せん妄予防の基本を身につけよう
看護師国家試験 第108回 午前 第65問 / 成人看護学 / 急性期・救急・クリティカルケア
国試問題にチャレンジ
入院患者のせん妄(delirium)に対する予防的介入で適切なのはどれか。
- 1.可能な限り離床を促す。
- 2.昼間は部屋を薄暗くする。
- 3.家族や知人の面会は必要最低限にする。
- 4.夕方に短時間の睡眠をとることを勧める。
対話形式の解説
博士
今日は入院患者のせん妄予防について学ぶぞ。せん妄は高齢者を中心に入院中によくみられる重要な症候じゃ。
サクラ
博士、せん妄ってどういう状態ですか?
博士
せん妄は急性に発症する可逆性の注意と意識の障害で、幻覚・妄想・興奮・錯覚などを伴うんじゃ。夜間に悪化しやすいのが特徴じゃぞ。
サクラ
予防のために何をすればいいんでしょう?
博士
この問題の正解は1番「可能な限り離床を促す」じゃ。早期離床はせん妄予防の基本中の基本なんじゃ。
サクラ
なぜ離床が重要なんですか?
博士
安静臥床が続くと筋力低下、感覚刺激の減少、見当識の混乱、睡眠リズムの崩れが生じ、これらがせん妄の発症リスクを高めるからじゃ。
サクラ
選択肢2の「昼間は部屋を薄暗くする」はどうですか?
博士
これは逆じゃ。昼間は日光を取り入れて明るくし、夜間は静かで暗くすることで概日リズムを整えるのが原則じゃ。昼を暗くすると昼夜逆転を招いてせん妄を悪化させるぞ。
サクラ
選択肢3の「家族や知人の面会を必要最低限にする」は?
博士
これも誤りじゃ。家族の面会はむしろせん妄予防に有効なんじゃ。
サクラ
どうしてですか?
博士
なじみのある人の存在が安心感を与え、写真や時計、カレンダーなど見当識の手がかりも家族が持ってきてくれる。これがreorientation(見当識の再獲得)につながるんじゃ。
サクラ
選択肢4の「夕方の短時間の睡眠」は?
博士
これも誤り。夕方の仮眠は夜間の入眠困難を招き、睡眠の質を下げて昼夜逆転につながるんじゃ。昼寝するなら午後早めに短時間で切り上げるのが基本じゃ。
サクラ
せん妄の原因は他にどんなものがありますか?
博士
「DELIRIUM」という覚え方があるぞ。薬剤、電解質異常、睡眠不足、感染、尿閉や便秘、虚血、脱水、代謝異常などじゃ。これらを修正することが重要じゃ。
サクラ
多因子で発症するんですね。
博士
その通り。非薬物的介入では早期離床、時計・カレンダー設置、眼鏡・補聴器の装着、家族協力、夜間静穏化、水分補給などを組み合わせた「HELP」のような多因子介入プログラムが有効とされておる。
サクラ
看護師の日常ケアそのものが予防になるんですね。
博士
まさにその通りじゃ。看護師の観察力と環境調整がせん妄予防の鍵を握るぞ。
POINT
せん妄予防の基本は早期離床と昼夜のメリハリある環境調整です。昼は日光を取り入れ活動を促し、夜は静かで暗い環境を整え、家族の面会や見当識の手がかりを活用します。夕方の仮眠や過度の面会制限は逆効果で、薬剤・電解質・睡眠・感染などの多因子への総合的介入が必要です。看護師の日常ケアそのものがせん妄予防の中核となります。
解答・解説
正解は 1 です
問題文:入院患者のせん妄(delirium)に対する予防的介入で適切なのはどれか。
解説:正解は 1 です。せん妄は急性・可逆性の注意と意識の障害であり、入院患者では安静臥床・不動化が主要な発症因子の一つとなるため、可能な限り早期離床を促し、日中の活動性を高めて昼夜のメリハリを作ることが非薬物的予防の基本となります。
選択肢考察
-
○ 1. 可能な限り離床を促す。
早期離床は身体機能の維持、見当識の保持、睡眠・覚醒リズムの調整に有効であり、せん妄予防の非薬物的介入として最も推奨されるアプローチです。
-
× 2. 昼間は部屋を薄暗くする。
昼間は日光を取り入れて明るくし、夜間は静かで暗い環境にすることで概日リズムを整えるのが原則です。昼間を暗くすると昼夜逆転を助長しせん妄を悪化させます。
-
× 3. 家族や知人の面会は必要最低限にする。
家族の面会はなじみの人の存在による安心感と見当識の手がかり(写真・時計・カレンダー等)を提供するため、せん妄予防にむしろ有効です。制限する根拠はありません。
-
× 4. 夕方に短時間の睡眠をとることを勧める。
夕方の仮眠は夜間の入眠困難・睡眠の質低下を招き、昼夜逆転につながるためせん妄リスクを高めます。昼寝は午後早めに短時間に留めるのが基本です。
せん妄の予防には「DELIRIUM」因子(Drug、Electrolyte、Lack of sleep、Infection、Retention、Ischemia、Underhydration、Metabolicなど)の修正可能因子への介入が重要です。非薬物的介入としては、早期離床、時計・カレンダーの設置、眼鏡・補聴器の装着、家族の協力、夜間の静穏化、十分な水分摂取などが推奨され、これらを組み合わせた多因子介入プログラム(HELPなど)が有効とされています。
せん妄予防における非薬物的介入として、生活リズムの維持と早期離床の重要性を理解しているかを問う問題です。
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