双極性障害(躁状態)の看護
精神看護学 / 統合失調症・気分障害
解説
双極性障害とは、気分が異常に高揚する躁病相と、気分が著しく落ち込むうつ病相を反復する気分障害です。今回は双極性障害、特に躁状態にある患者さんへの看護について解説します。
双極性障害の概要
双極性障害(bipolar disorder)は、躁状態とうつ状態という対極の気分エピソードを繰り返す慢性疾患です。診断上、I型は社会生活に支障をきたすほどの躁病エピソードとうつ病エピソードを伴うもの、II型は軽躁病エピソードとうつ病エピソードを伴うものに分類されます。単にうつ症状のみが反復するうつ病(単極性うつ病)とは異なり、必ず躁または軽躁のエピソードを伴う点が鑑別のポイントです。再発を繰り返しやすく、長期的な治療と生活管理が必要となります。
躁状態の主要症状
躁状態では、根拠のない自信に満ちた気分高揚、次々と考えが浮かんで止まらない観念奔逸、多弁、些細なことで怒り出す易刺激性(易怒性)、活動量の増加、睡眠欲求の減少、注意散漫、自分を過大評価する誇大妄想などが認められます。さらに脱抑制行動として、浪費・性的逸脱・無計画な投資など、社会的信用を失う行動に出ることも少なくありません。多くの場合、本人は自分が病的状態にあるという病識を欠くため、治療への抵抗が生じやすいことも特徴です。
急性期看護の3本柱
躁状態の急性期看護は、次の3点を柱とします。第一に刺激の最小化で、個室や静かな環境を整え、テレビや訪問者など外的刺激を減らします。第二に安全確保で、自傷他害や脱抑制行動による事故・トラブルを防ぎます。第三に身体消耗への対処で、活動亢進と睡眠減少による脱水・低栄養・疲労を補正します。
興奮・多弁・易怒性への対応
興奮している患者には、まず刺激の少ない環境へ静かに誘導することが最優先です。論理的に説得したり、病気であることを納得させようとしたり、家族に説得を任せたりする関わりは、かえって興奮を増幅させるため避けます。看護師は短く穏やかな言葉で淡々と接し、治療同盟を損なわないようにします。
食事・水分の支援
活動亢進と注意散漫のため、食事に集中できず摂取量が低下しがちです。説得や感情に訴える関わりは興奮を強めるため、淡々と事実を伝える姿勢が基本です。おにぎりやサンドイッチなど短時間で食べられる形態を選び、活動の合間にこまめに勧めます。必要に応じて栄養補助食品を活用し、体重、水分バランス、電解質を継続的にモニタリングします。
病識欠如と焦燥感への関わり
病識の欠如に対しては、頭ごなしに否定せず、本人と一緒に「今何ができて何が難しいか」を具体的に確認するリアリティチェックを行います。焦燥感の強い患者には傾聴し、休養の必要性を共有することで治療同盟を強化します。
通信・面会の権利
精神科入院患者の通信・面会は、精神保健福祉法第36条・第37条により原則保障されています。制限を行う場合には精神保健指定医の判断と本人への説明が必要であり、看護師の独断で電話や手紙を制限することはできません。
薬物療法
躁状態の治療には気分安定薬(リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピン)や非定型抗精神病薬(オランザピンなど)が用いられます。リチウムは治療域と中毒域が近接しているため血中濃度モニタリングが必須で、治療域はおよそ0.4〜1.0mEq/L、1.5mEq/Lを超えると中毒域とされます。手指振戦、嘔吐、意識障害などのリチウム中毒症状の観察に加え、腎機能・甲状腺機能・電解質の定期検査を行います。うつ病相での抗うつ薬単剤投与は躁転のリスクがあり慎重に判断します。
入院形態と身体的拘束
本人の同意が得られない場合の入院形態として、医療保護入院(精神保健福祉法第33条、家族等の同意と指定医の判断)と、自傷他害が切迫している場合の措置入院(第29条、都道府県知事の権限と指定医2名の診察)があります。
身体的拘束は精神保健福祉法第36条に基づく最終手段であり、開始・継続・解除はすべて精神保健指定医が判断します。12時間を超える拘束には指定医の診察が必須です。拘束中は肺血栓塞栓症(静脈うっ滞による)、褥瘡、関節拘縮、脱水などの合併症予防が重要で、頻回な巡視を予告して患者の不安・恐怖を和らげ、尊厳を保持する関わりが求められます。
再発予防と地域支援
再発予防の柱は、服薬継続、睡眠覚醒リズムの安定、ストレスマネジメント、家族心理教育、定期受診の5つです。再発の前兆(プロドロマル症状)として、睡眠時間の減少、話し方の変化、浪費傾向、高揚感などがあり、家族が「いつもと違う言動」に早期に気づくことが重要です。気分の波を時系列で記録するライフチャート法が有効です。
地域支援資源には、公的相談窓口である保健所、精神保健福祉センター、居場所や活動拠点となる地域活動支援センター、相談支援事業所、就労移行・就労継続支援、訪問看護、自立生活援助などがあり、退院後も継続的に活用できるよう情報提供を行います。
まとめ
躁状態の看護では、刺激の最小化・安全確保・身体消耗への対処を基本に、説得ではなく淡々とした関わりで治療同盟を築くことが重要です。リチウムの血中濃度管理や法的根拠に基づく行動制限への理解、そして退院後の再発予防と地域支援への接続まで、長期的な視点で支援していきます。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
双極性障害は、気分が高揚する病相と、気分が落ち込む病相を反復する気分障害である。
- 2.
双極性型は躁病エピソードとうつ病エピソードを、型は軽躁病エピソードとうつ病エピソードを伴う。
- 3.
躁状態では、次々と考えが浮かぶ、多弁、易刺激性(易怒性)、睡眠欲求の、誇大妄想などがみられる。
- 4.
躁状態急性期看護の3本柱は、刺激の、確保、身体消耗への対処である。
- 5.
興奮している患者には、まずの少ない環境へ誘導することが最優先であり、論理的なはかえって興奮を増幅させる。
- 6.
気分安定薬のは治療域と中毒域が近接しているため、のモニタリングが必須で、1.5mEq/Lを超えると中毒域とされる。
- 7.
本人の同意が得られない場合、家族等の同意と指定医の判断による入院、自傷他害が切迫している場合の入院がある。
- 8.
身体的拘束は精神保健福祉法第36条に基づきが判断する。拘束中は静脈うっ滞によるの予防が重要である。
- 9.
通信・面会は精神保健福祉法第36条・第37条で原則されており、制限には指定医の判断と本人への説明が必要である。
- 10.
再発の前兆(プロドロマル症状)には睡眠時間の減少や浪費傾向があり、気分の波を時系列で記録する法が有効である。
