産褥期の乳腺炎とラッチオン
母性看護学 / 産褥期・授乳
解説
産褥期の乳腺炎とは、産後の乳房に生じる炎症性疾患で、乳汁のうっ滞や細菌感染を背景に発症します。今回は産褥期の乳腺炎と、母乳育児を支える基本技術であるラッチオンについて解説します。
母乳分泌と産褥期の乳房変化
産褥期とは分娩後6〜8週間の期間を指し、母体が妊娠前の状態に戻る時期です。母乳の性状は段階的に変化し、産褥1〜3日は初乳で量は少ないものの免疫グロブリンA(IgA)が豊富です。産褥3〜5日は移行乳、産褥7〜10日以降は成乳となり分泌量が安定します。乳汁分泌が急に増える時期には乳房が硬く張る乳房緊満が生じ、熱感や軽い疼痛を伴うことがあります。これは生理的現象であり、頻回授乳によって改善します。
乳腺炎
乳腺炎は乳汁うっ滞や細菌感染により乳腺に炎症が起こる疾患で、産褥2〜3週以降に多くみられますが、産褥初期にも発症します。原因菌は黄色ブドウ球菌が最多で、児の口腔内や乳頭の傷から侵入します。分類としてはうっ滞性乳腺炎と化膿性乳腺炎があり、後者は抗菌薬投与が必要で、悪化すると乳房膿瘍を形成し切開排膿を要します。
症状と鑑別
乳腺炎では片側または両側乳房の硬結、発赤、熱感、疼痛とともに38℃前後の発熱を認めます。単なる乳房緊満との違いは、明らかな炎症所見(発赤・強い疼痛)と発熱を伴う点です。なお産褥2〜10日に2日以上38℃以上の発熱が続く状態は産褥熱と定義され、子宮内感染などが疑われますが、子宮復古や悪露が正常であれば乳腺炎を考えます。
予防とケア
予防の基本は乳汁うっ滞をつくらないことで、頻回授乳、正しい抱き方と吸着、乳頭・乳輪の清潔保持が重要です。授乳後の冷罨法も有効です。発熱や膿性乳汁を認めれば医師の診察が必要です。
ラッチオン
ラッチオンとは、児が乳頭と乳輪を口に深く含み、効果的に吸啜できる状態をいいます。児が大きく口を開けた瞬間に、乳頭だけでなく乳輪まで深くくわえさせることがポイントです。下唇が外側にめくれ、顎が乳房に密着し、口角が広く開いている状態が望ましく、児の舌が乳頭の下に伸び、乳管洞を圧迫することで母乳が効率よく引き出され、乳頭損傷も予防できます。授乳姿勢は母子の体を密着させ、児の耳・肩・腰が一直線になるように整えます。
空腹サインは、舌なめずりや手を口に持っていく、探索反射などが早期サインで、泣くのは遅いサインです。早期サインの段階で授乳を開始するとスムーズな吸着につながります。
まとめ
産褥期の乳房ケアでは、乳汁分泌の生理を理解したうえで、乳房緊満と乳腺炎を鑑別することが重要です。乳腺炎は黄色ブドウ球菌による感染が多く、発熱と炎症所見を伴います。予防には頻回授乳と正しいラッチオンが不可欠で、児に乳輪まで深く含ませる吸着の援助が看護師の重要な役割となります。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
産褥1〜3日に分泌される、IgAを豊富に含む母乳をという。
- 2.
乳腺炎の主な原因菌はである。
- 3.
乳汁うっ滞に細菌感染が加わって発症する乳腺の炎症をという。
- 4.
児が乳頭と乳輪を口に深く含み、効果的に吸啜できる状態をという。
- 5.
効果的な吸着のためには、児に乳頭だけでなくまで深くくわえさせる。
- 6.
産褥2〜10日に2日以上38℃以上の発熱が続く状態をという。
- 7.
産褥3〜5日頃に分泌される、初乳から成乳への中間の母乳をという。
- 8.
乳腺炎が悪化して膿瘍を形成した場合には、が必要となる。
