ポリファーマシー 〜「数」ではなく「害」がポイント〜
看護師国家試験 第114回 午前 第59問 / 老年看護学 / 健康状態・受療状況に応じた看護
国試問題にチャレンジ
ポリファーマシーの説明で正しいのはどれか。
- 1.医療者の指示どおりに服薬しない状況
- 2.多剤併用による有害な事象が生じている状態
- 3.認知機能の低下により服薬管理が困難な状態
- 4.処方されている薬の内容を理解していない状況
対話形式の解説
博士
今日はポリファーマシーについて学ぶぞ。
サクラ
ポリファーマシーって「薬の数が多すぎる状態」ですよね?
博士
それは半分正解で半分違う。語源は「poly(複数)」+「pharmacy(薬剤)」じゃが、定義は「多剤併用に伴って薬物有害事象、相互作用、アドヒアランス低下、医療費増加などの臨床的問題が生じている状態」じゃ。
サクラ
つまり数が多いだけではポリファーマシーとは言わない?
博士
その通り。問題なく管理できていれば、たとえ薬剤数が多くてもポリファーマシーとは呼ばない。逆に5剤でも有害事象があればポリファーマシーじゃ。
サクラ
目安はあるんですか?
博士
厚労省の指針では6種類以上で有害事象が増加することが示されておる。ただし「6剤以上=必ずポリファーマシー」ではない点に注意じゃ。
サクラ
選択肢を確認します。「医療者の指示どおりに服薬しない状況」というのは?
博士
それはノンアドヒアランス、つまり服薬アドヒアランス不良の説明じゃ。ポリファーマシーとは別概念じゃ。
サクラ
アドヒアランスとコンプライアンスの違いを教えてください。
博士
コンプライアンスは「指示通りに服薬する」という受動的な姿勢、アドヒアランスは「治療方針を理解し納得した上で主体的に服薬する」という能動的な姿勢じゃ。今は後者が重視される。
サクラ
「多剤併用による有害な事象が生じている状態」が正解ですね。
博士
その通り。これがポリファーマシーの定義じゃ。
サクラ
「認知機能の低下により服薬管理が困難な状態」は?
博士
これはアドヒアランス低下の一要因じゃ。ポリファーマシーの定義ではない。
サクラ
「薬の内容を理解していない」というのは?
博士
これも服薬コンプライアンスや患者教育の課題で、ポリファーマシーとは別じゃ。
サクラ
高齢者でポリファーマシーが多い理由は?
博士
複数の慢性疾患、複数医療機関の受診、薬物代謝・排泄機能の低下、認知機能低下が重なるからじゃ。
サクラ
対策はあるんですか?
博士
お薬手帳の活用、かかりつけ薬剤師の促進、処方の重複・相互作用チェック、一包化や服薬カレンダーの活用、多職種カンファレンスでの処方見直しじゃな。
サクラ
看護師の役割は大きいですね。
博士
その通り。バイタルサインや生活機能の変化を最も近くで観察できるのは看護師。「薬の効きすぎ」や「ふらつき増加」などのサインに気付き、医師・薬剤師と連携して処方適正化につなげるのが大事じゃ。
サクラ
STOPP/STARTクライテリアって聞いたことがあります。
博士
高齢者で中止すべき薬・追加すべき薬を整理した基準じゃ。日本の指針もこれを参考にしておるぞ。
POINT
ポリファーマシーは単に薬剤数が多い状態ではなく、多剤併用に伴って薬物有害事象、相互作用、服薬アドヒアランス低下、医療費増加などの臨床的問題が生じている状態を指します。高齢者では複数の慢性疾患、複数医療機関の受診、薬物代謝・排泄機能の低下が重なり、特に注意が必要です。看護師はバイタルサイン、ふらつきや認知機能の変化、ADL低下などのサインから有害事象を早期に察知し、お薬手帳の活用や多職種連携を通じて処方の適正化に貢献することが求められます。アドヒアランスやコンプライアンスといった類似概念と区別して理解することが、患者中心の薬物療法支援の第一歩です。
解答・解説
正解は 2 です
問題文:ポリファーマシーの説明で正しいのはどれか。
解説:正解は 2 です。ポリファーマシー(polypharmacy)は単に薬剤数が多いことだけを指すのではなく、「多剤併用に伴って薬物有害事象、相互作用、服薬アドヒアランスの低下、医療費増大などの臨床的に問題のある状態が生じていること」を意味する。厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針」では、薬剤数の目安として6種類以上で有害事象が増加するとされるが、本質は「数」ではなく「有害事象が生じている状態」である点を理解する必要がある。
選択肢考察
-
× 1. 医療者の指示どおりに服薬しない状況
これはノンアドヒアランス(服薬アドヒアランス不良)の説明である。患者が治療方針を理解・同意した上で主体的に服薬することをアドヒアランス、その不良状態をノンアドヒアランスと呼ぶ。
-
○ 2. 多剤併用による有害な事象が生じている状態
これがポリファーマシーの定義。多剤併用そのものではなく、それに伴って薬物有害事象・相互作用・服薬管理困難・医療費増加などの問題が生じている状態を指す。
-
× 3. 認知機能の低下により服薬管理が困難な状態
認知機能低下による服薬管理困難はアドヒアランス低下の一要因である。ポリファーマシーの定義そのものではない。
-
× 4. 処方されている薬の内容を理解していない状況
これも患者教育・服薬コンプライアンスに関する課題であり、ポリファーマシーの定義ではない。
高齢者では薬物代謝・排泄機能の低下、腎機能低下、複数の慢性疾患、複数医療機関受診により多剤併用が起こりやすい。STOPP/STARTクライテリアやBeers基準などで高齢者で慎重に投与すべき薬剤が示されている。看護援助のポイントは、(1)お薬手帳の活用とかかりつけ薬局の促進、(2)処方の重複・相互作用・有害事象のスクリーニング、(3)服薬支援具(一包化、服薬カレンダー)の活用、(4)生活習慣・認知機能・嚥下機能の評価、(5)多職種カンファレンスでの処方見直し(処方の適正化)。
ポリファーマシーを「単に薬の数が多い状態」と誤解せず、「多剤併用に伴う臨床的問題が生じている状態」と理解できているかを問う問題。
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