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初めての在宅介護〜家族みんなで支える仕組みづくり

看護師国家試験 第106回 午後 第44問 / 地域・在宅看護論 / 地域・在宅看護の対象と概念

国試問題にチャレンジ

106回 午後 第44問

Aさん(80歳、女性)は、要介護2となったため長男家族(長男50歳、長男の妻45歳、18歳と16歳の孫)と同居することとなった。在宅介護はこの家族にとって初めての経験である。 Aさんの家族が新たな生活に適応していくための対処方法で最も適切なのはどれか。

  1. 1.活用できる在宅サービスをできる限り多く利用する。
  2. 2.家族が持つニーズよりもAさんのニーズを優先する。
  3. 3.介護の負担が特定の家族に集中しないように家族で話し合う。
  4. 4.10代の子どもを持つ家族の発達課題への取り組みを一時保留にする。

対話形式の解説

博士 博士

今回は状況設定問題じゃ。80歳で要介護2のAさんが長男家族と同居を始めるケース。まず家族構成を確認しよう。

アユム アユム

長男50歳、長男の妻45歳、孫が18歳と16歳ですね。計5人家族になるわけですね。

博士 博士

そうじゃ。ここで家族看護の視点が問われる。家族は一つの「システム」で、メンバーが増えれば全員が新しい役割に適応する必要があるのじゃ。

アユム アユム

要介護2って、どのくらいの状態ですか?

博士 博士

立ち上がりや歩行に支えが必要で、排泄・入浴に一部介助がいるレベルじゃな。自立はできないが、寝たきりでもない。介護にそれなりの時間が必要な状態じゃ。

アユム アユム

選択肢の1番「できる限り多くのサービスを利用」は、一見良さそうですが…

博士 博士

多ければ良いわけではないのじゃ。家族の生活リズム、経済状況、本人の希望に合わせて必要なものを選ぶ。過剰なサービスは家族の主体性を奪うこともある。

アユム アユム

2番の「Aさんのニーズを優先」はどうですか?

博士 博士

これは家族看護の原則に反する。在宅介護では本人も家族も支援対象じゃ。家族が犠牲になる介護は必ず破綻し、虐待や介護殺人にもつながりかねん。本人と家族のニーズを調整するのが看護師の役割じゃ。

アユム アユム

4番の「子どもの発達課題を保留」はなぜダメなんですか?

博士 博士

18歳と16歳は思春期〜青年期で、自立・進学・アイデンティティ形成という大事な発達課題に取り組む時期じゃ。これを保留にするのは本人の発達を阻害する。近年は「ヤングケアラー」問題が注目されておって、子どもに過度な介護役割を担わせないよう配慮が必要なのじゃ。

アユム アユム

ヤングケアラーって、最近よく聞きますね。

博士 博士

家族のケアを担う18歳未満の子どものことじゃ。本人の学業、友人関係、心理的発達に大きな影響を及ぼすため、社会的支援が必要とされておる。

アユム アユム

だから正解は3番「家族で話し合う」なんですね。

博士 博士

その通りじゃ。介護は長期戦。一人に負担が集中すると必ず破綻する。家族全員で役割分担、得意分野、時間の使い方を共有し、話し合うことが持続可能な介護の基本じゃ。

アユム アユム

看護師としてはどう支援すればいいですか?

博士 博士

家族カンファレンスの場を設けたり、地域包括支援センターやケアマネと連携したり、レスパイトケア(ショートステイやデイサービス)を紹介したり、家族の心理的サポートを行ったりすることじゃな。

アユム アユム

介護は家族全体のライフサイクルの課題なんですね。

博士 博士

うむ、家族の成長の機会でもあるのじゃ。

POINT

在宅介護を新たに始める家族への支援では、介護負担の分散と家族全体のケアが基本原則となります。介護が特定の一人(多くは女性)に集中すると、介護者の疲弊、家族内葛藤、虐待リスクの上昇、介護崩壊を招くため、家族全員で役割を話し合うことが重要です。本人のニーズだけでなく家族のニーズも尊重し、子どもや孫の発達課題との両立を図ります。特に近年はヤングケアラー問題への配慮も重要な視点です。看護師は家族カンファレンスの促進、地域包括支援センターとの連携、レスパイトケアの紹介などを通じて、長期にわたる介護を持続可能にする仕組みづくりを支援します。

解答・解説

正解は 3 です

問題文:Aさん(80歳、女性)は、要介護2となったため長男家族(長男50歳、長男の妻45歳、18歳と16歳の孫)と同居することとなった。在宅介護はこの家族にとって初めての経験である。 Aさんの家族が新たな生活に適応していくための対処方法で最も適切なのはどれか。

解説:正解は 3 です。在宅介護が始まる家族にとって重要なのは、介護負担が特定の一人(しばしば長男の妻など嫁にあたる立場)に集中しないよう家族全員で役割分担を話し合うことである。介護の担い手が固定化すると、介護者の心身の疲弊(介護バーンアウト)、家族内葛藤、虐待リスクの上昇などを招く。家族システム論の視点では、ライフサイクルの変化に家族全員で適応することが、健全な家族機能維持の鍵となる。

選択肢考察

  1. × 1.  活用できる在宅サービスをできる限り多く利用する。

    サービスを多く入れればよいわけではない。本人・家族のニーズに合わせて必要なサービスを選び、家族の生活リズムや経済面とも調整しながら利用することが大切。過剰なサービスは家族の主体性を損なうこともある。

  2. × 2.  家族が持つニーズよりもAさんのニーズを優先する。

    在宅介護では介護を受ける本人だけでなく、家族全体が支援対象となる。家族が犠牲になる介護は長続きせず、虐待や介護崩壊を招く。本人と家族の双方のニーズを調整することが重要。

  3. 3.  介護の負担が特定の家族に集中しないように家族で話し合う。

    介護は長期にわたるため、一人に負担が集中すると破綻しやすい。家族員それぞれの役割・得意分野・時間的余裕を共有し、話し合って分担することが、家族の適応と介護継続の鍵となる。

  4. × 4.  10代の子どもを持つ家族の発達課題への取り組みを一時保留にする。

    10代の子ども(思春期〜青年期)は親からの自立、進学、アイデンティティ形成など重要な発達課題に取り組む時期。これを保留にすることは本人の発達を阻害するため不適切。介護と発達課題の両立を支援する。

要介護2は、立ち上がりや歩行に支えが必要で、排泄・入浴に一部介助が必要なレベル。家族システム論では、家族を一つのシステムと捉え、ライフサイクルの変化(高齢者の同居開始など)は家族全員の役割再編成を要する。介護者の負担軽減には、レスパイトケア(短期入所、デイサービス)、地域包括支援センターの活用、ヤングケアラー問題への配慮なども重要。孫世代(18歳・16歳)が過度な介護役割を担う「ヤングケアラー」化を防ぐ視点も現代的課題。

在宅介護を開始する家族への支援の基本原則(負担分散・家族全体のケア・発達課題の尊重)を問う問題。家族看護の視点が鍵。