COPDの在宅酸素療法
成人看護学 / 呼吸器系
解説
今回はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と、その治療として行われる在宅酸素療法について解説します。
COPDとは
COPD(chronic obstructive pulmonary disease:慢性閉塞性肺疾患)とは、タバコ煙などの有害物質を長期間吸入することで生じる、進行性かつ不可逆性の気流閉塞をきたす疾患の総称です。従来、慢性気管支炎と肺気腫という2つの病態に分けて考えられてきましたが、現在ではこれらをまとめてCOPDと呼びます。最大の原因は喫煙であり、患者の多くは長期の喫煙歴を持つ中高年男性です。 肺気腫では、肺胞壁が破壊されて隣り合った肺胞同士が融合し、ガス交換に有効な表面積が減少します。さらに肺の弾性収縮力が失われるため、息を吐き出す力が弱くなり、呼気時に空気を十分に押し出せなくなります。その結果、肺の中に空気が残ったままになる「肺の過膨張」が生じます。
COPDの肺機能検査の特徴
COPDでは、空気を吐き出しにくくなることから、検査値に特徴的な変化が現れます。最初の1秒間に吐ける息の量である1秒量(FEV1)と、努力肺活量に対する1秒量の割合を示す1秒率(FEV1%)は低下し、1秒率が70%未満であることがCOPDの診断基準となります。一方、息を吐ききった後にも肺内に残る空気の量である残気量は増加し、全肺気量や機能的残気量も増加します。進行すると動脈血酸素分圧(PaO2)が低下し、さらに換気が障害されると動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)が上昇します。
主な症状と所見
慢性の咳嗽・喀痰、労作時の呼吸困難(特に坂道や階段昇降時の息切れ)が代表的な症状です。視診では樽状胸郭、口すぼめ呼吸、呼吸補助筋の発達がみられます。胸部X線では肺の過膨張を反映して横隔膜の平低化、肋間腔の拡大、心陰影が縦に細長くなる滴状心が特徴です。
在宅酸素療法(HOT)
**在宅酸素療法(HOT:home oxygen therapy)**とは、慢性的に低酸素血症を呈する患者が、自宅で酸素濃縮装置や液体酸素装置を用いて長時間酸素を吸入する治療法です。COPDをはじめ、肺結核後遺症、間質性肺炎、慢性心不全などが適応となります。COPDではPaO2が55Torr以下、または60Torr以下で睡眠時・運動時に著しい低酸素血症をきたす場合に保険適用となります。
HOTの効果と意義
長時間酸素を吸入することで、低酸素血症による肺血管攣縮を抑え、肺高血圧の進行を防ぎます。さらに、生命予後の改善、運動耐容能の向上、QOLの改善が期待できます。効果を十分に得るには、入浴中・睡眠中・外出時も含めて1日15時間以上の継続使用が推奨されます。
CO2ナルコーシスへの注意
COPDが進行した患者では、慢性的な高CO2血症のため、呼吸調節が通常の二酸化炭素ではなく低酸素状態に依存している場合があります。このような患者に高流量の酸素を投与すると、低酸素刺激が解除されて呼吸が抑制され、CO2が体内に蓄積して意識障害、頭痛、呼吸性アシドーシスから呼吸停止に至るCO2ナルコーシスを起こす危険があります。患者には自己判断で酸素流量を変更しないことを必ず指導します。
火気管理の指導
酸素はそれ自身が燃えるわけではありませんが、周囲のものが燃える勢いを著しく強める支燃性のガスです。HOT中の患者の周囲で火気を扱うと、急激な燃焼や火災、熱傷事故につながります。酸素吸入中および酸素機器から2m以内では、ガスコンロ、たばこ、ライター、線香、ろうそく、仏壇の灯明などの裸火を使用してはいけません。料理にガスコンロを使用している家庭では、電磁調理器(IHクッキングヒーター)への変更を提案します。喫煙は本人のみならず家族にも厳禁です。
日常生活上の指導
COPD患者では、上肢を挙上する動作、前屈姿勢、反復動作、息こらえを伴う動作で息切れが強まります。日常生活動作の指導では「上げない・かがまない・急がない・息を止めない」を基本とし、動作と呼吸を合わせて口すぼめ呼吸を行うようにします。重い荷物は抱えるよりカートで運ぶ、洗濯物は低い位置に干すなどの工夫が有効です。また、停電や機器トラブルに備え、携帯用酸素ボンベの使用方法、緊急連絡先、災害時の備蓄量についても退院前に確認しておきます。感染症は急性増悪の引き金となるため、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種、手洗い・含嗽の励行も重要です。
まとめ
COPDは長期喫煙を主因とする不可逆性の気流閉塞をきたす疾患で、肺の過膨張により残気量が増加し、1秒量・1秒率が低下するのが特徴です。進行例では在宅酸素療法が導入され、生命予後とQOLの改善をもたらします。看護にあたっては、自己判断による流量変更がCO2ナルコーシスを引き起こす危険性、酸素の支燃性に基づく火気厳禁、1日15時間以上の継続使用、日常生活動作における呼吸負荷軽減の工夫を、患者と家族にわかりやすく指導することが要点となります。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
COPDの最大の原因はであり、長期の喫煙歴を持つ中高年男性に多くみられる。
- 2.
COPDでは肺胞壁の破壊と肺の弾性収縮力低下により呼気時に空気を吐き出せなくなり、肺内に残る空気の量であるが増加する。
- 3.
COPDの診断では、努力肺活量に対する1秒量の割合であるが70%未満であることが基準となる。
- 4.
COPDの胸部X線像では肺の過膨張により横隔膜の平低化や肋間腔の拡大、心陰影が縦に細長くなるがみられる。
- 5.
在宅酸素療法において、自己判断で酸素流量を増加させると呼吸が抑制されCO2が蓄積して意識障害をきたすを起こす危険がある。
- 6.
酸素はそれ自身は燃えないが周囲の可燃物の燃焼を強めるのガスであるため、酸素機器から2m以内では裸火を扱ってはならない。
- 7.
在宅酸素療法では効果を十分に得るため、入浴・睡眠・外出時も含めて1日時間以上の継続使用が推奨される。
- 8.
COPD患者の日常生活動作では呼吸と動作を合わせるため、ゆっくり息を吐くを行うよう指導する。
- 9.
在宅酸素療法中の患者では、調理用のガスコンロをに変更するよう指導する。
