高齢者の性を語る:セクシュアリティとQOLの深いつながり
看護師国家試験 第109回 午前 第51問 / 老年看護学 / 高齢者の理解と生活
国試問題にチャレンジ
高齢者の性について正しいのはどれか。
- 1.女性の性交痛は起こりにくくなる。
- 2.男性は性ホルモンの分泌量が保たれる。
- 3.高齢になると異性に対する羞恥心は減退する。
- 4.セクシュアリティの尊重はQOLの維持に影響する。
対話形式の解説
博士
今回は高齢者の性について学ぶぞ。国試では避けて通れんテーマじゃ。
サクラ
高齢者の性…って、なんだか扱いにくいテーマに感じます。
博士
そう感じる人が多いからこそ問われるのじゃよ。まず大前提として、セクシュアリティというのは性行為のことだけを指すのではない。
サクラ
というと?
博士
WHOの定義では、性別・性的指向・性自認・エロティシズム・親密さ・喜びなど、人間の存在の中心的側面すべてを含むとされておる。つまり人格の一部なのじゃ。
サクラ
なるほど、年齢に関係なくその人らしさを形づくるものなんですね。
博士
その通り。では選択肢を見ていこう。1の「女性の性交痛は起こりにくくなる」はどうかな。
サクラ
えっと…閉経でエストロゲンが減りますよね。確か腟が乾燥しやすくなると習いました。
博士
よくできた。萎縮性腟炎が起こり、むしろ性交痛は起きやすくなる。潤滑剤やエストロゲン局所療法が有効な場合もある。
サクラ
2の「男性は性ホルモンの分泌量が保たれる」はどうですか?
博士
男性も加齢でテストステロンは低下するぞ。LOH症候群といって、抑うつ・倦怠感・性欲低下などが出ることもある。女性より緩やかとはいえ「保たれる」は誤りじゃ。
サクラ
3の羞恥心が減退するというのも違和感があります。
博士
うむ、むしろ身体の衰えを見られたくないと感じる人も多い。同性介助やプライバシー保護は看護の基本じゃ。
サクラ
となると正解は4ですね。セクシュアリティの尊重はQOLに影響する。
博士
その通り。個人の価値観、パートナーとの関係、性自認などを尊重する姿勢が、自尊心や生きがいを支える。
サクラ
高齢者施設でもパートナーとの面会時間やプライバシーに配慮されているのはそういう意味なんですね。
博士
最近ではLGBTQの高齢者への配慮も重要課題じゃ。看護師は偏見なく一人ひとりのセクシュアリティを尊重せねばならん。
POINT
高齢者の性に関する問題では、セクシュアリティを「人格の一部」と捉え、QOL維持に不可欠な要素として尊重する姿勢が問われます。女性では閉経後のエストロゲン低下により腟の乾燥・性交痛が生じやすく、男性もテストステロンの緩やかな低下(LOH症候群)がみられるなど、加齢に伴う身体的変化を正しく理解することが前提です。羞恥心は加齢で減退するとは限らず、むしろ身体機能の低下を他者に見られることへの抵抗感が強まることもあり、プライバシー配慮や同性介助の重要性が高まります。看護師は「高齢者に性はない」という偏見を持たず、個人の価値観・パートナー関係・性自認を支える関わりを通じてQOL向上に貢献する役割を担っています。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:高齢者の性について正しいのはどれか。
解説:正解は 4 です。セクシュアリティとは、性別・性的指向・性自認・性的な役割や表現・身体的接触や親密さへの欲求など、人間の存在そのものに関わる広い概念である。年齢を重ねても個人のセクシュアリティは失われず、それを周囲が尊重し、羞恥心やプライバシーに配慮したケアを行うことはQOL(生活の質)の維持・向上に大きく寄与する。「高齢者に性的関心はない」という思い込み(エイジズム)を退け、本人の価値観や生き方を支えることが看護の基本姿勢となる。
選択肢考察
-
× 1. 女性の性交痛は起こりにくくなる。
閉経に伴いエストロゲン分泌が低下すると、腟粘膜は萎縮し、分泌液も減少する。その結果、腟の乾燥・弾力性低下が起こり、むしろ性交痛(性交疼痛障害)は生じやすくなる。
-
× 2. 男性は性ホルモンの分泌量が保たれる。
男性も加齢とともにテストステロンの分泌量は緩やかに低下する。女性ほど急激ではないが、LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)として抑うつ・性欲低下・勃起機能低下などが生じうる。
-
× 3. 高齢になると異性に対する羞恥心は減退する。
羞恥心は加齢により減退するとは限らず、むしろ身体の変化や機能低下を他者に見せることへの抵抗感が強まる場合もある。ケア場面では同性介助の配慮やプライバシー保護が重要である。
-
○ 4. セクシュアリティの尊重はQOLの維持に影響する。
セクシュアリティは人格の一部であり、年齢や健康状態にかかわらず尊重されるべきものである。尊重された関わりは自尊心・生きがい・QOLの向上につながる。
WHOはセクシュアリティを「人間の中心的側面をなすもので、性・ジェンダー・性的指向・エロティシズム・喜び・親密さ・生殖を含む」と定義している。介護・看護場面では、異性介助の回避、陰部洗浄時のプライバシー保護、パートナーとの面会時間の確保など具体的配慮が求められる。またLGBTQの高齢者への理解も、近年重視されているテーマである。
高齢者のセクシュアリティを「QOLに関わる人格的側面」として尊重する看護観が問われる一問。身体的変化の正しい理解とエイジズムの排除が鍵。
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