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入院当日から退院を考える?高齢者看護で大切な視点

看護師国家試験 第112回 午前 第56問 / 老年看護学 / 健康状態・受療状況に応じた看護

国試問題にチャレンジ

112回 午前 第56問

入院中の高齢者への看護師の対応で適切なのはどれか。

  1. 1.入院当日から複数の看護師が関わる。
  2. 2.1回の訪室で多くの情報を聴取する。
  3. 3.1日のスケジュールは口頭で説明する。
  4. 4.退院後の生活を予測して情報収集する。

対話形式の解説

博士 博士

今日は入院中の高齢者への看護師の対応について学ぶぞ。高齢者の特性を踏まえるとどの選択が適切か見えてくるのじゃ。

アユム アユム

高齢者が入院すると、環境が変わって混乱しやすいイメージがあります。

博士 博士

その通りじゃ。慣れない場所、慣れない人、慣れないスケジュールの中でせん妄や認知機能の一時的低下が起こりやすい。だから入院当日から多数のスタッフが関わると混乱を助長してしまうのじゃ。

アユム アユム

それで選択肢1は誤りなんですね。受け持ち看護師が中心になって関わるのが良いわけですね。

博士 博士

そうじゃ。顔なじみの少数のスタッフから始め、徐々に関係性を広げるのがコツじゃ。

アユム アユム

選択肢2の「1回の訪室で多くの情報を聴取」はどうですか?

博士 博士

これも不適切じゃ。高齢者は疲労しやすく、集中力も続きにくい。たくさん質問すると答えが曖昧になり、かえって情報の質が落ちる。優先度を決めて分割して聴取するのが適切じゃ。

アユム アユム

スケジュールは口頭で説明すればいいのでは?

博士 博士

それも不十分じゃ。加齢に伴い短期記憶の低下、聴力低下、処理速度の低下があるため、口頭のみだと情報が定着しにくい。大きめの文字で書いたスケジュール表を併用し、ベッドサイドに掲示するのが効果的じゃ。

アユム アユム

視覚情報と聴覚情報を組み合わせるんですね。

博士 博士

その通り。さらに時計やカレンダーを置いて見当識を促す環境整備も、せん妄予防として重要じゃ。

アユム アユム

残った選択肢4「退院後の生活を予測して情報収集する」が正解ですね。

博士 博士

そう。これが一番大事な視点じゃ。高齢者の入院は「入院関連機能障害」といって、安静臥床や環境変化でADLが低下するリスクが高い。

アユム アユム

入院したら元気がなくなって帰れなくなる、というやつですね。

博士 博士

それじゃ。だから入院当日から「この人はどんな生活に戻るのか」を把握する必要がある。本人の希望、家族の介護力、住環境、社会資源の利用状況、かかりつけ医、経済状況などを包括的にアセスメントするのじゃ。

アユム アユム

入院時支援加算という言葉も聞いたことがあります。

博士 博士

それは入院早期から退院支援を始める体制に対する診療報酬上の評価じゃ。多職種(看護師・MSW・リハビリ職)が連携して退院後の生活を見据えた支援を行う仕組みじゃ。

アユム アユム

早期離床やリハビリも、退院後の生活を想定して計画するんですね。

博士 博士

その通り。「自宅の玄関の段差は何cmか」「トイレまでの距離は」「階段はあるか」といった具体的情報が、入院中のリハビリ目標の設定に直結する。

アユム アユム

高齢者看護は「治す」だけでなく「生活を支える」視点が不可欠なんですね。

POINT

高齢者の入院看護では、環境変化に伴うせん妄や入院関連機能障害のリスクに配慮し、少人数の受け持ち看護師が中心となって関係性を築き、情報は分割して聴取し、重要事項は視覚的資料で補う配慮が求められます。さらに入院当日から退院後の生活像を見据え、本人の希望・家族の介護力・住環境・社会資源を包括的にアセスメントすることが、早期離床・ADL維持・スムーズな在宅復帰につながります。入院時支援加算に象徴されるように、退院支援は入院初日から始まる多職種協働のプロセスです。看護師は「治療を支える」と同時に「生活を支える」視点で、高齢者のQOL維持に貢献する役割を担います。

解答・解説

正解は 4 です

問題文:入院中の高齢者への看護師の対応で適切なのはどれか。

解説:正解は 4 です。高齢者の入院支援では、急性期治療の提供と並行して「退院後にどのような生活に戻るのか」を入院当日から予測し、本人の希望・家族の介護力・住環境・利用可能な社会資源を把握することが不可欠です。これを入院時支援加算に代表される退院支援の基本姿勢といい、退院後のQOL維持とスムーズな在宅移行を実現する鍵となります。

選択肢考察

  1. × 1.  入院当日から複数の看護師が関わる。

    高齢者は環境変化に適応しづらく、多人数と一度に関わるとせん妄や混乱を招きやすい。入院当日は受け持ち看護師など少人数が中心となり、徐々に関係性を広げる方が望ましい。

  2. × 2.  1回の訪室で多くの情報を聴取する。

    高齢者は疲労しやすく、一度に多量の質問をすると集中力が低下し正確な情報が得られない。優先度の高い情報から分割して聴取し、複数回の訪室で関係性を深めながら情報収集する。

  3. × 3.  1日のスケジュールは口頭で説明する。

    加齢に伴う短期記憶の低下・聴力低下・認知機能の変化により、口頭のみの情報伝達は定着しにくい。大きめの文字の書面やスケジュール表を併用して視覚的に情報提示するのが適切。

  4. 4.  退院後の生活を予測して情報収集する。

    高齢者の入院は生活機能低下のリスクが高く、入院当日から退院後の生活像を見据えて情報収集を行うことが、早期離床・ADL維持・スムーズな在宅復帰につながる。

高齢者の入院関連機能障害(hospitalization-associated disability)の予防が重要視されており、安静臥床・環境変化・栄養低下・多剤併用により、入院中にADLが低下するリスクがある。入院時からの退院支援では、本人・家族の意向、家屋構造、同居者の介護力、経済状況、既存の介護サービス利用状況、かかりつけ医などを包括的に把握する。また、せん妄予防として見当識を促す環境整備(時計・カレンダー・自然光)、家族の面会促進、不要な身体拘束の回避も重要。

高齢者看護の基本姿勢として、入院当日からの退院後の生活を見据えた情報収集・アセスメントが求められることを問う問題。