初乳と免疫グロブリン
母性看護学 / 新生児期・適応
解説
生まれたばかりの新生児は、母体内の無菌に近い環境から細菌やウイルスにあふれた外界へと飛び出してきます。しかし新生児自身の免疫機能はまだ未熟で、自力で抗体を十分につくることができません。この弱い時期の感染から赤ちゃんを守ってくれるのが、母親から受け継ぐ抗体と、出生後に飲む母乳に含まれる免疫物質です。本項では母乳の分類と、その中心にある免疫グロブリンの働きを整理していきます。
母乳の分類と初乳の特徴
母乳は分泌される時期によって性状が大きく変化します。分娩後5〜7日頃までに分泌されるものを初乳と呼び、黄色〜クリーム色で粘稠度が高いのが特徴です。続く7〜10日頃のものを移行乳、10日以降のものを成乳といい、成乳は乳白色でさらりとした性状になります。
初乳には**分泌型IgA(sIgA)**をはじめとする免疫グロブリンが豊富に含まれます。さらに鉄と結合して細菌の増殖を抑えるラクトフェリン、細菌の細胞壁を分解するリゾチーム、ラクトアルブミンなどのタンパク質が多く、マクロファージや好中球といった白血球まで含まれています。脂質や乳糖といったエネルギー源は成乳より少ないものの、感染防御と、胎便排泄の促進という大切な役割を担います。一方の成乳はエネルギー源である乳糖と脂質が増え、栄養補給と成長促進が主な役割となります。
免疫グロブリンの5クラス
免疫グロブリンはIgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類に分類されます。IgGは血中で最も多く、5クラスの中で唯一胎盤を通過できるため移行抗体と呼ばれ、生後6か月頃まで新生児を守ります。二次応答の主役でもあります。IgAは粘膜免疫の中心で、母乳に最も多く含まれます。母乳中では二量体に分泌成分が結合した分泌型IgAとなり、消化酵素に分解されにくく、新生児の腸管内で安定して抗体活性を発揮します。IgMは五量体で一次応答の主役となり、感染初期の指標として利用されます。IgDはB細胞表面に存在しますが機能には不明な点が多く、IgEはI型アレルギーや寄生虫感染に関与し肥満細胞に結合します。
新生児の二段構えの感染防御
新生児の感染防御は、胎盤経由で受け取ったIgGと、母乳経由で受け取る分泌型IgAという二段構えで成立しています。母乳栄養児は人工栄養児に比べて感染症やアレルギー疾患の発症が少ないことが知られており、出生後早期からの頻回授乳は母乳分泌の確立と、母子の絆であるボンディング形成の両面で重要です。
まとめ
初乳は分娩後5〜7日頃までに分泌される黄色く粘稠な母乳で、分泌型IgAやラクトフェリンなど感染防御因子を豊富に含み、胎便排泄も促します。免疫グロブリンの中で胎盤を通過できるのはIgGのみで移行抗体として働き、母乳の中心はIgAです。胎盤からのIgGと母乳からの分泌型IgAという二段構えの防御が、免疫が未熟な新生児を支えていることを理解しておきましょう。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
分娩後5〜7日頃までに分泌される黄色く粘稠な母乳をという。
- 2.
初乳は分娩後日頃までに分泌される。
- 3.
母乳中に最も多く含まれ、粘膜免疫の中心となる免疫グロブリンはである。
- 4.
母乳中のIgAは二量体に分泌成分が結合したとして存在し、消化酵素に分解されにくい。
- 5.
初乳に多く含まれ、鉄と結合して細菌の増殖を抑えるタンパク質をという。
- 6.
免疫グロブリンのうち血中で最も多く、二次応答の主役となるのはである。
- 7.
5クラスの免疫グロブリンの中で唯一を通過できるのはIgGである。
- 8.
胎盤を通過し生後6か月頃まで新生児を守るIgGをという。
- 9.
感染初期の一次応答の主役となる五量体の免疫グロブリンはである。
- 10.
出生後早期からの頻回授乳は母乳分泌の確立とともに、母子の絆である形成に重要である。
