産褥期と新生児期の看護
母性看護学 / 産褥期・授乳
解説
今回は産褥期と新生児期の看護について解説します。産褥期とは分娩後におよそ6〜8週間続く、母体が妊娠前の状態に回復していく期間を指します。新生児期とは生後28日未満を指し、子宮外環境への適応がはじまる極めて変化の大きな時期です。この二者は同時並行で進むため、母児双方の生理的特徴と看護のポイントを一体で理解する必要があります。
新生児の体温管理
新生児は体表面積が体重に比して大きく、皮下脂肪が乏しく、ふるえによる熱産生ができないため、生まれた直後から急速に体温が低下しやすい特徴があります。新生児は震えのかわりに褐色脂肪細胞による非ふるえ熱産生でわずかに熱を作り出していますが、その能力には限界があるため、外的な保温が不可欠となります。
熱喪失の4経路
新生児の熱喪失は、蒸散・輻射(放射)・伝導・対流の4経路に分けて理解します。蒸散とは皮膚や呼吸器から水分が蒸発する際に熱が奪われる現象で、出生直後に体表に付着した羊水を速やかに拭き取ることで予防します。輻射(放射)とは離れた場所にある低温の物体に向かって赤外線として熱が放出される現象で、冷たい壁や窓のそばを避けることが対策となります。伝導とは皮膚が直接接している物体に熱が移動する現象で、体重計や寝具をあらかじめ温めておくことで予防します。対流とは皮膚の周囲を流れる空気によって熱が運び去られる現象で、空調や人の動きによる気流が原因となります。出生児を寝かせるコットを空調の風が当たらない場所に配置する行為は、この対流による熱喪失を防ぐ看護に該当します。
これらの熱喪失を最小化し、酸素消費とエネルギー消費が最少となる温熱環境を**中性温度環境(ニュートラル・サーマル・ゾーン)**と呼び、保育の基本とされます。
産褥期の乳房と授乳援助
産褥期にはプロラクチンとオキシトシンの作用により乳汁分泌が確立していきます。乳汁産生はプロラクチン、乳汁の射出はオキシトシンが担い、児の吸啜刺激が両ホルモンの分泌を促します。産褥3日目前後は乳汁分泌が急増する時期で、乳房の緊満や熱感がみられやすくなります。
乳房の型と授乳姿勢
乳房は形状によりⅠ型(扁平型)、Ⅱa型(お椀型)、Ⅱb型(やや下垂したお椀型)、**Ⅲ型(下垂型)**に分類されます。授乳姿勢は乳房の型や緊満の程度、母体の状態に合わせて選択します。
横抱きは最も基本的な姿勢ですが、乳房が大きく下垂したⅢ型や緊満が強い場合には乳房が圧迫されやすく、児が深く吸着しにくいことがあります。このような場合には**フットボール抱き(脇抱え)**が適しています。フットボール抱きとは児を母親の脇の下に抱え込み、児の頭を手で支える姿勢で、母親が下方から乳房を支えやすく圧迫が最小になるため、Ⅲ型乳房や緊満の強い乳房、帝王切開後の創部保護にも有用です。そのほか縦抱き(横座り抱き)は児の鼻づまりや乳房の特定部位を吸わせたいときに使われます。乳管の開通数は10〜15本程度が正常とされますが、開通数が少なくても吸啜刺激により増えていくため授乳継続が大切です。
新生児のアセスメント
新生児の哺乳量が足りているかを評価する指標は、排尿回数、排便回数、授乳時間、授乳後の満足度、体重増加です。生後数日の排尿は日齢に応じた回数とされ、生後1週ごろには1日6回以上が目安となります。1回の授乳に30分以上かかったり、授乳後も啼泣が続いたり、排尿が1日4回程度と少ないという所見がそろえば、哺乳量不足を疑い、授乳前後の体重測定や授乳支援が必要となります。生理的体重減少は出生体重の5〜10%までが正常範囲です。経皮ビリルビン値や原始反射(モロー反射、吸啜反射、把握反射)も毎日の観察項目に含めます。
まとめ
産褥期と新生児期の看護では、母体の乳房・子宮復古の生理的変化と、新生児の体温・哺乳・黄疸の適応経過を同時に観察することが基本となります。新生児の熱喪失は蒸散・輻射・伝導・対流の4経路に整理し、それぞれに対応した具体的な看護行為を選択できるようにしておきます。乳房の型に応じた授乳姿勢の選択、特にⅢ型や緊満時のフットボール抱きの活用、哺乳量不足を示すサインの読み取りは、国試と臨床の双方で問われる重要な知識です。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
新生児の熱喪失は蒸散・輻射・伝導・の4経路に分類される。
- 2.
コットを空調の風が当たらない場所に配置することは、による熱喪失を予防する看護行為である。
- 3.
新生児が皮膚や呼吸器から水分が蒸発する際に熱を奪われる経路をという。
- 4.
新生児は震えによる熱産生ができないため、による非ふるえ熱産生に依存している。
- 5.
新生児の酸素消費とエネルギー消費が最少となる温熱環境を(ニュートラル・サーマル・ゾーン)という。
- 6.
乳房全体が大きく下垂傾向にある型を型といい、緊満が強い場合の授乳ではフットボール抱きが適している。
- 7.
乳房Ⅲ型や緊満が強いとき、児を脇の下に抱え込み乳房への圧迫を最小限にできる授乳姿勢を(脇抱え)という。
- 8.
日齢4で1回の授乳に30分以上かかり授乳後も啼泣が続き排尿が1日4回と少ない所見は、を疑う重要なサインである。
- 9.
新生児の生理的体重減少は、出生体重の%までが正常範囲とされる。
