ワクチンと抗体産生の免疫学
看護師国家試験 第111回 午前 第27問 / 人体の構造・機能 / 生体の防御機構
国試問題にチャレンジ
ワクチン接種後の抗体産生について正しいのはどれか。
- 1.ワクチン内の抗原を提示するのは好中球である。
- 2.抗原に対して最初に産生される抗体はIgAである。
- 3.抗原に対して血中濃度が最も高くなる抗体はIgMである。
- 4.同じワクチンを2回接種すると抗原に対する抗体の産生量が増加する。
対話形式の解説
博士
今日はワクチン接種後の抗体産生についてじゃ。免疫の仕組みはちょっと複雑じゃが、順を追って整理しよう。
サクラ
はい、選択肢を見ると免疫グロブリンの知識も必要そうですね。
博士
そうじゃ。正解は4の「同じワクチンを2回接種すると抗原に対する抗体の産生量が増加する」じゃ。
サクラ
これがブースター効果というものですね。
博士
そのとおり。初回接種では抗体産生まで1〜2週間かかり主にIgMが作られる。これを一次応答という。
サクラ
2回目ではどうなるんですか?
博士
2回目以降はメモリーB細胞が待機しておるから、素早く大量の抗体を作り出せる。これを二次応答といい、主にIgGが高親和性で産生されるのじゃ。
サクラ
新型コロナワクチンも複数回接種しましたよね。
博士
そうじゃ、ブースター接種で抗体価を高く維持することが感染予防や重症化予防の鍵となる。
サクラ
選択肢1の「抗原提示するのは好中球」は違うんですね。
博士
好中球は貪食・殺菌を担当する自然免疫の主役で、抗原提示は行わん。抗原提示細胞(APC)は樹状細胞、マクロファージ、B細胞じゃ。
サクラ
抗原提示とはどんなことをするんですか?
博士
取り込んだ抗原を細胞表面のMHC分子に載せてT細胞に見せることじゃ。これにより獲得免疫のスイッチが入るのじゃ。
サクラ
選択肢2の「最初に作られる抗体はIgA」は?
博士
これは誤り。初回の抗原曝露で最初に産生されるのはIgMじゃ。IgAは粘膜や母乳に多く、局所免疫と乳児の受動免疫を担う抗体じゃ。
サクラ
選択肢3の「血中濃度が最も高いのはIgM」は?
博士
これも誤り。血中で最も多いのはIgGで、全体の約70〜75%を占める。胎盤を通過する唯一の抗体でもあり、母体から胎児へ免疫を渡す役割があるのじゃ。
サクラ
5種類の免疫グロブリンを整理してもらえますか?
博士
よかろう。IgGは血中最多・胎盤通過・二次応答の主役。IgMは五量体で感染初期に産生。IgAは粘膜・分泌液・母乳。IgEはI型アレルギーと寄生虫感染に関与。IgDは機能が未解明部分が多い、といった具合じゃ。
サクラ
ワクチンの種類も覚えておくべきですね。
博士
うむ、弱毒生ワクチン(麻しん、風しん、BCG、水痘など)、不活化ワクチン(インフルエンザ、B型肝炎、不活化ポリオなど)、トキソイド(破傷風、ジフテリア)、mRNAワクチン(新型コロナ)などがある。生ワクチンは1回で長期免疫、不活化は複数回接種が必要じゃ。
サクラ
免疫記憶と抗体の種類、しっかり整理して覚えます。
博士
その調子じゃ。獲得免疫は臨床のあらゆる場面で関わるから、基本原理を押さえておくのじゃよ。
POINT
ワクチンの2回目接種では免疫記憶によりメモリーB細胞が速やかに活性化し、初回よりも多量で高親和性のIgG抗体を産生する二次応答が起こります。これがブースター効果です。抗原提示は樹状細胞・マクロファージ・B細胞が行い、好中球は関与しません。初回応答で最初に出るのはIgM、血中で最も多いのはIgGです。免疫グロブリンの種類とワクチン分類を理解することが感染予防の実践に重要です。
解答・解説
正解は 4 です
問題文:ワクチン接種後の抗体産生について正しいのはどれか。
解説:正解は 4 です。同じ抗原に2回目以降曝露すると、免疫記憶によりメモリーB細胞が速やかに活性化して、初回(一次応答)よりも大量かつ高親和性の抗体(主にIgG)を短期間で産生します。これを二次応答(ブースター効果)と呼び、ワクチンの追加接種の根拠となっています。
選択肢考察
-
× 1. ワクチン内の抗原を提示するのは好中球である。
抗原提示を行うのは樹状細胞、マクロファージ、B細胞などの抗原提示細胞(APC)です。好中球は貪食・殺菌を担う自然免疫の細胞で、抗原提示機能は持ちません。
-
× 2. 抗原に対して最初に産生される抗体はIgAである。
初回の抗原曝露(一次応答)で最初に産生される抗体はIgMです。IgAは粘膜面や母乳に多く、局所免疫を担います。
-
× 3. 抗原に対して血中濃度が最も高くなる抗体はIgMである。
血中濃度が最も高い抗体はIgG(約70〜75%)です。IgMは感染初期に一過性に上昇しますが、血中総量としてはIgGが最大です。
-
○ 4. 同じワクチンを2回接種すると抗原に対する抗体の産生量が増加する。
2回目接種では免疫記憶により二次応答が起こり、初回よりも速く大量の抗体(主にIgG)が産生されます。これがブースター効果の原理です。
免疫グロブリンは5種類あります。IgG(最多、胎盤通過)、IgM(五量体、初期応答)、IgA(粘膜・母乳)、IgE(I型アレルギー)、IgD(機能未解明部分多い)。ワクチンには弱毒生ワクチン、不活化ワクチン、トキソイド、mRNAワクチンなどがあり、種類により追加接種の必要性が異なります。
ワクチン接種後の獲得免疫の機序、抗原提示細胞の種類、各免疫グロブリンの特徴、二次応答によるブースター効果を問う総合問題です。
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