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臨死期の身体変化と看護

成人看護学 / がん・緩和・終末期

解説

臨死期とは、死が間近に迫り、生命維持機能が不可逆的に低下していく時期のことです。今回は臨死期に出現する身体変化と、それに対する看護について解説します。

臨死期の身体変化を理解する上で重要なのは、全身の循環・呼吸・意識・代謝などの機能が連鎖的に低下していくという点です。看護師は変化の意味を正しく読み取り、患者の苦痛を緩和するとともに、家族にも丁寧に説明して看取りを支える役割を担います。

臨死期に現れる全身の徴候

死が差し迫った時期に現れる身体的徴候は Signs of Impending Death(死が近づいた徴候) と呼ばれます。代表的なものとして、意識レベルの低下や傾眠、呼吸パターンの変化(下顎呼吸、死前喘鳴など)、四肢末梢のチアノーゼ・冷感・網状皮斑(皮膚にまだら状の青紫色斑がみられる現象)、尿量減少、血圧低下、脈拍微弱などがあります。

循環不全が進行すると末梢から中枢にかけて動脈の触知が困難になります。一般に 橈骨動脈 が触知できないときには収縮期血圧およそ80mmHg以下、大腿動脈 が触知できないときには約70mmHg以下、頸動脈 が触知できないときには約60mmHg以下が目安とされます。これは血圧計を装着しなくても循環状態をすばやく把握できる指標として臨床で重要です。

臨死期の呼吸変化

臨死期には延髄の 呼吸中枢 の機能が低下し、不規則で努力性の呼吸パターンが出現します。看護師はこれらを「異常」と判断するのではなく、死に向かう自然な経過として理解する必要があります。

代表的なものが チェーン・ストークス(Cheyne-Stokes)呼吸 です。これは無呼吸の状態から徐々に呼吸が深く速くなり、ピークを過ぎると今度は徐々に浅く遅くなり、再び無呼吸に至るという周期を30秒から2分ほどの間隔で繰り返す異常呼吸です。原因は呼吸中枢の二酸化炭素に対する感受性の低下で、臨死期のほか、心不全や脳血管障害でもみられます。

このほか、不規則な深さと回数の呼吸と無呼吸が交互に出現する ビオー(Biot)呼吸、顎を上下に動かして喘ぐような呼吸である 下顎呼吸 があります。下顎呼吸は死の数時間前に出現することが多く、看取りの目安となる重要な徴候です。なお、深く規則的な大きな呼吸である クスマウル(Kussmaul)呼吸 は糖尿病性ケトアシドーシスなどの代謝性アシドーシスで現れるもので、臨死期特有の呼吸ではありません。

死前喘鳴とその看護

臨死期にみられる咽頭部のゴロゴロという音は 死前喘鳴 と呼ばれます。これは唾液や気道分泌物が咳嗽反射・嚥下反射の低下によって咽喉頭に貯留し、呼吸のたびに振動して生じる雑音です。臨死期の患者の40〜90%に出現するとされ、決して珍しいものではありません。

死前喘鳴は主に唾液による真性(type1)と、下気道分泌物による偽性(type2)に分類されます。

看護の基本は 体位の工夫 です。具体的には顔を横に向ける、あるいは軽度の 側臥位 をとることで、重力により咽頭に貯留した分泌物が口腔側へ流れ、雑音が軽減しやすくなります。患者本人は意識レベルが低下しているため苦痛を訴えることは少ないとされますが、その音を聞く家族の苦痛は大きいため、現象の意味を丁寧に説明することが大切です。

薬物療法としては、分泌を抑える目的で抗コリン薬(ブチルスコポラミン、スコポラミン、グリコピロレートなど)が用いられます。ただし、すでに貯留してしまった分泌物自体を減らすことはできないため、体位管理との併用が原則です。過度な吸引は粘膜損傷や苦痛を招くため、必要最小限にとどめます。

まとめ

臨死期には呼吸中枢の機能低下によりチェーン・ストークス呼吸、ビオー呼吸、下顎呼吸、死前喘鳴といった呼吸パターンの変化が現れ、循環不全により末梢動脈から順に触知が困難となります。これらは死に向かう自然な経過であり、看護師はその意味を理解し、患者の安楽を守るとともに、家族に丁寧に説明して看取りを支える役割を果たします。死前喘鳴に対しては顔を横に向けたり側臥位をとったりすることで雑音の軽減を図り、過度な吸引は避けることが基本となります。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    延髄の呼吸中枢の感受性低下によって、無呼吸→徐々に深く速くなる呼吸→徐々に浅く遅くなる呼吸→無呼吸を周期的に繰り返す異常呼吸をという。

  2. 2.

    臨死期に顎を上下に動かして喘ぐような呼吸となり、死の数時間前に出現することが多い呼吸をという。

  3. 3.

    唾液や気道分泌物が咳嗽反射・嚥下反射の低下によって咽喉頭に貯留し、呼吸とともに振動して生じる雑音をという。

  4. 4.

    死前喘鳴に対する看護では、重力により咽頭貯留物を口腔側へ流すために、顔を横に向けるか軽度のをとる。

  5. 5.

    死前喘鳴に対する薬物療法では、分泌抑制を目的として(ブチルスコポラミン、スコポラミンなど)が用いられる。

  6. 6.

    橈骨動脈が触知できない場合、収縮期血圧は約mmHg以下と推定される。

  7. 7.

    頸動脈が触知できない場合、収縮期血圧は約mmHg以下と推定される。

  8. 8.

    深く規則的な大呼吸で、糖尿病性ケトアシドーシスなどの代謝性アシドーシスでみられる呼吸をという。

  9. 9.

    臨死期に四肢末梢にみられる、皮膚にまだら状の青紫色斑が出現する所見をという。

臨死期の身体変化と看護」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。