血圧調節と高血圧の病態
人体の構造・機能 / 循環器・呼吸器
解説
血圧とは、血液が血管壁を押す圧力のことで、心拍出量×末梢血管抵抗で決まります。今回は血圧調節のしくみと、高血圧・起立性低血圧の病態について解説します。
血圧の調節機構
血圧は短期的な調節と長期的な調節の二つの仕組みで一定に保たれています。
短期調節:圧受容器反射
短期的な調節の中心は圧受容器反射です。大動脈弓と頸動脈洞にある圧受容器が血圧の変化を感知し、その情報を延髄の血管運動中枢へ送ります。延髄は自律神経を介して心臓と血管に指令を出し、血圧を瞬時に調整します。たとえば臥位から立位になると、重力で下肢に血液が貯留し、静脈還流が低下して脳血流が減少しそうになります。このとき圧受容器反射が働き、交感神経が活性化して心拍数を上げ、末梢血管を収縮させることで血圧を維持します。
長期調節:RAA系とホルモン
長期的な血圧調節を担うのがレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAA系)です。腎血流の低下や交感神経刺激により、腎臓の傍糸球体細胞からレニンが分泌されます。レニンは肝臓由来のアンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンⅠに変換し、これが肺のアンジオテンシン変換酵素(ACE)によりアンジオテンシンⅡとなります。アンジオテンシンⅡは強力な末梢血管収縮作用をもつと同時に、副腎皮質球状層からアルドステロンの分泌を促し、腎尿細管でのナトリウムと水の再吸収を高めて血圧を上昇させます。このほか、抗利尿ホルモン(ADH)やナトリウム利尿ペプチドも長期調節に関与します。
高血圧の分類と病態
高血圧は診察室血圧で140/90mmHg以上、家庭血圧で135/85mmHg以上と定義されます。約9割を占めるのが本態性高血圧で、原因は特定できず、遺伝、塩分過剰摂取、肥満、運動不足、ストレスなどが関与します。
一方、原因疾患が明らかなものを二次性高血圧といいます。代表的なものに、腎動脈狭窄による腎血管性高血圧があります。腎血流が低下するとRAA系が亢進し、アンジオテンシンⅡとアルドステロンによって全身の血圧が上昇します。そのほか腎実質性、原発性アルドステロン症・クッシング症候群・褐色細胞腫などの内分泌性、薬剤性、睡眠時無呼吸症候群なども原因となります。
起立性低血圧
起立性低血圧とは、臥位や座位から立位になった際に、収縮期血圧が20mmHg以上、または拡張期血圧が10mmHg以上低下する病態です。立ちくらみ・めまい・失神などを生じ、高齢者の転倒の原因にもなります。原因は圧受容器反射を担う自律神経の障害で、糖尿病性自律神経障害、パーキンソン病、Shy-Drager症候群(多系統萎縮症)などで起こりやすくなります。降圧薬・利尿薬・抗うつ薬などの薬剤、脱水、長期臥床、加齢も誘因です。
高血圧の治療
治療の基本は生活習慣の修正で、減塩(6g/日未満)、減量、運動、節酒、禁煙が推奨されます。薬物療法では、ARB、ACE阻害薬、Ca拮抗薬、利尿薬、β遮断薬が用いられます。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
血圧は心拍出量との積で決まる。
- 2.
大動脈弓や頸動脈洞にあるが血圧変化を感知し、延髄を介して自律神経が血圧を短期的に調節する。
- 3.
腎血流低下により傍糸球体細胞から分泌され、RAA系を活性化させるのはである。
- 4.
アンジオテンシンⅠをアンジオテンシンⅡに変換する酵素を(アンジオテンシン変換酵素)という。
- 5.
アンジオテンシンⅡの刺激で副腎皮質球状層から分泌され、Na・水の再吸収を促進するホルモンはである。
- 6.
腎動脈狭窄によりRAA系が亢進して起こる二次性高血圧をという。
- 7.
臥位や座位から立位への変化で収縮期血圧が20mmHg以上低下する病態をという。
- 8.
起立性低血圧の主な原因は、糖尿病やパーキンソン病などによるである。
