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がん悪液質の徴候

成人看護学 / がん・緩和・終末期

解説

今回はがん悪液質の徴候について解説します。

がん悪液質とは

がん悪液質(cancer cachexia)とは、進行がん患者にみられる多因子性の代謝異常症候群で、通常の栄養サポートでは完全に回復できない、進行性の骨格筋量の持続的減少を特徴とする病態をいいます。脂肪量減少を伴うこともありますが、骨格筋の減少が中核である点が大きな特徴です。単なる低栄養や飢餓とは異なり、エネルギー摂取を増やすだけでは改善しないことが重要なポイントで、進行がん患者の約8割が経験し、予後不良の独立した因子となります。

病態のしくみ

中心的な病態は、腫瘍と宿主の相互作用によって生じる全身性炎症と代謝異常です。腫瘍からはPIF(蛋白分解誘導因子)が分泌され、免疫細胞からはTNF-α、IL-1、IL-6といった炎症性サイトカインが過剰に産生されます。これらが視床下部の食欲中枢を抑制して食欲不振を起こすとともに、骨格筋の蛋白分解と脂肪分解を亢進させ、安静時エネルギー消費も増加させます。結果として摂取と消費のバランスが崩れ、進行性の体重減少が生じます。血液検査ではCRP上昇、アルブミン低下、貧血などがみられます。

主な徴候

中核となる徴候は、進行性の体重減少、食欲不振、**骨格筋減少(サルコペニア)**の3つです。体重減少は意図せず進行し、6か月で5%を超える減少、またはBMI20未満で2%を超える減少が診断の目安です。骨格筋減少は四肢の細りや握力低下として現れ、倦怠感やADL低下を伴います。低タンパク血症、貧血、浮腫もみられます。一方、疼痛や末梢神経障害は悪液質そのものの徴候ではなく、別のがん関連症状として区別します。

3段階の分類

がん悪液質は進行度により3段階に分類されます。前悪液質は5%以下の体重減少に食欲不振や代謝変化が加わった段階、悪液質は5%を超える体重減少などを満たす段階、不応性悪液質は抗がん治療に反応せずPSが低下し、予後3か月未満と見込まれる段階で、症状緩和が中心となります。

治療と看護

治療は多職種による集学的アプローチが基本で、栄養療法、レジスタンス運動を中心とした運動療法、薬物療法を組み合わせます。薬物では短期的な副腎皮質ステロイドや、グレリン受容体作動薬であるアナモレリンが用いられます。看護では体重・握力・食事摂取量の継続的アセスメント、食事環境の調整、家族への食支援指導、ACPが重要です。

まとめ

がん悪液質は、炎症性サイトカインと腫瘍由来因子による代謝異常を背景に、骨格筋減少を主体とする多因子性の症候群です。中核徴候は進行性の体重減少・食欲不振・骨格筋減少であり、前悪液質・悪液質・不応性悪液質の3段階で進行します。単なる低栄養ではなく、通常の栄養補給だけでは回復しないことを正確に理解することが、国試対策の要となります。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    がん悪液質は、通常の栄養サポートでは完全に回復できない、進行性の量の持続的減少を特徴とする多因子性の症候群と定義される。

  2. 2.

    がん悪液質の中核徴候は、進行性の体重減少、食欲不振、およびの3つである。

  3. 3.

    がん悪液質の病態では、腫瘍由来の蛋白分解誘導因子(PIF)や、TNF-α・IL-1・IL-6などのが筋蛋白分解亢進や食欲中枢の抑制を引き起こす。

  4. 4.

    がん悪液質の診断基準の一つに、6か月で%を超える意図しない体重減少がある。

  5. 5.

    がん悪液質は、前悪液質、悪液質、の3段階に分類され、最終段階では予後が3か月未満と見込まれる。

  6. 6.

    がん悪液質に対する薬物療法として本邦で承認されている、グレリン受容体作動薬はである。

  7. 7.

    がん悪液質では全身性炎症を反映して血液検査での上昇がしばしばみられる。

  8. 8.

    がん悪液質は単なる低栄養(飢餓)とは異なり、エネルギー摂取量を増やすだけでは改善しないを背景とした症候群である。

がん悪液質の徴候」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。