ROM訓練とMMT
成人看護学 / 運動器
解説
今回はROM訓練とMMTについて解説します。これらは、寝たきりや麻痺のある患者さんに対するリハビリテーション看護の基本であり、関節の動きと筋力を客観的に評価・維持するために欠かせない技術です。
ROM(関節可動域)の基本
ROMとは Range of Motion の略で、関節が動くことのできる角度の範囲のことをいいます。単位は度で表され、解剖学的肢位(直立し手のひらを前に向けた姿勢)を0度として、そこからどれだけ動かせるかを測定します。たとえば肘関節の屈曲は0〜145度、肩関節の屈曲は0〜180度が正常範囲です。
測定にはゴニオメーターと呼ばれる角度計を用い、5度刻みで記録します。基準は日本整形外科学会と日本リハビリテーション医学会が共同で定めており、全国どこで測っても同じ評価ができるように標準化されています。
自動運動・他動運動・自動介助運動
関節を動かす方法は3つに分けられます。患者さん自身の力だけで動かすものを自動運動(active ROM)、介助者が患者の関節を動かすものを他動運動(passive ROM)といいます。さらに、患者さんの力に介助者が手を添えて動かすものを自動介助運動といいます。麻痺などで自力で動かせない患者さんには他動運動が、少し力が出る患者さんには自動介助運動が選ばれます。
ROM訓練の目的と方法
ROM訓練の目的は、関節拘縮の予防、関節機能の維持、筋の短縮予防、循環の改善、そしてADL(日常生活動作)の維持です。寝たきりの患者さんや麻痺のある患者さんでは、動かさないことで関節が固まり拘縮を起こしてしまうため、1日2〜3回、生理的可動域内でゆっくりと行います。
他動運動を行うときの原則は重要です。まず、動かす関節の中枢側(近位)をしっかり支持し、末梢側(遠位)をゆっくり動かすことが基本です。痛みを誘発しない範囲で愛護的に行い、急激に動かさないようにします。急に動かすと**筋スパズム(防御性収縮)**や組織損傷を起こし、かえって可動域を悪化させてしまいます。患者さんが息を止めないよう、深呼吸を促しながら行うこともポイントです。
麻痺側の肩関節は亜脱臼を起こしやすいため、腕を引っ張らず、肩甲骨ごと支えるように扱います。また、脊髄損傷や骨折の急性期、関節炎の急性期では自己判断でROM訓練を行わず、必ず医師の指示を確認します。
MMT(徒手筋力テスト)
MMTは Manual Muscle Test の略で、徒手的に筋力を評価する方法です。0から5までの6段階で判定します。
0はZeroで筋収縮がまったく見られない状態、1はTraceで筋収縮は触知できるが関節運動は起こらない状態、2はPoorで重力を除けば関節運動が可能な状態、3はFairで重力に抗して関節を動かせる状態、4はGoodで中等度の抵抗に抗して動かせる状態、5はNormalで正常な筋力です。
臨床的に重要なのは、日常生活動作の自立にはおおむね3(Fair)以上の筋力が必要であるという点です。2以下では介助や補助具が必要となります。より細かく評価したい場合には、4−(フォアマイナス)や3+(スリープラス)のように+/−を付けて表すこともあります。
まとめ
ROMは関節の動く範囲をゴニオメーターで5度刻みに測定する指標で、解剖学的肢位を0度とします。ROM訓練では中枢側を支持し末梢側をゆっくり動かすこと、痛みを誘発しないことが原則で、麻痺側の肩は亜脱臼に注意します。MMTは0〜5の6段階で筋力を評価し、ADL自立には3以上が必要です。これらは患者さんの機能を守るための基本的な看護技術として、確実に押さえておきましょう。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
ROMとは関節が動くことのできる範囲のことであり、単位はで表す。
- 2.
ROMの測定にはと呼ばれる角度計を用い、5度刻みで記録する。
- 3.
患者自身の力で関節を動かす運動をといい、介助者が動かす運動をという。
- 4.
他動運動では関節の側を支持し、側をゆっくり動かす。
- 5.
急激にROM訓練を行うと、筋の防御性収縮であるを引き起こし、可動域を悪化させる。
- 6.
麻痺側の肩関節はを起こしやすいため、支持の仕方に注意する。
- 7.
MMTは0〜5の段階で筋力を評価する徒手筋力テストである。
- 8.
MMTで重力に抗して関節運動が可能なレベルは(Fair)であり、ADLの自立にはおおむねこのレベル以上が必要とされる。
