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感覚生理(痛覚・嗅覚・味覚)

人体の構造・機能 / 脳神経・感覚器

解説

感覚生理とは、外界や体内からの刺激を受容器が感知し、神経を介して中枢に伝え、感覚として認識する一連のしくみを学ぶ分野です。今回はその中でも、痛覚・嗅覚・味覚について解説します。

感覚の順応

感覚受容器に同じ刺激が持続的に加わると、神経の発火頻度が低下し、感覚が弱まったり消失したりする現象が起こります。これを**順応(adaptation)**といいます。たとえば、服を着た瞬間は布の感触を感じますが、しばらくするとほとんど意識しなくなります。これは触覚が順応した結果です。

順応しやすい感覚と順応しにくい感覚

感覚受容器は、順応の速さによって速順応型と遅順応型に分けられます。速順応型には触覚(マイスネル小体、パチニ小体)、嗅覚、温度覚などがあり、刺激の「新しさ」や変化を感じ取る役割を持ちます。一方、遅順応型には関節の受容器、メルケル盤、筋紡錘などがあり、姿勢や身体の状態を持続的にモニターします。

そして、感覚の中で最も順応しにくいのが痛覚です。痛覚は組織の障害を知らせる「生体の警告信号」であり、もし順応してしまえば危険を察知できなくなり、生命を守る機能を失ってしまうためです。痛覚を受容するのは自由神経終末で、AδファイバーとC線維によって中枢へ伝えられます。自由神経終末は皮膚・筋・関節・内臓など全身に豊富に分布しており、刺激が続く限り発火し続けます。

臨床的には、圧覚は順応するため臥床患者本人は圧迫を自覚しにくい一方で、組織障害(褥瘡)は進行していくため、定期的な体位変換が必要となります。

嗅覚

嗅覚は、空気中のにおい分子を化学的に受容する感覚です。

嗅覚の伝導路

におい分子はまず鼻腔上部の上鼻甲介付近にある嗅上皮に到達します。嗅上皮には嗅細胞が存在し、ここがにおいの受容器となります。嗅細胞から伸びる軸索は嗅神経(第I脳神経)となり、頭蓋底の篩板(しばん)の小孔を貫いて頭蓋内に入ります。そして前頭葉下面にある嗅球に到達します。

嗅球は嗅神経からの情報を最初に受け取る部位であり、嗅覚の一次中枢にあたります。嗅球で僧帽細胞などにより情報が処理されたあと、嗅索を通って梨状皮質などの嗅皮質(二次中枢)へ送られます。

嗅覚の特徴

視覚や聴覚など多くの感覚は視床を中継してから大脳皮質に投射しますが、嗅覚は視床を介さずに大脳辺縁系(扁桃体や海馬)に直接投射するという特徴があります。このため、においは情動や記憶と強く結びつきやすく、特定のにおいで昔の記憶がよみがえる現象(プルースト現象)が生じます。また、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患では、早期から嗅覚低下が出現することが知られています。

味覚

味覚は、口腔内に入った物質を化学的に受容する感覚です。

味蕾と舌乳頭

味覚の受容器は味蕾(みらい)と呼ばれる小さな構造で、主に舌の表面にある乳頭に含まれます。舌乳頭には糸状乳頭・茸状乳頭・有郭乳頭・葉状乳頭の4種類がありますが、このうち糸状乳頭には味蕾が存在しません。糸状乳頭は舌背の中央部に密に分布し、機械的な触覚や舌の表面の摩擦をつくる役割を担います。そのため、舌背の中央部は他の部位に比べて味蕾が極端に少なく、味を感じにくい領域となっています。茸状乳頭は舌尖部や舌側縁、有郭乳頭は舌根部に分界溝に沿って並び、葉状乳頭は舌の側面後方に存在し、これらには多数の味蕾が含まれます。

基本味と神経支配

味蕾が感知する基本味は、甘味・塩味・酸味・苦味・うま味の5つです。味蕾があればどの部位でも5つの味すべてを感じることができますが、部位によって感度に差があります。味覚情報を伝える脳神経は、舌前2/3を顔面神経(鼓索神経)が、舌後1/3を舌咽神経が、咽頭部を迷走神経が担当します。

まとめ

感覚生理を学ぶうえで、痛覚は最も順応しにくく組織障害の警告信号として働くこと、嗅覚は嗅上皮で受容され嗅球を一次中枢として大脳辺縁系に直接投射すること、味覚は味蕾で受容され糸状乳頭には味蕾がないため舌背中央部では味を感じにくいことを押さえておきましょう。それぞれの受容器・伝導路・特徴を整理して理解することが、国家試験で得点するための基礎となります。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    持続的な刺激により感覚受容器の反応性が低下する現象をという。

  2. 2.

    感覚の中で最も順応しにくいのはである。

  3. 3.

    痛覚を受容するのは自由神経終末であり、有髄のと無髄のC線維によって中枢へ伝えられる。

  4. 4.

    圧覚は順応するが組織障害は進行するため、褥瘡予防には定期的なが必要である。

  5. 5.

    嗅覚の受容器は鼻腔上部のに存在する嗅細胞である。

  6. 6.

    嗅覚の一次中枢は前頭葉下面にあるである。

  7. 7.

    嗅覚は視床を介さずに直接投射するため、情動や記憶と結びつきやすい。

  8. 8.

    味覚の受容器はと呼ばれる構造である。

  9. 9.

    舌乳頭のうち味蕾が存在しないのはである。

  10. 10.

    味覚の基本味は甘味・塩味・酸味・苦味・の5つである。

感覚生理(痛覚・嗅覚・味覚)」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。