全体をという。

吐血患者の救急対応と意思決定支援」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。