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筋肉はなぜ縮む?「滑り説」で読み解く骨格筋収縮のしくみ

看護師国家試験 第115午前26

国試問題にチャレンジ

115午前26

骨格筋の収縮で正しいのはどれか。

  1. 1.アクチンがATPを消費する。
  2. 2.細胞外カルシウムイオンが必要である。
  3. 3.筋収縮の結果、グリコゲンが蓄積される。
  4. 4.ミオシンフィラメントの長さは変化しない。

対話形式の解説

博士博士
今日は骨格筋の収縮について学ぶぞ。筋肉が縮むって、実は「筋繊維そのものが縮んでいる」わけではないんじゃ。
サクラサクラ
えっ、そうなんですか?縮むって言うから、てっきりゴムみたいに筋繊維が短くなるんだと思ってました。
博士博士
ふふ、多くの人がそう思いがちじゃな。実は筋肉の中にはアクチンという細いフィラメントと、ミオシンという太いフィラメントの2種類があってな、この2つが互いに滑り込んで重なりを増やすことで、全体として短くなって見えるのじゃ。これを「滑り説(フィラメント滑走説)」と言うんじゃよ。
サクラサクラ
なるほど!フィラメント自体の長さは変わらないんですね。じゃあ、滑るためのエネルギーはどこから来るんですか?
博士博士
いい質問じゃ。エネルギーはATPじゃ。ATPを分解してエネルギーを取り出すのはミオシン頭部、つまりミオシン側じゃ。アクチンはATPを消費しないんじゃよ。
サクラサクラ
ミオシン頭部って、よく図で「手」みたいに描かれてる部分ですね。
博士博士
その通り。ミオシン頭部はATPを分解して首を振るような動き(パワーストローク)をして、アクチンをぐっと引き寄せる。これが繰り返されることで筋肉が縮むのじゃ。
サクラサクラ
じゃあ、何がきっかけで収縮が始まるんですか?神経の指令だけでは説明できない気がします。
博士博士
鋭いのう。鍵となるのはカルシウムイオンじゃ。神経からの信号が筋線維を電気的に興奮させると、筋小胞体という細胞内の貯蔵庫からCa²⁺が放出される。このCa²⁺がトロポニンというタンパク質に結合することで、アクチンとミオシンが結合できるようになるんじゃ。
サクラサクラ
あれ、Ca²⁺は細胞の外から入ってくるんじゃないんですか?
博士博士
骨格筋では基本的に細胞内の筋小胞体からじゃ。これが心筋とは違うところでな、心筋は細胞外Ca²⁺の流入が引き金になる「Ca²⁺誘発性Ca²⁺放出」という仕組みを持っておる。だから「骨格筋=筋小胞体」「心筋=細胞外も重要」と分けて覚えるとよい。
サクラサクラ
なるほど、整理できました!ところで、サルコメアの構造で、収縮するとどこが短くなるんですか?
博士博士
サルコメアにはA帯、I帯、H帯という領域があってな、収縮するとI帯とH帯は短くなるが、A帯(ミオシンの長さに相当)は変わらない。これが「ミオシンフィラメントの長さは変化しない」につながるのじゃ。
サクラサクラ
試験ではここが狙われそうですね。ちなみに、運動した後に筋肉がだるくなるのは、グリコゲンが減るからですか?
博士博士
その通り。筋収縮はATPを大量に消費するので、ATPを再合成するためにグリコゲンが分解されて糖に変わり、解糖系でエネルギーに変わる。つまり収縮で「蓄積」されるのではなく「消費」されるんじゃよ。
サクラサクラ
最後に1つ。亡くなった方の体が硬くなる「死後硬直」も、筋肉のしくみと関係しているんですか?
博士博士
そう、ATPが枯渇するとミオシン頭部がアクチンから離れられなくなり、硬直が起こるんじゃ。生きている間はATPがあるからこそ筋肉はゆるむこともできる。生命活動の根本にATPがあるということがよくわかるじゃろ。
サクラサクラ
筋肉のしくみって、ATP・Ca²⁺・フィラメントの動きが全部つながっているんですね。すごく面白いです!

