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侵襲にさらされた身体はなぜ燃え続けるのか 急性期の異化亢進を読み解く

看護師国家試験 第109回 午前 第41問 / 成人看護学 / 急性期・救急・クリティカルケア

国試問題にチャレンジ

109回 午前 第41問

急性期患者の生体反応で正しいのはどれか。

  1. 1.異化が亢進する。
  2. 2.症状の変化は緩やかである。
  3. 3.サイトカイン分泌が低下する。
  4. 4.副腎皮質ホルモンの分泌が低下する。

対話形式の解説

博士 博士

今日は急性期患者の生体反応について学ぶぞ。手術や大きな外傷を受けた直後の身体で何が起こっているか、イメージはつくかの?

サクラ サクラ

えっと、身体が頑張ってなんとか回復しようとしている感じですか…?具体的にはよくわかりません。

博士 博士

その通り、身体は『生き延びるモード』に切り替わるのじゃ。視床下部-下垂体-副腎皮質系が活性化して、コルチゾールやカテコールアミン、ADH、アルドステロンが大量に出る。これがいわゆるストレス反応じゃ。

サクラ サクラ

ストレスホルモンが出ると、身体のなかではどんな変化が起こるんでしょう?

博士 博士

まず血糖を上げるために糖新生が進み、肝臓でアミノ酸や乳酸から新しいブドウ糖が作られる。同時に脂肪組織では脂肪分解が進み遊離脂肪酸が増える。筋肉の蛋白も分解され、窒素が尿に排泄される量が増えるのじゃ。

サクラ サクラ

つまり身体の中の蓄えをどんどん使っている状態ですね。これを『異化』と呼ぶんですか?

博士 博士

その通り。高分子を低分子に分解してエネルギーを取り出す反応が異化、逆に材料を組み立てるのが同化じゃ。急性期は異化が優位になる。

サクラ サクラ

サイトカインっていう言葉もよく聞きますが、急性期ではどうなっているんですか?

博士 博士

マクロファージなどからIL-1、IL-6、TNF-αといった炎症性サイトカインが放出されて、発熱やCRP上昇、食欲低下を引き起こす。全身性炎症反応症候群、いわゆるSIRSの本体じゃ。

サクラ サクラ

じゃあ選択肢の『サイトカイン分泌が低下する』や『副腎皮質ホルモン分泌が低下する』は逆ってことですね。

博士 博士

うむ、どちらも急性期には亢進する。症状変化も『緩やか』ではなくむしろ急激じゃから、頻回のバイタル観察と早期介入が求められる。

サクラ サクラ

Mooreの4相分類というのを学んだ記憶があります。今回の話はその第1相にあたるんですよね?

博士 博士

よく覚えておる。Mooreの異化期は術後およそ2〜4日続き、その後ホルモン分泌が落ち着く転換期、組織修復が進む同化期、最後に脂肪蓄積期と進むのじゃ。

サクラ サクラ

看護としては、異化亢進の時期にどんな点に注意すればよいですか?

博士 博士

血糖コントロール、十分な蛋白・エネルギー投与、疼痛管理による過剰なストレス反応の抑制、感染兆候の早期発見が柱になる。侵襲が大きいほど回復にも時間がかかるから、全身状態を俯瞰して観察するのじゃ。

POINT

急性期の生体反応は、侵襲による恒常性の乱れを取り戻そうとする防御機構であり、コルチゾールやカテコールアミンなどの神経内分泌反応と炎症性サイトカインの放出によって特徴づけられる。その結果、糖新生や脂肪分解、蛋白分解が亢進し、全身は異化優位の激しい代謝亢進状態に陥る。症状変化は急激で、SIRSから多臓器不全へ進展するリスクもあるため、バイタル観察と早期介入、適切な栄養・血糖管理が看護の中核となる。Mooreの4相分類と異化反応の理解は、周術期管理から集中治療まで応用できる基礎知識として必ず押さえておきたい。

解答・解説

正解は 1 です

問題文:急性期患者の生体反応で正しいのはどれか。

解説:正解は 1 です。手術・外傷・感染・熱傷などの侵襲を受けた急性期には、生体は恒常性を維持するため神経・内分泌系と免疫系を総動員して対応する。視床下部-下垂体-副腎皮質系が活性化し、コルチゾール・カテコールアミン・ADH・アルドステロンなどのストレスホルモンが大量に分泌されるとともに、IL-1・IL-6・TNF-αなどの炎症性サイトカインが放出される。その結果、基礎代謝が著しく亢進し、糖新生の増大・耐糖能低下・脂肪分解促進・蛋白異化亢進といった一連の異化優位な代謝状態となる。蛋白異化により筋蛋白が分解されアミノ酸が肝での糖新生や創傷治癒の材料として動員されるため、侵襲が大きいほど体重減少や窒素負平衡が顕著になる。

選択肢考察

  1. 1.  異化が亢進する。

    侵襲に対する生体反応として副腎皮質ホルモンやカテコールアミン、炎症性サイトカインが過剰に分泌され、蛋白・脂肪の分解とエネルギー消費が増大する異化亢進状態となる。

  2. × 2.  症状の変化は緩やかである。

    急性期は病態が短時間で大きく変動するのが特徴で、バイタルサインや意識レベルも急激に変化するため頻回の観察が必要となる。

  3. × 3.  サイトカイン分泌が低下する。

    組織傷害や感染に反応してマクロファージなどからIL-6やTNF-αなどの炎症性サイトカインが大量に産生され、全身の炎症反応を駆動する。

  4. × 4.  副腎皮質ホルモンの分泌が低下する。

    ストレスに対してACTHが上昇しコルチゾール分泌が著増する。むしろ長期の大量侵襲では副腎疲弊が問題となる場合はあるが、急性期の基本反応は亢進である。

Mooreは術後の生体反応を4相(異化期・転換期・同化期・脂肪蓄積期)に分類しており、侵襲直後の数日は異化期にあたる。このとき尿中窒素排泄量が増加し血糖が上昇しやすいため、周術期管理では血糖コントロールと十分な蛋白・エネルギー投与が重要となる。過剰な炎症反応が持続するとSIRSから多臓器不全(MODS)に進展することがあり、早期の感染源制御と循環・呼吸管理が鍵となる。

侵襲に対する生体反応の基本である「異化亢進」「ホルモン・サイトカイン分泌亢進」「急激な症状変化」を理解しているかが問われる。