不妊症の定義と検査
母性看護学 / 生殖・受精・避妊・不妊
解説
不妊症とは、妊娠を希望し避妊せずに通常の性生活を一定期間続けても妊娠に至らない状態をいいます。日本産科婦人科学会は2015年に定義を改訂し、それまで2年とされていた期間を1年に短縮しました。これは加齢に伴う妊孕性の低下が明らかになり、早期に検査・治療を開始することが妊娠成立に有利であるとの知見が広まったためです。
不妊症の原因
不妊の原因は女性側のみにあると思われがちですが、実際にはWHOの調査などからも示されるとおり、女性側と男性側がほぼ同等の割合で関与しています。両側に原因がある場合や、検査をしても原因が特定できない機能性不妊(原因不明不妊)も存在します。したがって不妊検査は当初からカップル双方が対象となります。
女性側の原因には排卵障害、卵管因子(卵管閉塞・狭窄・癒着)、子宮因子(子宮筋腫、子宮内膜症、子宮形態異常)、頸管因子、免疫因子などがあります。男性側の原因では造精機能障害、精路通過障害、性機能障害が代表的で、なかでも造精機能障害が最も多いとされます。加齢の影響も大きく、女性では30代後半から卵子の質と数が低下し、男性でも精子の質の低下が知られています。
不妊症の検査
女性に対する基本的なスクリーニング検査として基礎体温(BBT)測定があります。起床直後に体を動かす前に婦人体温計を舌下に入れて測定し、低温相と高温相の二相性を確認することで排卵の有無や黄体機能、高温相の長さを推定できます。簡便で非侵襲的なため、初診時から指導される代表的な検査です。
そのほか、ホルモン検査(FSH・LH・エストラジオール・プロゲステロン・プロラクチン・甲状腺ホルモン・AMHなど)で内分泌環境を評価し、子宮卵管造影で卵管の通過性と子宮腔の形態を確認します。経腟超音波検査では卵胞発育や子宮内膜厚を観察し、必要に応じてフーナー試験や子宮鏡検査が追加されます。男性に対しては精液検査が必須で、精液量、精子濃度、運動率、正常形態率などをWHO基準に照らして評価します。
治療のステップアップと公的支援
治療は侵襲性の低いものから段階的に進めるステップアップ治療が基本です。基礎体温や超音波で排卵日を予測するタイミング法から始め、効果が乏しければ人工授精(AIH)へ、さらに体外受精(IVF)、顕微授精(ICSI)といった生殖補助医療(ART)へと移行します。ARTについては従来、特定不妊治療費助成事業として国・自治体の公的助成制度が設けられていましたが、2022年4月からは体外受精・顕微授精を含む基本的な不妊治療が年齢・回数の要件のもとで保険適用となりました。
看護師の関わり
不妊治療は長期にわたることが多く、検査や治療の過程で身体的負担に加え、月経のたびに失望を経験するなど心理的負担も大きくなります。カップルの約5.5組に1組が不妊の検査や治療を受けた経験があるとされ、決して特別なことではありません。看護師は検査・治療内容を理解しやすいように説明し、意思決定を支援するとともに、プライバシーに配慮した環境を整え、不安や悲嘆に寄り添う心理的サポートを行うことが重要です。早期受診が治療成績に直結することを念頭に、年齢や生活背景に応じた情報提供を行います。
まとめ
不妊症は妊娠を希望し避妊なしで1年間妊娠しない状態と定義され、原因は男女ほぼ同等に存在します。基礎体温、ホルモン検査、子宮卵管造影、精液検査などのスクリーニングを経て、タイミング法から人工授精、体外受精、顕微授精へとステップアップ治療が行われ、2022年4月以降は基本的な不妊治療が保険適用となりました。加齢の影響を踏まえた早期受診の促しと、長期治療を支える心理的サポートが看護の鍵となります。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
日本産科婦人科学会の定義では、不妊症とは妊娠を希望し避妊せずに性生活を送っても年間妊娠しない状態をいう。
- 2.
不妊の原因は女性側と男性側がの割合で関与する。
- 3.
女性不妊の代表的なスクリーニング検査である測定では、二相性が確認できれば排卵が推定できる。
- 4.
卵管の通過性や子宮腔の形態を評価する検査をという。
- 5.
男性不妊の評価には検査が必須であり、精子濃度や運動率などを評価する。
- 6.
不妊治療は侵襲性の低いタイミング法から始め、(AIH)、体外受精、顕微授精へと段階的に進める。
- 7.
体外受精に卵子への精子注入を加えた高度生殖補助医療を(ICSI)という。
- 8.
2022年月から体外受精・顕微授精を含む基本的な不妊治療が保険適用となった。
- 9.
女性の妊孕性はとともに低下するため、早期受診が治療成績に直結する。
