うつ病の急性期・回復期看護
精神看護学 / 統合失調症・気分障害
解説
うつ病とは、抑うつ気分や興味・喜びの喪失を中核症状とし、思考・意欲・身体機能の広範な低下をきたす気分障害です。今回はうつ病の急性期から回復期にかけての看護について解説します。
うつ病の概念と症状
うつ病(大うつ病性障害)は、脳内のセロトニンやノルアドレナリンといったモノアミン神経伝達物質の機能低下が関与すると考えられている内因性の精神疾患です。性格傾向としては、几帳面で責任感が強く、他者への配慮を優先するメランコリー親和型が発症しやすいとされ、昇進・異動・近親者の喪失などのライフイベントが発症契機となります。
中核症状は抑うつ気分と興味・喜びの喪失であり、これに加えて精神運動制止、思考制止、易疲労感、無価値感、罪業妄想、集中力低下が現れます。身体症状としては不眠(特に早朝覚醒)、食欲低下、体重減少、便秘、口渇、性欲減退などがみられ、症状には日内変動があり、朝方に最も重く夕方にかけて軽快する傾向があります。最も重要な症状は希死念慮であり、希死念慮から自殺企図に至るリスクの評価は看護の中心課題となります。
DSM-5では、抑うつ気分または興味・喜びの喪失を含む9項目のうち5つ以上が2週間以上持続し、社会的・職業的機能の障害を引き起こしている場合に診断されます。
急性期の看護
急性期は心身ともに著しいエネルギー低下があり、休養が最優先となります。安静を保ち、刺激を最小限に抑える環境調整を行います。「頑張ってください」「元気を出して」といった励ましは禁忌であり、無理に活動を促すことや気分転換を勧めることも避けます。患者の訴えを傾聴し、苦しみを受容する姿勢が基本です。
重症例では食事や水分の摂取が極端に低下し、うつ性昏迷に至ることもあるため、入院当日は脱水・栄養状態・体重などの身体面の観察が最優先となります。希死念慮がある場合は、危険物の管理や観察の強化など安全確保を徹底します。希死念慮の評価にはTALKの原則が用いられ、Tell(心配を言葉で伝える)、Ask(自殺について率直に尋ねる)、Listen(傾聴する)、Keep safe(安全確保と専門家への連携)の4要素から成り立ちます。自殺について率直に尋ねることが自殺を誘発することはないとされています。
治療
薬物療法ではSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI、NaSSA、三環系・四環系抗うつ薬が用いられます。抗うつ薬は効果発現までに2〜4週間を要し、この間に副作用(消化器症状、不眠、性機能障害)で自己中断するケースが多いため、服薬指導とアドヒアランス支援が重要です。服薬を中断したいという訴えには、まず理由を共感的に聴取し、本人と一緒に解決策を探る姿勢が求められます。
薬物療法が無効な重症例、強い希死念慮、うつ性昏迷などには**修正型電気けいれん療法(m-ECT)**が適応されます。合併症として一過性の意識障害(ECT後せん妄)、記憶障害、頭痛、筋肉痛があり、覚醒直後に出現する興奮性せん妄では安全確保と静穏な環境調整、転倒予防が看護の要点です。
精神療法では認知行動療法が有効で、「全か無か思考」「過度の一般化」「べき思考」「破滅化」「自己関連づけ」といった認知の歪みを修正し、否定的自動思考をより現実的でバランスのとれた考えに置き換えていきます。
回復期の看護と退院支援
回復期は意欲や行動力が戻る一方で抑うつ気分が完全には消失していないため、自殺企図のリスクが最も高まる時期として知られ、「危険な改善(dangerous improvement)」と呼ばれます。退院前外出や試験外泊の前後は特に注意が必要で、希死念慮の確認を最優先に行います。
退院支援では再発予防教育、ストレスマネジメント、生活リズムの確立が重要です。職場復帰を控えた患者には、精神科デイケアで生活リズムや対人関係能力を回復させ、リワーク支援で模擬業務や認知行動療法を通じて段階的に復職を目指します。経済的・社会的相談には精神保健福祉士が傷病手当金、自立支援医療、障害年金などの制度利用を支援します。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
うつ病の中核症状は抑うつ気分とである。
- 2.
うつ病の症状は朝に重く夕方に軽快するを示す。
- 3.
急性期のうつ病患者に対しては休養を最優先とし、安易なは禁忌である。
- 4.
希死念慮の評価における基本原則をの原則という。
- 5.
抗うつ薬であるSSRIやSNRIは効果発現までにを要する。
- 6.
薬物療法が無効な重症うつ病や強い希死念慮には(m-ECT)が適応となる。
- 7.
うつ病に特徴的な否定的自動思考や認知の歪みを修正する精神療法をという。
- 8.
うつ病で自殺企図のリスクが最も高まるのはである。
- 9.
精神疾患により休職中の労働者が円滑に職場復帰できるよう支援するプログラムをという。
- 10.
傷病手当金や自立支援医療など社会資源の活用について相談に応じる職種はである。
「うつ病の急性期・回復期看護」の過去問演習
希死念慮を訴える患者に寄り添う第一声
第113回 午後 第109問
m-ECT後30分の興奮、これは何?
第113回 午後 第110問
うつ病回復期の「だめな人間だ」にどう向き合う
第113回 午後 第111問
服薬アドヒアランスへの関わり
第111回 午後 第109問
精神科多職種連携と経済相談
第111回 午後 第110問
復職を支えるリワーク支援
第111回 午後 第111問
自殺企図後のうつ病患者への初期対応
第108回 午後 第112問
炭酸リチウム中毒を見抜く薬物血中濃度検査
第108回 午後 第113問
うつ病からの復職と精神科デイケア
第108回 午後 第114問
うつ病入院当日に何を最優先で見るか
第104回 午後 第108問
認知療法で修正するもの
第104回 午後 第109問
うつ病回復期で最優先の観察項目
第104回 午後 第110問
