受精と着床の機序
母性看護学 / 生殖・受精・避妊・不妊
解説
今回は受精と着床の機序について解説します。
月経周期とホルモン
受精と着床を理解するためには、まず女性の月経周期と関与するホルモンを押さえる必要があります。月経周期は大きく卵胞期と黄体期に分けられます。 卵胞期では、下垂体前葉から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)の作用で卵巣内の卵胞が成熟していきます。卵胞からはエストロゲンが分泌され、子宮内膜は厚みを増す増殖期に入ります。エストロゲンが一定レベルに達すると下垂体前葉から黄体形成ホルモン(LH)が一過性に大量分泌され、これをLHサージと呼びます。LHサージは排卵の引き金となり、その約24〜36時間後に排卵が起こります。 排卵後の卵胞は黄体に変化し、黄体期に入ります。黄体からはプロゲステロンが分泌され、子宮内膜は受精卵の着床に適した分泌期へと変化します。受精が成立しなければ黄体は退縮し、エストロゲン・プロゲステロンが急減して子宮内膜が剥離し、月経が起こります。
排卵と卵管への取り込み
成熟した卵胞はグラーフ卵胞と呼ばれ、ここから卵子が腹腔内へ放出されます。これが排卵です。放出された卵子はそのまま流れ落ちるのではなく、卵管の先端にある卵管采によって捕捉されます。卵管采は指のような突起をもち、卵子を卵管内へ取り込む役割を担います。 取り込まれた卵子は、卵管のうち子宮から最も遠位にあるラッパ状に膨らんだ部位である卵管膨大部へと運ばれます。
受精の場所と機序
受精とは、精子の細胞核と卵子の細胞核が融合し、新しい個体の遺伝情報を備えた受精卵が成立する現象です。受精が最も高頻度で起こる場所は卵管膨大部です。子宮内や腹腔内ではなく、卵管の遠位部であることが国試で頻出のポイントです。 精子は腟・子宮・卵管を上行しながら受精能を獲得し、卵管膨大部で卵子と出会います。多数の精子のうち1つだけが卵子の透明帯を通過して細胞質内へ入り、核融合が完了します。
卵子と精子の生存期間
卵子の生存期間は、排卵後およそ12〜24時間と短く、受精が可能な時間は限られます。一方、精子は女性生殖器内でおよそ2〜3日(最大5日程度)受精能を保つことができます。この生存期間の差から、排卵日の少し前に性交渉があった場合でも受精は成立し得ます。
受精卵の発生と子宮腔への移動
受精卵は卵管膨大部で発生を開始し、卵割を繰り返しながら卵管を通って子宮腔へ向かいます。受精から約1日で2細胞期、3〜4日で桑実胚となり、ちょうどこの頃に子宮腔へ到達します。その後さらに分裂を続け、受精後5〜6日で内部に空洞を持つ胚盤胞に発達します。
着床
胚盤胞は子宮腔内を漂った後、子宮内膜に接着し内部に侵入していきます。これが着床です。着床は受精後6〜7日目に開始し、12日頃に完了します。着床部位は**子宮内膜(子宮体部)**であり、子宮頸部や卵管に着床した場合は異所性妊娠(子宮外妊娠)となります。
hCGと妊娠の判定
着床が始まると、胚の外側を覆う栄養膜(絨毛)から**hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)**が分泌されます。hCGは黄体を維持してプロゲステロンの分泌を継続させ、妊娠の維持に働きます。 市販の妊娠検査薬は尿中のhCGを検出する仕組みで、着床から10日前後で陽性となります。妊娠初期の診断における重要な指標です。
まとめ
月経周期ではFSHにより卵胞が成熟し、LHサージを契機として排卵が起こります。排卵された卵子は卵管采に捕捉され卵管膨大部へ移動し、ここで精子と出会って受精が成立します。卵子の生存期間は12〜24時間、精子は2〜3日です。受精卵は2細胞期・桑実胚・胚盤胞と発生しながら子宮腔へ到達し、受精後6〜7日で子宮内膜に着床を開始、12日頃に完了します。着床後は絨毛からhCGが分泌され、これが妊娠検査薬で検出されます。受精の場所が卵管膨大部であること、着床の時期と部位、hCGの由来は国試で繰り返し問われる最重要事項です。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
卵胞期にエストロゲンが上昇すると下垂体前葉からLHが一過性に大量分泌され、これが排卵の引き金となる。この現象をという。
- 2.
排卵後の卵胞は黄体に変化し、子宮内膜を分泌期へと変化させて着床に適した状態にするホルモンであるを分泌する。
- 3.
排卵された卵子は、卵管の先端にある指状の突起であるによって捕捉され、卵管内へ取り込まれる。
- 4.
受精は卵管のうち、子宮から最も遠位にあるラッパ状に膨らんだ部位であるで最も高頻度に起こる。
- 5.
卵子の生存期間は排卵後およそであり、受精可能な時間は限られている。
- 6.
受精卵は卵割を繰り返し、受精後5〜6日で内部に空洞を持つに発達して子宮内膜への着床に備える。
- 7.
子宮内膜への着床は受精後日目に開始し、12日頃に完了する。
- 8.
着床部位は子宮頸部や卵管ではなく、である。
- 9.
着床後、胚の栄養膜(絨毛)から分泌され、妊娠検査薬で検出されるホルモンをという。
