産褥期の退院指導と社会資源
母性看護学 / 産褥期・授乳
解説
産褥期とは、分娩終了後から母体が妊娠前の状態に戻るまでの約6〜8週間の時期をいいます。今回は産褥期の正常な経過と退院指導、母子が利用できる社会資源について解説します。
産褥期の身体変化
産褥期の身体変化は、妊娠前の状態に戻る退行性変化と、授乳に向けて進行する進行性変化に分けて理解します。
退行性変化
退行性変化の中心は子宮復古です。子宮底の高さは、分娩直後で臍下2〜3横指、産褥1日目で臍高、産褥2日目で臍下1〜2横指となり、以降1日に約1横指ずつ下降します。産褥10日ごろには恥骨上で触れなくなり、6〜8週で非妊時の大きさに戻ります。観察では、子宮底の高さに加えて子宮の硬度、後陣痛の有無、悪露の性状を確認します。
悪露は子宮内腔からの分泌物で、産褥1〜3日の赤色悪露、4〜8日の褐色悪露、9日以降の黄色悪露、3〜4週ごろの白色悪露へと変化し、6〜8週で消失します。量は産褥1日目が最多で以降漸減します。正常悪露には血塊は混ざらず、レバー状の塊や鮮紅色悪露の持続、悪臭、多量出血、発熱は子宮復古不全や胎盤・卵膜遺残、産褥熱などの異常を疑うサインです。会陰縫合部は発赤・腫脹・離開・滲出液の有無を観察します。
進行性変化
乳房は産褥1〜2日で緊満し乳管が開通、3〜4日で本格的な乳汁生成が始まります。分娩後2〜3日までの黄色みを帯びた濃い乳汁を初乳といい、免疫グロブリンA(IgA)を豊富に含みます。その後、移行乳(4〜10日)を経て10日以降に成乳となります。児の吸啜刺激でプロラクチンとオキシトシンが分泌され、乳汁産生と射乳反射が確立します。
退院時の観察と退院指導
退院時には、母体のバイタルサイン、子宮復古、悪露、会陰縫合部、乳房(緊満・乳管開通・乳頭の状態)、下肢の浮腫や血栓徴候、児の健康状態を総合的に確認します。
退院指導では、褥婦自身が異常を早期に発見できるよう、悪露の色・量・におい、血塊の有無の観察意義を伝えます。さらに乳房ケアと授乳の方法、バランスのとれた栄養、十分な休息と睡眠、悪露が続く間の入浴制限(シャワー浴)、産後うつのスクリーニングと相談先について説明します。気分の落ち込みや不眠が続く場合は早期受診を促します。
母子保健施策と社会資源
産褥期に利用できる代表的な事業を、根拠法と対象とセットで整理します。
乳児家庭全戸訪問事業は通称「こんにちは赤ちゃん事業」と呼ばれ、児童福祉法に基づき、原則として生後4か月までの乳児がいるすべての家庭を対象に、保健師や助産師等が訪問して育児相談や情報提供を行う一般子育て支援事業です。正常経過の母子にも適用される制度のため、退院時指導で広く案内されます。
養育支援訪問事業は児童福祉法に基づき、特定妊婦、若年妊娠、経済的困窮、育児不安など、出産後の養育に特に支援が必要と判断された家庭が対象となります。未熟児養育医療は母子保健法に基づき、出生体重2,000g以下などの未熟児の入院医療費を公費負担する給付制度です。母子保健法による新生児訪問指導や未熟児訪問指導、産婦健康診査(産後2週・1か月)、産後ケア事業、妊産婦健康診査もあわせて押さえます。育成医療は身体障害児、養育医療は未熟児を対象とする点を混同しないようにします。
地域資源としては、市町村の保健センター、地域子育て支援拠点、産後ケア施設、ファミリーサポートセンターがあり、就労継続中の家庭では育児休業給付金が利用できます。対象要件と根拠法を整理して覚えることが、国試対策の要点です。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
産褥期の身体変化のうち、妊娠前の状態に戻る変化を、授乳に向けて進む変化を進行性変化という。
- 2.
産褥1〜3日の悪露はで、その後褐色、黄色、白色へと変化する。
- 3.
分娩後2〜3日までに分泌される濃い乳汁をといい、IgAを豊富に含む。
- 4.
子宮底は産褥10日ごろには上で触れなくなる。
- 5.
乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)は児童福祉法に基づき、原則として生後か月までの乳児がいるすべての家庭を対象とする。
- 6.
特定妊婦や育児不安のある家庭など、養育に特に支援が必要な家庭を対象とする事業をという。
- 7.
母子保健法に基づき、低出生体重児等の入院医療費を公費負担する制度を(養育医療)という。
- 8.
悪露中にレバー状のがみられた場合は、子宮復古不全や遺残を疑い報告が必要である。
