セクシュアリティとジェンダー
母性看護学 / 女性のライフサイクル・性周期
解説
セクシュアリティとは、人間の性に関わる総体的な概念であり、身体的・精神的・社会的な側面を含む幅広いものです。今回は、セクシュアリティとジェンダーについて、看護に必要な基礎知識を解説します。
セクシュアリティの定義と意義
**セクシュアリティ(sexuality)**とは、人間の性を総体的にとらえる概念です。WHO(世界保健機関)は、セクシュアリティを身体的・精神的・社会的健康の総合として定義しています。単に生殖や性行為のみを指すのではなく、人格や生き方、人間関係を含む広い概念です。
人間の性には、次の4つの意義があるとされます。第一に、子孫を残す生殖性です。第二に、性的な喜びを感じる快楽性です。第三に、愛情・信頼・絆など人間関係を形成する連帯性です。第四に、心理的・社会的属性としての性役割です。これら4つは相互に関連し、人間の性を豊かに支えています。
セクシュアリティを構成する4つの要素
セクシュアリティは、次の4つの軸(SOGIE)から構成されると考えられています。
第一に、**生物学的性(sex)**は、出生時の身体的特徴(性器・染色体・性腺など)によって割り当てられた性です。第二に、**性自認(gender identity、ジェンダーアイデンティティ)**は、自分自身がどの性であると認識しているかを示します。第三に、**性的指向(sexual orientation)**は、恋愛感情や性的欲求がどの性に向かうかを示します。第四に、**性役割/性表現(gender role / gender expression)**は、服装・髪型・言葉づかいなど社会的・文化的に表現される性です。
ジェンダー(社会的・文化的性)
**ジェンダー(gender)**とは、生物学的な性別であるセックス(sex)と区別され、社会・文化の中で形成される「男らしさ」「女らしさ」といった役割や規範、ふるまい、期待を指します。WHOは「社会的に構築された男女の特性、役割、行動様式」と定義しています。1995年の北京女性会議以降、国際的に広く使用されるようになりました。ジェンダーは時代・文化・地域によって変化する可変的なものであり、生物学的に決定されているわけではありません。
性的指向の分類
性的指向には次のような分類があります。異性に向かうヘテロセクシュアル(異性愛)、同性に向かうホモセクシュアル(同性愛、女性間はレズビアン、男性間はゲイ)、両性に向かうバイセクシュアル(両性愛)、他者に性的関心を持たないアセクシュアル(無性愛)、性別にとらわれず人に惹かれるパンセクシュアルなどがあります。
性同一性障害/性別違和
性同一性障害(GID)は、出生時に身体的特徴から割り当てられた性と性自認とが持続的に一致せず、強い苦痛や社会生活上の困難が生じる状態です。アメリカ精神医学会のDSM-5では性別違和(gender dysphoria)、WHOのICD-11では**性別不合(gender incongruence)**という呼称が用いられ、疾患というよりも状態として位置づけられる方向にあります。
日本では、2003年に制定された「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(特例法)」により、一定の要件のもとで戸籍上の性別変更が可能です。要件には、2人以上の医師による診断、18歳以上、未婚であること、現に未成年の子がいないこと、変更後の性別の性器に近似する外観などがあります。なお生殖腺要件については、2023年の最高裁違憲判決を受けて見直しが進められています。
LGBTQ+とSOGI
**LGBTQ+**は、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)、クィアまたはクエスチョニング(Q)、およびその他の多様な性を表す総称です。このうちLGBは性的指向の領域、Tは性自認の領域に関わります。
またSOGI(Sexual Orientation and Gender Identity)は、性的指向と性自認を表す概念で、特定の人だけでなくすべての人が持つ属性として多様性をとらえる視点を提供します。性自認と生物学的性が一致する人をシスジェンダー、一致しない人をトランスジェンダーといい、男女どちらにも当てはまらないXジェンダーやノンバイナリーといった概念もあります。
看護師の対応
看護師は、多様な性のあり方を尊重する姿勢が求められます。まずプライバシーの保護が重要であり、本人の了解なく性的指向や性自認を第三者に伝えるアウティングは決して行ってはなりません。また、自身の性のあり方を表明することをカミングアウトといい、看護師は守秘義務を厳守する必要があります。
臨床では、入院時の病室・呼称・更衣室・トイレなどの配慮、トランスジェンダー患者へのホルモン療法や性別適合手術後のケアなど、個別性に応じた対応が求められます。
まとめ
セクシュアリティは、生物学的性・性自認・性的指向・性表現という多面的な要素から成り立つ概念です。ジェンダーは社会的・文化的に形成される性であり、時代とともに変化します。看護師は、多様な性のあり方を尊重し、プライバシー保護とアウティング防止を徹底しながら、患者一人ひとりに寄り添うケアを提供することが大切です。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
セクシュアリティを身体的・精神的・社会的健康の総合として定義しているのはである。
- 2.
セクシュアリティの構成要素のうち、自分自身が認識する性を(ジェンダーアイデンティティ)という。
- 3.
恋愛感情や性的欲求が向かう性をという。
- 4.
社会・文化の中で形成される「男らしさ」「女らしさ」といった役割や規範をといい、生物学的性であるセックスと区別される。
- 5.
DSM-5では性同一性障害を(gender dysphoria)と呼び、ICD-11では性別不合と呼ぶ。
- 6.
日本では2003年制定の(特例法)により、一定の要件下で戸籍上の性別変更が可能である。
- 7.
性自認と生物学的性が一致する人を、一致しない人をトランスジェンダーという。
- 8.
本人の了解なく性的指向や性自認を第三者に伝えることをといい、看護師は決して行ってはならない。
- 9.
自身の性的指向や性自認を表明することをといい、看護師は守秘義務を厳守する必要がある。
- 10.
性的指向と性自認を表し、多様性をとらえる概念をという。
