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母乳育児を支える看護の基本——うっ滞性乳腺炎は『止めずに流す』が正解

看護師国家試験 第115午後66

国試問題にチャレンジ

115午後66

うっ滞性乳腺炎について正しいのはどれか。

  1. 1.授乳を継続する。
  2. 2.自覚症状が乏しい。
  3. 3.感染によって生じる。
  4. 4.分娩直後に発症することが多い。

対話形式の解説

博士博士
今日はうっ滞性乳腺炎について学ぶぞ。産褥期看護では非常に頻出のテーマじゃ。
サクラサクラ
『うっ滞性』って、何かが滞っているという意味ですよね?
博士博士
その通り。乳汁が乳管内にうっ滞して乳腺に炎症が起きる病態じゃ。重要なのは、これは細菌感染が原因ではないという点じゃよ。
サクラサクラ
じゃあ感染性の乳腺炎とは別物なんですね。
博士博士
そうじゃ。乳腺炎は大きく『うっ滞性(非感染性)』と『化膿性(感染性)』に分けられる。うっ滞性は乳汁の流れが滞ったことが原因で、化膿性は乳頭亀裂などから黄色ブドウ球菌が侵入して起こる。両者の鑑別が看護判断の第一歩じゃ。
サクラサクラ
いつ頃発症しやすいんですか?分娩直後でしょうか?
博士博士
いや、分娩直後はまだ乳汁分泌量が少ない初乳期じゃから、うっ滞は起こりにくい。乳汁分泌が本格化する産後2〜3日目以降、つまり乳房緊満が現れる頃から数週間以内に発症することが多いのじゃ。
サクラサクラ
なるほど。じゃあ症状はどうですか?
博士博士
乳房の張り・硬結・圧痛・発赤・熱感に加え、38℃前後の発熱や悪寒、全身倦怠感など、自覚症状はかなり明確に出る。『自覚症状が乏しい』というのは誤りじゃな。
サクラサクラ
では治療や看護は何が基本になるんですか?
博士博士
ここが今日の最重要ポイントじゃ。うっ滞性乳腺炎の治療は『うっ滞した乳汁を排出すること』に尽きる。だから授乳は中止せず、むしろ患側を含めて積極的に授乳・搾乳を継続するのじゃ。
サクラサクラ
えっ、痛いのに授乳していいんですか?お母さんもつらそうですし、止めた方がいい気がしますが…。
博士博士
それが大きな誤解なんじゃ。授乳を中止するとさらにうっ滞が悪化し、二次的に細菌感染を起こして化膿性乳腺炎へ進展するリスクが高まる。痛みがあっても、患側からの授乳が一番の治療になる。
サクラサクラ
具体的にはどんな看護援助があるんですか?
博士博士
ポイントは幾つかある。まず授乳前に温罨法やシャワーで乳管を開きやすくし、授乳後は冷罨法で腫脹と疼痛を和らげる。授乳姿勢を横抱き・脇抱き・縦抱きと変えて、児の口角の位置を変えることで詰まりやすい部位の乳汁排出を促す。手搾乳や搾乳器も併用する。そして十分な水分摂取と休息も大切じゃ。
サクラサクラ
看護師の役割って大きいですね。母乳育児を支援する専門職もいるんでしょうか?
博士博士
鋭い質問じゃ。IBCLC(国際認定ラクテーション・コンサルタント)という国際資格があってな、母乳育児支援の専門家として活動しておる。日本にも認定者がおるぞ。さらにWHOとUNICEFは『母乳育児を成功させるための10のステップ』を提唱し、世界的に母乳育児を推進しておる。
サクラサクラ
看護師としても母乳育児の知識をしっかり持つことが大切なんですね。
博士博士
その通りじゃ。母親は痛みや不安、自己効力感の低下を抱えやすい時期じゃから、技術的支援だけでなく心理的サポートも欠かせない。『あなたのおっぱいは大丈夫ですよ』と肯定的に関わることが母親の自信につながるのじゃ。

