虐待を受けた高齢者を守る 措置入所先はどこ?
看護師国家試験 第114回 午後 第29問 / 老年看護学 / 高齢者の家族への支援
国試問題にチャレンジ
高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律<高齢者虐待防止法>で保護された高齢者が入所する社会福祉施設はどれか。
- 1.軽費老人ホーム
- 2.有料老人ホーム
- 3.特別養護老人ホーム
- 4.サービス付き高齢者向け住宅
対話形式の解説
博士
今日は高齢者虐待防止法で「保護された高齢者が入所する社会福祉施設」について整理するぞ。
サクラ
まず高齢者虐待防止法って、いつできた法律なんですか?
博士
2005年に成立し、2006年から施行された法律じゃ。65歳以上の高齢者に対する養護者からの虐待や、施設従事者による虐待を防ぐことを目的としておる。
サクラ
虐待にはどんな種類があるんですか?
博士
身体的、心理的、性的、経済的、そして介護放棄(ネグレクト)の5類型じゃ。これは児童虐待や障害者虐待でもほぼ共通じゃ。
サクラ
虐待を見つけたら通報の義務があるんですよね?
博士
生命や身体に重大な危険があるときは「通報義務」、それ以外は「努力義務」じゃ。通報先は市町村や地域包括支援センターになる。
サクラ
じゃあ、保護された高齢者はどこに入るんですか?
博士
選択肢に「社会福祉施設」とある点に注目じゃ。社会福祉法に基づく施設で、行政が措置入所できる場所のことじゃ。
サクラ
特別養護老人ホームが該当するんですね。
博士
その通り。介護保険法上は介護老人福祉施設と呼ばれ、要介護高齢者の常時介護に対応できる。市町村長は緊急保護の必要があると判断したとき、ここに措置入所させることができる。
サクラ
有料老人ホームやサ高住はなぜダメなんですか?
博士
どちらも民間事業者が運営する居住施設で、社会福祉施設ではない。措置入所の枠組みに含まれていないのじゃ。
サクラ
軽費老人ホームは社会福祉施設なのに違うんですね。
博士
軽費老人ホームは低所得高齢者の自立した生活支援が目的で、介護機能が限定的。重度の要介護や認知症がある高齢者の緊急保護には不向きじゃ。
サクラ
ほかに虐待対応で看護師が関わる場面はありますか?
博士
病院では入院時の不自然な外傷や栄養状態、衣服の汚れ、家族の言動から虐待を疑う場面が多い。地域包括支援センターと連携して早期介入することが大切じゃ。
サクラ
措置入所までいかなくても、ショートステイなどで一時的に保護することもあるんですよね。
博士
その通り。緊急性に応じて短期入所、措置入所、面会制限、立入調査と段階的に対応する。看護師は患者の身体所見と心理状態の両方を観察し、組織的に動くことが求められる。
サクラ
法律と臨床現場が、しっかりつながっているんですね。
POINT
高齢者虐待防止法は、養護者や介護従事者からの虐待から高齢者を守るために2006年に施行された法律で、市町村長に分離保護の権限を与えています。措置入所先となる社会福祉施設の代表が特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)であり、要介護高齢者に常時介護を提供できる体制から、緊急保護の受け皿として位置づけられています。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は社会福祉施設ではなく対象外で、軽費老人ホームも介護機能の点で適しません。看護師は不自然な外傷や栄養状態、家族関係の異常から虐待を早期に察知し、地域包括支援センターと連携して保護につなげる役割が求められます。
解答・解説
正解は 3 です
問題文:高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律<高齢者虐待防止法>で保護された高齢者が入所する社会福祉施設はどれか。
解説:正解は 3 です。高齢者虐待防止法では、虐待により生命または身体に重大な危険が及んでいる高齢者を養護者から分離し、市町村長の権限で老人短期入所事業や養護老人ホーム、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)等の社会福祉施設に措置入所させることが定められている。特別養護老人ホームは介護保険法上の介護老人福祉施設にあたる社会福祉施設で、要介護高齢者に対する常時介護や生活支援、医療的ケアを包括的に提供できることから、緊急一時保護先として位置づけられている。
選択肢考察
-
× 1. 軽費老人ホーム
低所得高齢者向けに自治体補助のある社会福祉施設だが、自立した生活が前提で介護機能が限定的。虐待を受けた高齢者の緊急保護先としては想定されていない。
-
× 2. 有料老人ホーム
民間事業者が運営する居住施設で、社会福祉施設には分類されない。措置入所の対象施設に該当しない。
-
○ 3. 特別養護老人ホーム
介護保険法上の介護老人福祉施設にあたる社会福祉施設で、要介護高齢者の常時介護に対応する。市町村長による措置入所の主要な受け入れ先となる。
-
× 4. サービス付き高齢者向け住宅
高齢者住まい法に基づく登録制の「住まい」であり、社会福祉施設ではない。緊急保護のための措置入所先には該当しない。
高齢者虐待は身体的虐待・心理的虐待・性的虐待・経済的虐待・介護放棄(ネグレクト)の5類型に分類され、養護者と養介護施設従事者等による虐待が法の対象となる。発見者には市町村への通報義務(生命身体に重大な危険があるときは義務、それ以外は努力義務)があり、相談窓口は地域包括支援センターや市町村高齢者窓口が中心である。緊急時には立入調査や面会制限、措置入所などの権限が市町村長に与えられている。
高齢者虐待防止法における措置入所先として法令上想定される社会福祉施設を識別できるかを問う問題。
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