StudyNurse

神経変性疾患の病態と看護

成人看護学 / 脳・神経

解説

今回は神経変性疾患の病態と看護について解説します。神経変性疾患とは、脳や脊髄の特定の神経細胞が原因不明のまま徐々に変性・脱落していく進行性の疾患群のことです。代表的なものに筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病などがあり、看護師国家試験では特にALSと多発性硬化症の病態・症状・看護のポイントが繰り返し問われています。

運動ニューロンと神経伝導の基礎

運動の指令は、大脳皮質運動野から始まり、脊髄前角細胞を経由して末梢の筋肉まで伝わります。このうち、大脳皮質運動野から脊髄前角細胞までを上位運動ニューロン、脊髄前角細胞から末梢の筋肉までを下位運動ニューロンといいます。どちらが障害されるかによって、出現する徴候が異なる点が重要です。

上位運動ニューロン徴候には、痙縮(筋緊張亢進)、腱反射亢進、バビンスキー徴候などの病的反射陽性があります。一方、下位運動ニューロン徴候には、筋萎縮、線維束性収縮(線維束攣縮)、筋力低下、腱反射消失などが含まれます。神経変性疾患の鑑別では、これらの徴候の有無を整理して把握することが基本となります。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)

**筋萎縮性側索硬化症(ALS)**は、上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両方が選択的に変性・脱落する進行性の神経変性疾患です。中年期以降に発症することが多く、原因は不明で根本治療法は確立されていません。

症状の特徴

ALSの最大の特徴は、上位・下位運動ニューロン徴候が同時にみられることです。手指の筋萎縮や線維束性収縮といった下位の症状と、腱反射亢進・痙縮といった上位の症状が同じ患者に共存します。進行に伴って構音障害・嚥下障害といった球麻痺症状が現れ、最終的には呼吸筋麻痺に至り、人工呼吸器の装着が生命予後を左右します。

ALSでは進行しても保たれやすい機能があり、これを四大陰性徴候といいます。具体的には、眼球運動、膀胱直腸機能、感覚、知能の四つで、ここはALSでは原則として障害されにくいとされています。治療薬としてリルゾールやエダラボンが用いられ、進行抑制効果が期待されています。

看護のポイント

ALSでは嚥下機能の低下が進行性に進むため、安全な経口摂取の維持と意思決定支援が大きな課題となります。経口摂取の継続を希望する患者に対しては、**言語聴覚士(ST)**との連携が優先度の高い対応です。STは嚥下造影検査(VF)や嚥下内視鏡検査(VE)による評価、嚥下訓練、食形態(ペースト食やとろみ付与)の提案、頸部前屈位やリクライニング位といった食事姿勢の調整、家族指導までを担います。胃瘻造設や人工呼吸器装着の選択にあたっては、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の視点で患者の意思を継続的に確認することが欠かせません。

多発性硬化症(MS)

多発性硬化症(MS)は、中枢神経系のミエリン(髄鞘)が自己免疫機序によって破壊される脱髄性疾患です。20〜40歳代の女性に多く発症する点も国試では重要な特徴です。

病態と症状

ミエリンは神経軸索を覆い、跳躍伝導により神経伝達速度を高める役割を担っています。これが破壊されると神経伝導が障害され、視神経炎による視力低下、複視、感覚障害、運動麻痺、小脳失調などの症状が時間的・空間的に多発して現れます。中枢神経の異なる部位の病変が、異なる時期に繰り返し出現する点がMSの最大の特徴です。

診断と治療

診断にはMRIが必須で、特にT2強調画像やFLAIR画像で白質の脱髄プラークが高信号域として描出されます。治療は急性期にステロイドパルス療法を行い、再発予防にはインターフェロンβ、フィンゴリモド、ナタリズマブなどの疾患修飾薬が使用されます。なお、抗アクアポリン4(AQP4)抗体陽性で長大な脊髄病変を呈する視神経脊髄炎(NMO)はMSと区別されるべき別疾患であり、鑑別が必要です。

まとめ

神経変性疾患のうちALSは、上位・下位運動ニューロンの両方が侵される進行性疾患で、上位徴候(痙縮・腱反射亢進・病的反射陽性)と下位徴候(筋萎縮・線維束性収縮・筋力低下)が併存し、眼球運動・膀胱直腸機能・感覚・知能は保たれる四大陰性徴候を示します。嚥下障害の進行に対しては言語聴覚士との連携が優先されます。多発性硬化症は中枢神経の脱髄を主体とする自己免疫疾患で、時間的・空間的多発を特徴とし、MRIによる脱髄プラークの検出と急性期のステロイドパルス療法が診療の柱となります。それぞれの病変部位・障害される神経・代表的な症状と治療を整理して理解することが、国試対策の要となります。

確認問題(穴埋め)

空欄をタップすると答えが表示されます。

  1. 1.

    大脳皮質運動野から脊髄前角細胞までを上位運動ニューロンといい、脊髄前角細胞から末梢の筋肉までをという。

  2. 2.

    筋萎縮性側索硬化症(ALS)では、運動ニューロンと下位運動ニューロンの両方が変性・脱落するのが特徴である。

  3. 3.

    ALSで進行しても比較的保たれる機能をまとめてといい、眼球運動・膀胱直腸機能・感覚・知能の四つを指す。

  4. 4.

    ALSでは構音障害や嚥下障害といった症状が出現し、最終的には呼吸筋麻痺に至る。

  5. 5.

    ALS患者が経口摂取の継続を希望している場合、嚥下評価・嚥下訓練・食形態調整を担う職種として優先度が高いのはである。

  6. 6.

    多発性硬化症は中枢神経系のが自己免疫機序により破壊される脱髄性疾患である。

  7. 7.

    多発性硬化症は中枢神経の異なる部位の病変が異なる時期に繰り返し出現することから、性を特徴とする。

  8. 8.

    多発性硬化症の診断にはが有用で、T2強調画像やFLAIR画像で白質の脱髄プラークが高信号として描出される。

  9. 9.

    多発性硬化症の急性期治療として用いられる、副腎皮質ステロイドを大量に短期間投与する治療法をという。

神経変性疾患の病態と看護」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。