精神障害者の就労支援
精神看護学 / 精神看護総論・その他
解説
今回は精神障害者の就労支援について解説します。 精神障害者の就労支援とは、統合失調症やうつ病などの精神疾患を抱える人が、社会の一員として働き、自立した生活を送れるよう支える制度や仕組みのことです。働くことは経済的自立だけでなく、生活リズムの安定、対人交流、自己実現にもつながるため、精神科看護におけるリカバリー支援の重要な柱となります。
制度の枠組み
精神障害者の就労支援は、大きく二つの法律に支えられています。一つは福祉サービスを規定する障害者総合支援法(旧障害者自立支援法)で、就労系の障害福祉サービスや地域生活支援を提供します。もう一つは雇用面を規定する障害者雇用促進法で、企業に対し法定雇用率の達成と合理的配慮の提供を義務づけています。両者を組み合わせて、福祉的支援から一般雇用への橋渡しが行われます。
障害者総合支援法の就労系サービス
障害者総合支援法に基づく就労系サービスは、就労移行支援・就労継続支援A型・就労継続支援B型の三つを中心に構成されます。対象者と目的の違いを正確に押さえることが国試対策の要となります。
就労移行支援
就労移行支援は、一般企業への就職を目指す65歳未満の障害者を対象とするサービスです。利用期間は原則2年間で、知識・技能の訓練、職場体験、求職活動の支援、就職後の職場定着支援までを一貫して提供します。精神障害者が一般就労を目指す場合の第一選択となるサービスです。
就労継続支援A型
就労継続支援A型は、一般企業での就労は困難であるものの、雇用契約を結んだうえで働ける障害者を対象とします。事業所と利用者の間に労働契約が結ばれるため、最低賃金が保証されます。
就労継続支援B型
就労継続支援B型は、一般企業での就労が困難で、かつ雇用契約を結ばない形で軽作業などに従事する障害者を対象とします。賃金ではなく工賃が支払われ、年齢制限はありません。A型との違いは雇用契約の有無である点が頻出です。
就労定着支援と就労選択支援
一般就労した後の職場定着を支えるサービスとして就労定着支援があり、就職後6か月から最長3年間、生活面・就労面の相談に応じます。さらに2025年度には、本人の希望や適性に沿ったサービス選択を支援する就労選択支援が新設されました。
関係する職種と機関
就労支援には福祉サービス以外にも多くの機関が関わります。障害者職業センターは職業評価や職業準備訓練を行い、職場に出向いて本人と企業の双方を支援するジョブコーチを派遣します。ハローワークには障害者専用の相談窓口が設けられ、職業紹介を行います。若年層には地域若者サポートステーション、うつ病などからの復職を目指す人には医療機関で行われるリワークプログラム(復職支援デイケア)が用いられます。
精神保健福祉士の役割
精神保健福祉士(PSW)は、精神障害者の社会復帰や福祉サービス利用に関する専門職で、国家資格です。退院支援における住居確保、生活保護や障害年金などの経済的支援の手続き、就労支援機関や地域資源との連携調整を担います。医療保護入院では退院後生活環境相談員としての配置が義務づけられており、入院早期から退院後の生活を見据えた支援を行います。
長期入院者の地域移行・地域定着支援
精神科病院に長期入院している人が地域生活へ戻るためには、退院前から準備を進める必要があります。地域移行支援は、精神科病院に直近1年以上入院している精神障害者などを対象に、退院前から関わって住居の確保や障害福祉サービスの体験利用を行い、地域生活への移行を支援するサービスです。退院後は地域定着支援が24時間の相談体制を提供し、緊急時にも対応します。地域移行支援と地域定着支援はセットで活用されます。
障害者雇用促進法と合理的配慮
障害者雇用促進法は、一定規模以上の企業に対して法定雇用率を満たすことを義務づけており、精神障害者もその対象に含まれています。さらに事業主には、障害特性に応じた業務調整や勤務時間の配慮など、合理的配慮を提供する義務があります。これにより、精神障害者が能力を発揮しながら働き続けられる環境整備が進められています。
まとめ
精神障害者の就労支援は、障害者総合支援法による就労移行支援・就労継続支援A型・B型を中心に、就労定着支援、地域移行支援、地域定着支援などが組み合わされて提供されます。一般就労を目指す場合は65歳未満を対象に原則2年の就労移行支援、雇用契約を結んで働く場合はA型、結ばずに働く場合はB型と整理して覚えます。長期入院者には直近1年以上の入院を要件とする地域移行支援が用いられ、精神保健福祉士が住居・経済支援や関係機関との連携を担います。雇用面では障害者雇用促進法が法定雇用率と合理的配慮を定め、福祉と雇用の両輪で精神障害者の社会参加を支えています。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
障害福祉サービスのうち、一般企業への就職を目指す65歳未満の障害者に対し原則2年間提供されるサービスをという。
- 2.
一般企業での就労は困難だが、事業所と雇用契約を結んで働ける障害者を対象とし、最低賃金が保証されるサービスをという。
- 3.
一般企業での就労が困難で、雇用契約を結ばずに軽作業などに従事し工賃が支払われるサービスをという。
- 4.
職場に出向いて障害者と企業の双方を支援する人材として、障害者職業センターから派遣される専門員をという。
- 5.
精神障害者の社会復帰や福祉サービス利用を支援する国家資格の専門職をという。
- 6.
医療保護入院において、退院後の生活環境に関する相談を担う者として配置が義務づけられているのはである。
- 7.
精神科病院に直近1年以上入院している精神障害者などを対象に、退院前から関与して地域生活への移行を支援するサービスをという。
- 8.
事業主に対し法定雇用率の達成や合理的配慮の提供を義務づけている法律はである。
- 9.
障害特性に応じて業務内容や勤務時間を調整するなど、事業主が障害者に提供すべき配慮をという。
- 10.
就労系障害福祉サービスや地域生活支援を提供する、旧障害者自立支援法を改正した法律はである。
