喉頭摘出後の変化
成人看護学 / 呼吸器系
解説
喉頭摘出後の変化とは、喉頭全摘出術によって生じる発声・嗅覚・呼吸経路に関わる生理的および機能的な変化を指します。今回は喉頭摘出後の変化について解説します。
喉頭全摘出術と気管孔造設
喉頭全摘出術は、進行した喉頭癌や下咽頭癌に対して行われる手術で、喉頭を切除し、気道と食道を完全に分離します。これにより、頸部前面に永久気管孔が造設され、術後の呼吸はすべてこの気管孔を介して行われることになります。鼻腔や口腔は呼吸経路から外れ、食物の通り道としてのみ機能するようになります。
嗅覚と発声への影響
空気が鼻腔を通らなくなるため、嗅細胞へ匂い分子が到達せず、嗅覚は著明に低下します。嗅覚を再獲得するための訓練として、口蓋の動きを利用して鼻腔に空気を引き込むPolite Yawning法が用いられます。また、声帯が失われるため通常の発声は不可能となり、代用音声の習得が必要となります。代表的な方法には、空気を食道に取り込んで噴出させる食道発声、振動装置を頸部にあてる電気式人工喉頭、気管と食道の間にシャントを設けて発声する**シャント発声(プロボイス)**があります。
鼻腔・咽頭機能の喪失と日常生活上の注意
永久気管孔からの直接呼吸となるため、本来鼻腔や咽頭が担っていた空気の加温・加湿・異物濾過の機能が失われます。これを補うために人工鼻を気管孔に装着し、吸気の湿度と温度を保ち、塵埃の侵入を防ぎます。入浴や洗髪の際は気管孔への水の侵入を防ぐため、気管孔プロテクターの使用を指導します。また、食道の解剖学的変化により嚥下した食物が鼻腔へ逆流することがあるため、食事時の姿勢にも注意が必要です。
緊急時の対応
心肺停止などの急変時には、口対口の人工呼吸は無効です。空気は気管孔から直接気管に出入りしているため、救命時の人工呼吸は気管孔への送気で行う必要があります。家族や本人にもこの点を周知しておくことが重要です。
まとめ
喉頭摘出後は、永久気管孔の造設により呼吸経路が変化し、嗅覚低下、発声不能、加温加湿機能の喪失といった多面的な変化が生じます。看護では代用音声訓練の支援、人工鼻や気管孔プロテクターを用いたセルフケア指導、緊急時の気管孔換気の周知を行い、患者が安全に社会生活を継続できるよう援助することが求められます。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
喉頭全摘出術後に頸部前面に造設される、呼吸のための恒久的な開口部をという。
- 2.
喉頭摘出後は空気が鼻腔を通らなくなるため、嗅細胞へ匂い分子が届かずが著明に低下する。
- 3.
喉頭摘出後の嗅覚再獲得を目的に、口蓋の動きを用いて鼻腔へ空気を引き込む訓練法をという。
- 4.
空気を食道に取り込み噴出させて音声を作る代用音声をという。
- 5.
頸部に振動装置をあてて音声を作る器具をという。
- 6.
気管と食道の間にシャントを設けて発声する方法をという。
- 7.
永久気管孔造設後、吸気の加温・加湿および異物濾過のために装着する器具をという。
- 8.
入浴や洗髪時に気管孔への水の侵入を防ぐために使用するものを気管孔という。
- 9.
喉頭摘出患者の急変時には、口対口の人工呼吸ではなくへの送気で人工呼吸を行う。
- 10.
喉頭摘出後は食道の解剖学的変化により、嚥下した食物がへ逆流することがある。
