DV被害者への看護
精神看護学 / 神経症・パーソナリティ障害・その他
解説
今回はDV被害者への看護について解説します。
DVとDV防止法
DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、配偶者や親密な関係にあるパートナーから振るわれる身体的・精神的・性的・経済的な暴力のことをいいます。被害者の多くは女性であり、子どもへの虐待を併発することも少なくありません。 わが国では2001年に**配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)**が施行され、2014年・2019年に改正が行われています。この法律の目的は、配偶者からの暴力を防止し、被害者の保護と自立を支援することにあります。
「配偶者」の範囲
DV防止法における「配偶者」には、法律上の婚姻関係にある者だけでなく、事実婚(婚姻届を提出していないが事実上夫婦と同様の関係にある者)も含まれます。また、離婚後や事実上の離別後に引き続き暴力を受ける者にも本法が適用されます。さらに2014年の改正により、生活の本拠を共にする交際相手からの暴力についても本法が準用されるようになりました。なお、同居していない恋人からの暴力は対象外であり、国試で問われやすいポイントです。
改正の主な変遷
2014年改正で同棲交際相手からの暴力が準用対象となり、2019年改正では児童虐待防止策との連携が強化されました。DV家庭では児童虐待が並行して起こる例が多いため、配偶者暴力相談支援センターと児童相談所との連携が明文化されています。
DV対応の4原則
DV被害者への支援にあたっては、4つの基本原則を押さえることが重要です。第一に被害者の安全確保、第二に秘密保持、第三に本人の意思尊重、第四に多機関連携です。加害者から逃れることが第一であり、続いて情報漏洩によって被害者の所在が知られないよう徹底します。支援方針の選択は被害者本人に委ね、医療・福祉・司法など複数機関が連携して支えます。 相談先としては配偶者暴力相談支援センター、警察、女性相談所、シェルター(一時保護施設)などがあります。
医療従事者の役割と通報
看護師をはじめとする医療関係者は、外傷や受診の場面で被害者と接する機会が多く、DVの早期発見において重要な役割を担います。DV防止法第6条では、医療関係者が業務上、配偶者からの暴力により負傷または疾病にかかったと認められる者を発見したとき、その旨を配偶者暴力相談支援センターまたは警察官に通報することができると定められています。 通報は努力義務であり、原則として本人の意思を尊重します。ただし、生命の危険が差し迫っていると判断される場合には、通報という選択肢を本人に提示し、安全確保を優先します。秘密漏示罪との関係でも、本条による通報は守秘義務違反には当たりません。
保護命令
生命や身体に重大な危害を受けるおそれがある場合、被害者は地方裁判所に保護命令を申し立てることができます。代表的なものに、加害者が被害者につきまとうことを禁じる接近禁止命令、住居からの退去命令、電話やメール等を禁じる電話等禁止命令などがあります。期間は接近禁止命令などが原則6か月、退去命令は2か月です。命令違反には罰則が科されます。
DV被害者の身体・心理
身体所見としては、打撲痕・骨折・内出血などが多発し、新旧が混在することが特徴です。受診と外傷部位が一致しない、説明があいまいなどの場合にはDVを疑います。 心理面では、強い恐怖や不安、不眠、震え、抑うつ、急性ストレス反応、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などがみられます。慢性的な恐怖により交感神経が優位な過覚醒の状態になると、痛みの閾値が下がって痛みを強く感じやすくなり、鎮痛薬や睡眠薬の効果も十分には得られにくくなります。
看護介入とチーム支援
こうした過緊張状態にある被害者に対しては、薬物療法に先んじてリラクセーション法を導入することが基本となります。具体的には漸進的筋弛緩法、呼吸法、自律訓練法などがあり、心身を弛緩させてから薬物療法を組み合わせていきます。 この調整役を担うのがリエゾン精神看護専門看護師です。リエゾン精神看護専門看護師とは、身体科に入院している患者の精神的問題に対応する専門家であり、不安・不眠・PTSD症状などへの非薬物的介入や、医療チームへのコンサルテーションを行います。 さらに、心理アセスメントや認知行動療法、トラウマ焦点化療法は公認心理師・臨床心理士といった心理専門職が担当します。社会資源との橋渡しや経済的支援、シェルター入所の調整は**医療ソーシャルワーカー(MSW)**の役割です。これらに医師・看護師を加えた多職種チームを中核として、必要に応じて法律家や女性相談員も加わり、被害者を包括的に支援します。
まとめ
DV防止法は2001年に施行され、法律婚に加え事実婚や生活の本拠を共にする交際相手からの暴力にも適用されます。医療関係者は第6条に基づき配偶者暴力相談支援センターや警察に通報することができ、保護命令は接近禁止が6か月、退去が2か月です。被害者の支援では安全確保・秘密保持・本人の意思尊重・多機関連携の4原則に従い、過覚醒下ではリエゾン精神看護専門看護師によるリラクセーション法を優先します。心理職やMSWを含む多職種チームで支えていく視点が国試対策の要となります。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
2001年に施行され、配偶者からの暴力の防止と被害者の保護を目的とする法律をという。
- 2.
DV防止法における「配偶者」には法律婚だけでなくも含まれ、離婚後に引き続き暴力を受ける者も対象となる。
- 3.
2014年の改正により、DV防止法はからの暴力にも準用されるようになった。
- 4.
DV防止法第6条に基づき、医療関係者は被害者を発見したとき配偶者暴力相談支援センターまたはに通報することができる。
- 5.
裁判所が加害者に対し被害者へのつきまといを禁じる命令をといい、その期間は原則6か月である。
- 6.
DV被害者は慢性的な恐怖により交感神経優位の状態に陥りやすく、痛みの閾値が低下して鎮痛薬の効果が得られにくくなる。
- 7.
身体科に入院している患者の精神的問題に対応し、漸進的筋弛緩法などのリラクセーション法を提供する専門看護師をという。
- 8.
社会資源との橋渡しや経済的支援の調整など、DV被害者の社会的問題に対応する職種をという。
- 9.
DV対応の4原則は、被害者の安全確保・秘密保持・本人の意思尊重・である。
