高齢者虐待調査を読み解く 〜養護者による虐待が圧倒的に多い理由〜
看護師国家試験 第114回 午前 第57問 / 老年看護学 / 高齢者の家族への支援
国試問題にチャレンジ
令和3年度(2021年度)の高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査で、養介護施設従事者等による高齢者虐待について正しいのはどれか。
- 1.虐待の種類は心理的虐待が最も多い。
- 2.被虐待高齢者は女性が全体の90%を占める。
- 3.発生要因は養介護施設従事者等のストレスの問題が最も多い。
- 4.虐待件数は養介護施設従事者等による虐待より養護者によるものが多い。
対話形式の解説
博士
今日は高齢者虐待に関する令和3年度の調査結果を読み解くぞ。
サクラ
高齢者虐待防止法って2006年からですよね。
博士
その通り。正式名は「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」じゃ。虐待を5類型に分類しておる。
サクラ
どんな分類ですか?
博士
身体的虐待、心理的虐待、性的虐待、介護等放棄(ネグレクト)、経済的虐待の5つじゃ。
サクラ
調査では誰による虐待が多いんですか?
博士
令和3年度では養介護施設従事者等によるもの739件に対し、養護者(家族など)によるものは16,426件。圧倒的に養護者による虐待が多い。
サクラ
20倍以上ですね。なぜそんなに多いんでしょう?
博士
在宅介護では家族が長時間1対1で介護することが多く、介護疲れ、孤立、経済的負担、認知症対応の難しさなどが重なるからじゃ。
サクラ
選択肢を見ましょう。「虐待の種類は心理的虐待が最も多い」というのは?
博士
誤りじゃ。施設従事者等による虐待では身体的虐待が約51.5%で最も多く、心理的虐待は約38.1%で2位じゃ。
サクラ
「被虐待高齢者は女性が全体の90%」というのは?
博士
女性が約71.3%を占めるが、90%には達しない。男女差はあるが90%は誇張じゃ。
サクラ
女性が多い理由は?
博士
高齢者人口に占める女性の割合がそもそも高いことと、認知症や要介護状態にある女性が長期間介護を受けることが背景にある。
サクラ
「発生要因はストレスが最多」はどうですか?
博士
これも誤りじゃ。最多は「教育・知識・介護技術等に関する問題」で約56.2%、ストレスは約22.9%で2位じゃ。
サクラ
教育や技術の問題が最多というのは意外でした。
博士
知識や技術が不十分だと、認知症のBPSDなどの行動に対し適切に対応できず、結果として虐待につながる。研修や教育体制の整備が施設の責務じゃ。
サクラ
看護師ができることは?
博士
看護師は高齢者虐待防止法上の通報努力義務者じゃ。生命・身体に重大な危険があれば通報義務がある。
サクラ
通報先はどこですか?
博士
市町村または地域包括支援センターじゃ。匿名でも可能で、通報者の保護も法律で定められておる。
サクラ
早期発見と通報が大事なんですね。
博士
その通り。さらに在宅介護者への支援、レスパイトケア、地域包括ケアシステムの活用など、虐待を防ぐ仕組みを社会全体で整えることが必要じゃ。
POINT
令和3年度の調査によれば、養介護施設従事者等による虐待739件に対し、養護者による虐待は16,426件と圧倒的に多く、これは在宅介護者の負担と孤立を反映しています。施設従事者による虐待では身体的虐待が約51.5%で最多、発生要因は「教育・知識・介護技術等の問題」が約56.2%で最も多くなっています。看護師は高齢者虐待防止法上の通報義務者として、身体所見・心理状態・介護環境を総合的にアセスメントし、市町村や地域包括支援センターへ早期に情報共有することが求められます。虐待は孤立した家族・施設環境の中で起こりやすいため、地域包括ケアシステムやレスパイトケアの活用など社会全体での支援体制づくりが重要です。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:令和3年度(2021年度)の高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査で、養介護施設従事者等による高齢者虐待について正しいのはどれか。
解説:正解は 4 です。厚生労働省「令和3年度 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査」によれば、虐待判断件数は養介護施設従事者等によるもの739件に対し、養護者(家族など)によるものは16,426件で、養護者によるものが圧倒的に多い。
選択肢考察
-
× 1. 虐待の種類は心理的虐待が最も多い。
養介護施設従事者等による虐待で最も多いのは身体的虐待で約51.5%、次いで心理的虐待約38.1%、介護等放棄(ネグレクト)約23.9%の順。心理的虐待は2位。
-
× 2. 被虐待高齢者は女性が全体の90%を占める。
被虐待高齢者の女性割合は約71.3%であり、男性より多いが90%には達しない。
-
× 3. 発生要因は養介護施設従事者等のストレスの問題が最も多い。
発生要因として最も多いのは「教育・知識・介護技術等に関する問題」で約56.2%、次いで「職員のストレスや感情コントロールの問題」約22.9%、「組織風土・職員間の関係・管理体制等」約21.5%の順。ストレスは2位。
-
○ 4. 虐待件数は養介護施設従事者等による虐待より養護者によるものが多い。
令和3年度の虐待判断件数は、養介護施設従事者等によるもの739件、養護者によるもの16,426件で、養護者による虐待が圧倒的に多い。
高齢者虐待防止法(2006年施行)では、虐待を(1)身体的虐待、(2)心理的虐待、(3)性的虐待、(4)介護等放棄(ネグレクト)、(5)経済的虐待の5類型に分類している。発見した者には市町村への通報義務(生命・身体に重大な危険がある場合)または通報努力義務がある。看護師は通報義務者として、患者・利用者の身体所見の変化、心理状態、家族の介護負担などを総合的にアセスメントし、市町村・地域包括支援センターへの早期通報を行う必要がある。なお調査結果は年度ごとに変動するため、最新値を国試対策で必ず確認したい。
高齢者虐待調査の最新統計(令和3年度)から、虐待件数・種類・発生要因・被虐待者像の主要数値を読み取れるかを問う問題。養護者による虐待が圧倒的に多いという基本構造を押さえる。
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