StudyNurse

悪性胸膜中皮腫の終末期看護

成人看護学 / 呼吸器系

解説

今回は悪性胸膜中皮腫の終末期看護について解説します。

悪性胸膜中皮腫とは

悪性胸膜中皮腫とは、肺を包む胸膜にある中皮細胞から発生する悪性腫瘍です。胸膜とは胸郭の内側と肺の表面を覆う薄い膜で、ここに腫瘍がびまん性に広がり、胸壁や横隔膜にも浸潤していきます。最大の原因は**アスベスト(石綿)**の吸入曝露であり、建設業・造船業・断熱材製造業など、石綿を扱う職業歴のある人に多く発症します。曝露から発症までの潜伏期間は30〜50年と非常に長く、高齢期になってから発見されるのが特徴です。本疾患は石綿健康被害救済法の対象疾患でもあり、職業歴の聴取が重要です。

主な症状と所見

進行すると胸水貯留・胸痛・呼吸困難・倦怠感・体重減少が出現します。胸部エックス線では胸膜肥厚と肋骨横隔膜角の鈍化(胸水貯留の所見)がみられ、両側下肺野で呼吸音が減弱します。化学療法の効果は限定的で、予後不良の疾患です。

終末期の呼吸困難

終末期では呼吸困難が中心症状となります。呼吸困難は単一の原因で起こるのではなく、ガス交換障害(胸水による肺の圧迫、胸膜肥厚による胸郭運動制限)と、酸素運搬能の低下(がん性貧血によるヘモグロビン低下)が同時に関与します。アセスメントでは血液ガス・SpO2・呼吸音・胸部画像に加え、Hb値も評価することが鉄則です。

症状緩和のケア

体位の工夫

胸水貯留のある患者では仰臥位は横隔膜が押し上げられ呼吸面積が減るため不適です。上体を30〜45度起こしたセミファウラー位をとると、腹部臓器による横隔膜圧迫が軽減し、胸郭が拡張しやすくなります。さらに苦しいときはオーバーテーブルに枕を置いて前傾する起坐位もよく用いられます。前傾姿勢では呼吸補助筋が働きやすく、息苦しさが和らぎます。

酸素療法とモルヒネ

低酸素血症には経鼻カニューレなどによる酸素投与を行います。それでも息切れ感が強い場合はモルヒネなどのオピオイドを用います。モルヒネは呼吸中枢の感受性を低下させ、換気需要を抑えて息切れ感を和らげる作用があり、がん性難治性呼吸困難の標準薬です。少量から導入し、便秘・悪心・眠気などの副作用を観察します。送風や室温・湿度の調整も呼吸困難の体感を軽減するため有効です。

終末期せん妄と家族ケア

終末期にはしばしばせん妄が出現します。せん妄とは、急激に発症する意識・注意・認知の障害で、日内変動を伴うものをいいます。低酸素、オピオイド代謝産物の蓄積、高カルシウム血症、脱水、肝腎機能低下などが複合的に関与して生じ、落ち着きのなさ・つじつまの合わない言動・見当識障害などがみられます。是正可能な原因は是正し、静かで安心できる環境を整えます。 家族は患者の苦しむ姿に強い無力感や悲嘆を抱きます。家族ケアでは、患者の状態をわかりやすく説明した上で、家族が患者のためにできる具体的な関わりを提示することが大切です。手を握る、さするなどのタッチングは非言語的コミュニケーションであり、せん妄や意識低下で言葉の理解が難しい患者にも安心感を与えます。家族にできる役割を伝えることは家族自身の無力感を軽減し、悲嘆過程にも良い影響を与えます。

まとめ

悪性胸膜中皮腫はアスベスト曝露を原因とし、長い潜伏期を経て発症する予後不良の悪性腫瘍です。終末期では胸水と貧血が同時に呼吸困難に寄与するため、Hbを含めた多面的アセスメントが必要です。症状緩和ではセミファウラー位などの体位調整、酸素療法、モルヒネを組み合わせます。せん妄出現時は環境調整を行い、動揺する家族にはタッチングなど具体的な関わり方を伝え、患者と家族の双方を支える視点が国試対策の要となります。

確認問題(穴埋め)

空欄をタップすると答えが表示されます。

  1. 1.

    胸膜の中皮細胞から発生する悪性腫瘍で、アスベスト曝露を主な原因とする疾患をという。

  2. 2.

    悪性胸膜中皮腫の最大の原因物質で、建設業や造船業などで吸入曝露することにより、30〜50年の潜伏期を経て発症の原因となる繊維状鉱物をという。

  3. 3.

    悪性胸膜中皮腫患者の呼吸困難をアセスメントする際、胸水によるガス交換障害だけでなく、酸素運搬能の低下を評価するために必ず確認すべき血液検査値はである。

  4. 4.

    胸水貯留のある患者の呼吸困難緩和に有効で、上体を30〜45度起こすことで横隔膜圧迫を軽減する体位をという。

  5. 5.

    がん患者の難治性呼吸困難に対し、呼吸中枢の感受性を低下させ息切れ感を和らげる目的で少量から用いられるオピオイドはである。

  6. 6.

    急激に発症し、注意・意識・認知の障害と日内変動を伴う症候群で、終末期に低酸素やオピオイド代謝産物の蓄積などにより出現するものをという。

  7. 7.

    意識低下やせん妄により言語的理解が難しい終末期患者に対し、家族が手を握る・さするなど身体接触を通じて安心感を伝える非言語的コミュニケーションをという。

  8. 8.

    胸部エックス線写真で胸水貯留を示唆する所見として、横隔膜と胸壁がつくる鋭い角が消失する所見をという。

悪性胸膜中皮腫の終末期看護」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。