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救急外来トリアージ 時間との戦いを見極める

看護師国家試験 第108回 午前 第44問 / 成人看護学 / 急性期・救急・クリティカルケア

国試問題にチャレンジ

108回 午前 第44問

救急外来を受診した成人患者で、治療の緊急度が最も高いのはどれか。

  1. 1.2時間ほど前から右上下肢に力が入らず、ろれつが回らない。
  2. 2.3日前にペットの葬儀が終わり、食欲がなく、夜眠れない。
  3. 3.プールでの日焼けによって背部全体が発赤している。
  4. 4.市販の風邪薬を通常の2倍量服用した。

対話形式の解説

博士 博士

今日は第108回午前44問、救急外来での緊急度判定の問題じゃ。トリアージは看護師の重要な役割で、命を救うための優先順位を瞬時に判断する力が試されるぞ。

アユム アユム

博士、4つの患者さん全員が受診しているわけですよね。どの方から対応すべきか悩みます。

博士 博士

そうじゃな。緊急度とは『時間経過によって生命や臓器の機能が失われるリスク』を指すのじゃ。選択肢のうち、時間との勝負になる病態を選んでみるかね。

アユム アユム

1番の右上下肢の脱力とろれつが回らない…これは脳卒中の症状ですよね。1番だと思います。

博士 博士

正解じゃ!正解は1じゃ。片側性運動麻痺と構音障害が突然出現したら、脳梗塞または脳出血を第一に疑うのじゃ。特に2時間前からという発症時刻が明確な点に注目すべきじゃよ。

アユム アユム

なぜ発症時刻が重要なんですか?

博士 博士

虚血性脳梗塞ではt-PA、つまりアルテプラーゼという血栓溶解薬を発症4.5時間以内に投与することで、閉塞した血管を再開通させ神経症状を劇的に改善できるのじゃ。時間が経つと脳梗塞巣が広がり、投与後の脳出血リスクも高まる。『Time is brain』という言葉があるくらいじゃ。

アユム アユム

FASTというスクリーニングも聞いたことがあります。

博士 博士

そのとおりじゃ。Face=顔のゆがみ、Arm=腕の脱力、Speech=言語障害、Time=発症時刻確認の頭文字を取ったものじゃ。この症例は典型的なArm・Speechの陽性所見じゃの。

アユム アユム

他の選択肢はどう判断すればいいですか?

博士 博士

2のペットの葬儀後の食欲不振と不眠は、ペットロスに関連する悲嘆反応や抑うつ状態じゃ。精神的ケアは大切じゃが命に直結する緊急度は低いのじゃ。

アユム アユム

3の日焼けはどうですか?

博士 博士

背部全体の発赤のみならⅠ度熱傷相当で、冷却と鎮痛で対応できる。水疱やびらんが出ていればⅡ度以上で緊急度が上がるが、本問の記述では緊急度は高くない。

アユム アユム

4の風邪薬を2倍量は中毒になりませんか?

博士 博士

市販感冒薬の2倍量では通常は軽度の眠気などにとどまることが多く、バイタル確認と経過観察で対応できる。ただし大量服薬や意識障害があればアセトアミノフェン中毒などを考えて対応が変わるぞ。

アユム アユム

時間依存性の疾患を優先して考えるんですね。

博士 博士

そうじゃ。脳卒中・急性心筋梗塞・大動脈解離・敗血症などは早期治療で予後が大きく変わる。トリアージでは致死的かつ時間依存性の病態を見逃さない視点が命を救うのじゃ。

POINT

第108回午前44問は救急外来での緊急度判定を問う問題で、正解は1の右上下肢脱力と構音障害の症例です。急性期脳梗塞が強く疑われ、発症4.5時間以内のt-PA療法の適応を考えると最も緊急度が高くなります。トリアージでは時間依存性の致死的疾患を見極める視点が重要で、FASTによる簡便なスクリーニングも活用されます。

解答・解説

正解は 1 です

問題文:救急外来を受診した成人患者で、治療の緊急度が最も高いのはどれか。

解説:正解は 1 です。2時間ほど前から突然右上下肢の脱力と構音障害(ろれつが回らない)が出現しているため、急性期の脳梗塞が強く疑われる状況です。虚血性脳卒中ではt-PA(アルテプラーゼ)静注療法を発症4.5時間以内に開始することで神経学的予後を大きく改善できるため、『Time is brain』と表現されるほど時間との戦いとなります。発症から経過時間が短いほど治療効果が高まり、後遺症を最小限にできる可能性があるため、他の選択肢と比較して最も緊急度が高いと判断されます。

選択肢考察

  1. 1.  2時間ほど前から右上下肢に力が入らず、ろれつが回らない。

    片側運動麻痺と構音障害の急性発症は脳梗塞を強く示唆します。発症4.5時間以内のt-PA適応を考えると最も緊急度が高く、即時画像検査と治療介入が必要です。

  2. × 2.  3日前にペットの葬儀が終わり、食欲がなく、夜眠れない。

    ペットロスに関連する悲嘆反応や抑うつ状態と考えられます。精神的サポートは重要ですが、生命に直結する緊急介入は不要なため救急外来の緊急度としては低いといえます。

  3. × 3.  プールでの日焼けによって背部全体が発赤している。

    発赤のみであればⅠ度熱傷相当で、冷却と鎮痛で対応可能です。水疱やびらんがあればⅡ度以上になりますが、本設問では緊急度は高くありません。

  4. × 4.  市販の風邪薬を通常の2倍量服用した。

    市販感冒薬の2倍量では通常は中毒症状は軽度で、バイタル確認と経過観察で対応できることが多いです。大量服薬や意識障害があれば別ですが、緊急度は相対的に低くなります。

救急外来のトリアージでは『ABCDEアプローチ』とともに時間依存性疾患を見逃さない視点が重要です。脳卒中はFAST(Face=顔面の麻痺、Arm=腕の脱力、Speech=言語障害、Time=発症時刻確認)で簡便にスクリーニングできます。発症時刻が不明な場合でも、最後に普段どおりだった時間を確認することでt-PA適応を検討します。

救急外来における緊急度判定(トリアージ)で、時間依存性の致死的疾患を正しく見極められるかを問う問題です。