小児の免疫と抗体
小児看護学 / 小児の成長・身体発達
解説
今回は小児の免疫と抗体について解説します。新生児や乳児は、自分自身で病原体に対する抗体を十分につくることができません。そのため、胎児期から乳児期にかけては母体から受け取る抗体と、自分自身の産生する抗体が組み合わさって体を守っています。免疫グロブリンの種類ごとの特徴と、年齢に伴う変動を理解することが、小児看護における感染予防の基盤となります。
免疫グロブリンの種類と特徴
抗体の本体である免疫グロブリン(Ig)には、IgG・IgA・IgM・IgD・IgEの5種類があります。それぞれ構造や機能、産生される時期が異なり、小児の免疫を理解するうえで欠かせない知識です。
IgGは血清中に最も多く存在する免疫グロブリンで、細菌やウイルスの中和、補体の活性化、オプソニン化などを担います。最大の特徴は5種類の免疫グロブリンのうち唯一胎盤を通過できることであり、この性質が新生児の感染防御に大きく関わります。
IgMは感染初期に最も早く産生される五量体の抗体で、分子量が大きいため胎盤を通過できません。胎児自身が後期から産生を開始するため、出生時の臍帯血IgMが高値の場合は子宮内感染(TORCH症候群など)を疑う重要な指標になります。
IgAは粘膜面や分泌液中に多く含まれる二量体の抗体で、消化管や気道の粘膜防御を担います。母乳、特に初乳に多量に含まれ、新生児の腸管を病原体から守ります。IgEはⅠ型アレルギー反応に関与し、IgDは機能が十分解明されていない微量の抗体です。
胎児期から乳児期の免疫の特徴
母体からの受動免疫(IgGの胎盤通過)
胎児期、母体の免疫グロブリンのうちIgGだけが胎盤を通過して胎児に移行します。これを受動免疫といいます。IgGの移行は妊娠後期、特に妊娠28週以降に急速に進むため、早産児では受け取れるIgG量が少なく感染しやすくなります。
出生時の新生児血中IgGは母体由来のIgGがほぼすべてを占め、母親とほぼ同等かやや高い値を示します。これにより新生児は出生直後から、母親がこれまでに獲得した感染症(麻疹、風疹、水痘など)に対する免疫を一時的に持っています。
生後3〜6か月の感染リスク期
母体由来のIgGは生後徐々に分解されて減少していき、一方で乳児自身のIgG産生はゆっくりとしか立ち上がりません。その結果、生後3〜6か月ごろに血中免疫グロブリン総量、特にIgGが最低値となります。この時期を生理的低ガンマグロブリン血症(生理的無γグロブリン血症)とよび、生涯のうちで最も感染症にかかりやすい時期の一つです。
この時期は手洗いや感染者との接触回避など、家族を含めた環境調整が非常に重要になります。また、定期予防接種のスケジュールはこの感染リスク期を見越して計画されている点も理解しておきましょう。
母乳による免疫(IgA)
新生児期から乳児期には、母乳を介してIgAが供給されます。特に出産後数日間に分泌される初乳には分泌型IgA(sIgA)が高濃度で含まれており、消化管内で分解されにくい構造を持っています。腸管粘膜に結合して病原体の侵入を防ぐため、母乳栄養児は人工栄養児に比べて消化管感染症や呼吸器感染症にかかりにくいとされています。
免疫グロブリンの年齢に伴う変動
免疫グロブリンの推移は種類ごとに大きく異なり、国試では血清濃度の経時変化を示すグラフの読み取り問題が頻出です。
IgGは出生時に母体由来で高値を示しますが、生後3〜6か月で最低となり、その後は自己産生によって徐々に上昇します。成人レベルに達するのは5〜6歳ごろです。
IgMは胎盤を通過しないため出生時は低値ですが、胎児後期から自己産生が始まっており、出生直後から比較的速やかに上昇します。1歳前後で成人レベルに近づきます。
IgAは胎盤を通過せず、新生児期はほぼゼロに近い状態から始まります。自己産生はゆっくり立ち上がるため、成人レベルに達するのは10歳前後と最も遅く、なだらかな上昇曲線を描くのが特徴です。
このように、出生時に高値で一度下がってから上昇するのがIgG、出生直後から立ち上がるのがIgM、ゼロからゆっくり上昇するのがIgAというパターンを区別できることが重要です。
まとめ
小児の免疫において中心となるのは、5種類の免疫グロブリンのうちIgGのみが胎盤を通過して胎児に移行するという受動免疫の仕組みです。出生後は母体由来IgGが減少する一方で自己産生が追いつかず、生後3〜6か月で血中免疫グロブリンが最低となる感染リスク期を迎えます。この時期を母乳由来のIgA、特に初乳の分泌型IgAが消化管粘膜で補完します。臍帯血IgM高値は子宮内感染のサイン、IgAは成人レベルに達するのが最も遅いなど、各免疫グロブリンの特徴と年齢推移を整理して覚えることが、小児看護と国試対策の要となります。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
免疫グロブリン5種類のうち、胎盤を通過して母体から胎児へ移行できるのはのみである。
- 2.
母体由来のIgGが減少し、乳児自身のIgG産生が追いつかないことで血中免疫グロブリンが最低となる時期は生後頃である。
- 3.
母乳、特に初乳に高濃度に含まれ、新生児の消化管粘膜を感染から守る免疫グロブリンはである。
- 4.
新生児の臍帯血で高値であった場合に子宮内感染(TORCH症候群など)を疑う免疫グロブリンはである。
- 5.
免疫グロブリンのうち、血清中に最も多く存在し感染防御の中心を担うのはである。
- 6.
免疫グロブリンのうち、成人レベルに達する年齢が10歳前後と最も遅いのはである。
- 7.
胎児が母体から胎盤を介してIgGを受け取り感染防御を得る仕組みをという。