POINT

骨格筋収縮のメカニズム(滑り説、ATPを使うのはミオシン、Ca²⁺の供給源は筋小胞体)に関する基本事項を問う問題。「フィラメント自体は縮まず、互いに滑って重なる」という滑走説の本質を押さえているかが鍵。

解答・解説

正解は4です

問題文:骨格筋の収縮で正しいのはどれか。

解説:正解は 4 です。骨格筋の収縮は、Huxleyらによって提唱された「滑り説(フィラメント滑走説)」によって説明されます。筋原線維を構成する太いフィラメント(ミオシン)と細いフィラメント(アクチン)が互いに滑り込み、両者の重なり合う部分が増えることでサルコメア(筋節)全体が短縮します。このとき、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントそれぞれの長さ自体は変化しません。短くなるのはサルコメアのうちI帯やH帯であり、A帯(ミオシンの長さに相当)は一定のままです。これが「ミオシンフィラメントの長さは変化しない」が正しい理由です。

選択肢考察

  1. ×1.  アクチンがATPを消費する。

    ATPを加水分解して収縮のエネルギーを生み出すのはミオシン頭部(クロスブリッジ)であり、アクチンではない。ミオシン頭部にはATPase活性があり、ATP→ADP+Piの分解により首振り運動(パワーストローク)を起こし、アクチンを引き寄せる。アクチンは結合相手としての役割を担い、ATPは消費しない。

  2. ×2.  細胞外カルシウムイオンが必要である。

    骨格筋の収縮で利用されるカルシウムイオンは、主に細胞内の筋小胞体から放出される。運動神経からのアセチルコリン放出→終板電位→筋線維の活動電位→T管伝導→筋小胞体からのCa²⁺放出という経路で、Ca²⁺がトロポニンCに結合し収縮が始まる。心筋では細胞外Ca²⁺の流入がトリガーとなる(Ca²⁺誘発性Ca²⁺放出)が、骨格筋では細胞外Ca²⁺は必須ではない。

  3. ×3.  筋収縮の結果、グリコゲンが蓄積される。

    筋収縮はATPを大量に消費する過程であり、ATP再合成のためにグリコゲンはむしろ分解(解糖系)されてエネルギー源となる。蓄積ではなく消費が正しい。激しい運動後はグリコゲンが枯渇し、休息と栄養補給によって再合成・蓄積される。

  4. 4.  ミオシンフィラメントの長さは変化しない。

    滑り説により、アクチンとミオシンの両フィラメントは互いの間を滑り込むだけで、フィラメント自体の長さは変わらない。短縮するのはサルコメア全体(I帯・H帯)であり、A帯(ミオシンの長さ)は不変。これが骨格筋収縮の基本原理である。

骨格筋収縮の流れを順序立てて理解しておくと応用問題に強くなる。①運動神経終末からアセチルコリン放出→②筋線維膜の脱分極(活動電位)→③T管を介して筋小胞体へ興奮伝導→④筋小胞体からCa²⁺放出→⑤Ca²⁺がトロポニンCに結合→⑥トロポミオシンが移動しアクチンの結合部位が露出→⑦ミオシン頭部がアクチンに結合→⑧ATP加水分解で首振り運動(パワーストローク)→⑨フィラメントが滑り込みサルコメア短縮、という流れである。サルコメアの構造では、Z線とZ線の間が1サルコメア、ミオシンのある領域がA帯、アクチンのみの領域がI帯、A帯中央のミオシンのみの領域がH帯。収縮時はI帯とH帯が狭くなるが、A帯の幅は変わらないのがポイント。死後硬直はATP欠乏によりミオシンがアクチンから離れられなくなるために起こる現象で、滑り説とセットで覚えておきたい。

骨格筋収縮のメカニズム(滑り説、ATPを使うのはミオシン、Ca²⁺の供給源は筋小胞体)に関する基本事項を問う問題。「フィラメント自体は縮まず、互いに滑って重なる」という滑走説の本質を押さえているかが鍵。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。