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精神科の行動制限と権利

精神看護学 / 精神科入院・法制度・拘束

解説

精神科の行動制限とは、精神疾患により自傷他害のおそれがある患者などに対し、医療または保護の目的で一時的にその自由を制限する処置のことをいいます。今回は精神科における行動制限と患者の権利擁護について、根拠法から具体的な看護まで解説します。

精神保健福祉法と処遇の基本理念

精神科医療における行動制限の根拠法は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律、いわゆる精神保健福祉法です。この法律の第36条では、精神科病院の管理者は「医療または保護に欠くことのできない限度において」患者の行動について必要な制限を行うことができると規定されています。すなわち、制限はあくまで必要最小限であり、患者にはその理由をできる限り説明することが求められます。さらに第37条では、厚生労働大臣が処遇基準を定めると規定されており、これに基づき昭和63年厚生省告示第130号が示されています。

精神科の入院形態には、本人の同意による任意入院、家族等の同意による医療保護入院、自傷他害のおそれがあるときの措置入院、緊急性が高い場合の緊急措置入院、応急入院の5種類があり、いずれの場合でも入院時には書面と口頭による告知義務があります。

絶対に制限してはならない権利

行動制限の中には、いかなる場合でも制限してはならない権利が定められています。代表的なものは、信書の発受(手紙のやり取り)と、人権擁護に関する行政機関の職員および代理人である弁護士との電話・面会です。信書の発受は日本国憲法第21条の「通信の秘密」「検閲の禁止」に基づく基本的人権であり、閉鎖病棟の患者であっても等しく保障されます。また、退院請求や処遇改善請求の権利も制限できません。

ただし、差出人不明で異物の混入が疑われる封筒など、安全上の懸念がある場合には、患者本人の立ち会いのもとで開封し、内容物を確認するという対応が認められています。看護師が無断で開封・検閲することは許されません。一方、家族との一般的な面会は、病状悪化など合理的な理由がある場合に限り制限できます。

隔離と身体的拘束

隔離とは、内側から患者が出ることのできない部屋に1人だけ入室させ、他の患者から遮断する行動制限です。隔離は12時間以内であれば一般の精神科医の指示で行うことができますが、12時間を超える隔離は精神保健指定医の判断が必須となります。隔離を行った理由、開始日時、解除日時は必ず診療録に記載しなければなりません。隔離中は少なくとも1日1回の診察に加え、頻回な観察、食事・排泄・清潔のケアが必要です。

身体的拘束は、衣類または綿入り帯等を使用して一時的に患者の身体を拘束し、運動を抑制する行動制限です。身体的拘束は時間にかかわらず精神保健指定医の判断が必要であり、隔離よりも厳格に扱われます。身体的拘束が許されるのは、切迫性・非代替性・一時性の三要件を満たし、他に代替手段がない場合に限られます。

精神保健指定医の役割

精神保健指定医は、厚生労働大臣が指定する国家資格で、5年以上の医師経験と3年以上の精神科経験などを要件とします。精神保健指定医は、医療保護入院や措置入院の要否を判定するほか、12時間を超える隔離や身体的拘束など、行動制限にかかわる医学的判定を行います。

拘束中の看護とトラウマインフォームドケア

身体的拘束は患者にとって屈辱・恐怖・無力感をもたらし、深刻な心的外傷体験となり得ます。そのため、過去のトラウマ体験を踏まえ再トラウマ化を防ぐ視点であるトラウマインフォームドケアが重視されます。看護師は拘束中、循環状態・皮膚状態・四肢のしびれ・排泄・栄養水分摂取を継続的に観察し、深部静脈血栓症や褥瘡の予防に努めます。観察は2時間以内ごとを目安に行い、診療録に詳細に記録します。

また、行動制限は患者および医療者双方の安全を守るため、原則として複数のスタッフで対応します。患者本人および家族には拘束の理由を説明する義務があり、早期解除を目指して代替手段への移行を絶えず検討します。

行動制限の監視体制

各精神科病院には行動制限最小化委員会の設置が義務付けられ、月1回以上の開催で制限の適正性を院内で評価します。さらに都道府県には精神医療審査会が設置され、退院請求や処遇改善請求の審査を担います。これらの仕組みにより、患者の人権が二重に守られています。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    精神保健福祉法において、精神科病院入院患者に対して絶対に制限してはならない行為として、人権擁護に関する行政機関職員との電話・面会のほかに、がある。

  2. 2.

    12時間を超える隔離や身体的拘束など、行動制限の可否を判定する権限を持つのは、厚生労働大臣が指定するである。

  3. 3.

    精神保健福祉法に基づく身体的拘束を行う際の三要件は、切迫性・非代替性・である。

  4. 4.

    精神科病院において、12時間を超えない隔離は一般の精神科医の指示でも可能だが、12時間を超える隔離はの判断が必要である。

  5. 5.

    隔離や身体的拘束を実施した場合、その理由および開始・解除の日時はに記載しなければならない。

  6. 6.

    身体的拘束は患者にとって屈辱や恐怖、無力感を伴うトラウマ体験となり得るため、再トラウマ化を防ぐ視点としてが重視される。

  7. 7.

    精神科病院に設置が義務付けられ、月1回以上開催して行動制限の適正性を評価する院内の委員会をという。

  8. 8.

    退院請求や処遇改善請求の審査を行う都道府県の機関をという。

精神科の行動制限と権利」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。