呼吸不全と酸素療法適応
成人看護学 / 呼吸器系
解説
呼吸不全とは、呼吸機能の障害により動脈血の酸素化や二酸化炭素の排出が十分に行えなくなった状態をいいます。今回は呼吸不全の定義と分類、酸素療法の適応基準について解説します。
呼吸不全の定義と分類
呼吸不全は、室内空気呼吸下において動脈血酸素分圧(PaO2)が60Torr(mmHg)以下となった状態と定義されます。さらに動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)の値によってⅠ型とⅡ型に分類されます。PaCO2が45Torr以下であればⅠ型呼吸不全、PaCO2が45Torrを超える場合はⅡ型呼吸不全です。
Ⅰ型呼吸不全は肺胞レベルでのガス交換障害が主体で、肺炎、肺水腫、肺塞栓症、間質性肺炎などが代表的な原因疾患です。一方Ⅱ型呼吸不全は肺胞換気量の低下によって生じ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、神経筋疾患、睡眠時無呼吸症候群、重症喘息などでみられます。
動脈血ガス分析の基準値
健常成人の基準値はPaO2が80〜100Torr、PaCO2が35〜45Torr、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)は96〜99%です。これらの値を基準として呼吸不全の有無や型を判断します。
酸素療法の適応とPaO2 60Torrの意義
酸素療法の一般的な適応基準は、室内空気下でPaO2が60Torr未満、またはSpO2が90%未満の状態です。この基準にはヘモグロビン酸素解離曲線における生理学的な根拠があります。PaO2 60TorrはちょうどSpO2 90%に相当し、曲線の変曲点にあたります。これを下回ると曲線が急峻に低下するため、わずかなPaO2の低下でもSpO2が大きく低下し、組織への酸素供給が急激に不十分となります。
Ⅱ型呼吸不全とCO2ナルコーシス
Ⅱ型呼吸不全患者に高濃度酸素を投与すると、低酸素刺激による呼吸中枢の駆動が失われ、換気量が低下してPaCO2がさらに上昇します。これにより意識障害や呼吸抑制をきたす状態をCO2ナルコーシスといいます。
そのためCOPDなどのⅡ型呼吸不全では、**SpO2の目標を88〜92%**に設定し、鼻カニューレなどによる低流量酸素療法を行うのが原則です。動脈血ガス分析を併用して経過を確認します。
Hugh-Jones分類
Hugh-Jones分類は息切れ(呼吸困難)の程度を歩行や日常動作との関係で評価する指標で、Ⅰ度からⅤ度までの5段階に分けられます。Ⅰ度は同年齢健常者と同様に労作できる状態、Ⅴ度は会話や着替えでも息切れが生じ外出不能な状態を示します。COPDなど慢性呼吸器疾患の日常生活動作能力の把握に用いられ、mMRC息切れスケールやNYHA心機能分類との区別が必要です。
まとめ
呼吸不全はPaO2 60Torr以下と定義され、PaCO2 45Torrを境にⅠ型とⅡ型に分類されます。酸素療法はPaO2 60Torr未満あるいはSpO2 90%未満で適応となり、Ⅱ型ではCO2ナルコーシスを避けるため低流量で慎重に投与します。Hugh-Jones分類は呼吸困難の程度を日常動作との関係で評価する重要な指標です。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
呼吸不全は室内空気下でPaO2がTorr以下の状態と定義される。
- 2.
PaCO2がTorr以下の呼吸不全をⅠ型呼吸不全という。
- 3.
PaCO2が45Torrを超える呼吸不全を型呼吸不全という。
- 4.
酸素療法の適応はPaO2 60Torr未満またはSpO2%未満である。
- 5.
Ⅱ型呼吸不全に高濃度酸素を投与した際に生じる呼吸抑制をという。
- 6.
呼吸困難の程度を日常動作との関係で5段階に評価する分類を分類という。
- 7.
健常成人のPaCO2の基準値はTorrである。
- 8.
COPDなどⅡ型呼吸不全のSpO2の目標値は%である。