POINT

うっ滞性乳腺炎の発症機序(非感染性・乳汁うっ滞が主因)と、ケアの基本である『授乳継続』を問う問題。化膿性乳腺炎との鑑別ポイントを整理しておくことが重要。

解答・解説

正解は1です

問題文:うっ滞性乳腺炎について正しいのはどれか。

解説:正解は 1 です。うっ滞性乳腺炎は、産生された乳汁が乳管内に貯留・うっ滞することで乳腺組織に炎症反応が生じる非感染性の乳腺炎です。乳汁分泌が本格化する産後2〜3日目以降(移行乳から成乳への切り替え期)から数週間以内に好発し、乳房の硬結・緊満感・疼痛・発赤・発熱(軽度〜中等度)といった自覚症状を伴います。治療・看護の基本は『うっ滞している乳汁をいかに排出するか』であり、患側を含めて積極的に授乳・搾乳を継続し、乳管の通過性を回復させることが第一選択となります。授乳を中止すると乳汁うっ滞がさらに悪化し、二次的に細菌感染を起こして化膿性(感染性)乳腺炎へ進展するリスクが高まるため、原則として授乳を継続することが重要です。

選択肢考察

  1. 1.  授乳を継続する。

    正解。うっ滞性乳腺炎の最も有効な治療は、うっ滞した乳汁を排出することである。患側乳房から先に授乳を行ったり、児の口角を変えてさまざまな抱き方(横抱き・脇抱き・縦抱き)で吸啜させることで詰まりやすい部位の乳汁排出を促す。授乳後も残った乳汁は手搾乳または搾乳器で排出する。

  2. ×2.  自覚症状が乏しい。

    誤り。うっ滞性乳腺炎では、乳房の張り・硬結・圧痛・熱感・発赤などの局所症状に加え、38℃前後の発熱や悪寒・全身倦怠感など、明らかな自覚症状を呈することが多い。むしろ症状が乏しいのは初期の単純なうっ滞であり、炎症が進めば症状は顕在化する。

  3. ×3.  感染によって生じる。

    誤り。うっ滞性乳腺炎は乳汁の機械的なうっ滞による無菌性の炎症であり、細菌感染が原因ではない。細菌(黄色ブドウ球菌など)が乳頭亀裂などから侵入して生じるのは化膿性(感染性)乳腺炎であり、うっ滞性乳腺炎が遷延した結果として二次的に発症することがある。両者の鑑別が看護判断のうえで重要となる。

  4. ×4.  分娩直後に発症することが多い。

    誤り。分娩直後はまだ乳汁分泌量が少ない初乳期であり、うっ滞は起こりにくい。乳汁分泌が本格化する産後2〜3日目以降、いわゆる『乳房緊満』が出現する時期から数週間以内に発症することが多い。授乳間隔があきすぎたり、児の吸啜が不十分な場合にも生じやすい。

乳腺炎は『うっ滞性(非感染性)』と『化膿性(感染性)』に大別される。うっ滞性は乳汁排出の促進が基本で、授乳前の温罨法やシャワーで乳管を開きやすくし、授乳後は腫脹・疼痛軽減のため冷罨法を行う。授乳姿勢の工夫、乳房マッサージ、十分な水分摂取と休息も重要となる。一方、化膿性乳腺炎では38.5℃以上の高熱・強い疼痛・膿性分泌物・腋窩リンパ節腫脹がみられ、抗菌薬治療(多くは黄色ブドウ球菌を想定したペニシリン系・セフェム系)が必要となる。膿瘍を形成した場合は切開排膿を要する。なお、抗菌薬使用中も基本的には授乳継続可能であることを覚えておきたい。

うっ滞性乳腺炎の発症機序(非感染性・乳汁うっ滞が主因)と、ケアの基本である『授乳継続』を問う問題。化膿性乳腺炎との鑑別ポイントを整理しておくことが重要。

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。