炎症性腸疾患の病態と看護
成人看護学 / 消化器系
解説
炎症性腸疾患(IBD)とは、原因不明の慢性的な腸の炎症を起こす疾患の総称で、代表的なものに潰瘍性大腸炎とクローン病があります。今回はこの二大疾患の病態と看護について解説します。
潰瘍性大腸炎の病態
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜にびらんや潰瘍がびまん性かつ連続性に生じる原因不明の慢性炎症性腸疾患で、厚生労働省の指定難病に指定されています。炎症は粘膜層から粘膜下層という比較的浅い層にとどまるのが特徴です。病変は直腸から始まり、口側(上行性)に連続的に広がっていきます。そのため好発部位は直腸で、進展範囲によって直腸炎型・左側大腸炎型・全大腸炎型に分類されます。
主症状は粘血便、頻回の下痢、腹痛、発熱、体重減少です。経過は寛解と再燃を繰り返すのが特徴で、発症から10年以上経過した全大腸炎型では大腸癌の発生リスクが上昇するため、定期的な大腸内視鏡によるサーベイランスが推奨されます。重症例では中毒性巨大結腸症や穿孔、大出血に注意が必要です。
クローン病の病態
クローン病は、口腔から肛門までの全消化管に炎症や潰瘍を生じる慢性炎症性腸疾患で、回盲部に好発します。病変が連続せず正常粘膜を挟んで飛び飛びに分布する非連続性病変(skip lesion)と、縦走潰瘍・敷石像が特徴です。炎症は全層性に及ぶため、瘻孔・狭窄・膿瘍・痔瘻などを併発しやすくなります。主症状は腹痛、下痢、体重減少で、小腸病変による吸収障害から低栄養になりやすい疾患です。潰瘍性大腸炎と比べて癌化のリスクは相対的に低いとされています。
治療と再燃時の検査値の読み方
潰瘍性大腸炎の薬物療法は5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA、メサラジン)を基本とし、重症度に応じて副腎皮質ステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤、JAK阻害薬を用います。再燃期には、持続する下痢・血便で水分と電解質が失われ脱水になりやすく、出血による貧血(Hb低下)、炎症と腸管透過性亢進による低アルブミン血症、CRP上昇がみられます。血漿膠質浸透圧が低下すると浮腫が出現しやすくなるため、栄養状態と水分バランスの双方をアセスメントする必要があります。
クローン病の栄養療法
クローン病では低栄養を防ぐため栄養療法が治療の柱となります。活動期には成分栄養剤(エレンタール)による経腸栄養が寛解導入・維持の第一選択となります。食事療法の原則は高カロリー・高蛋白・低脂肪・低残渣で、蛋白源は鶏肉・白身魚・卵・豆腐など脂質が少なく消化しやすい食材を選びます。狭窄がある場合は繊維質をさらに厳格に制限します。喫煙は再燃リスクを高めるため必ず禁煙指導を行います(潰瘍性大腸炎とは逆の関係である点に注意します)。
看護のポイント
再燃期の急性増悪期にある患者では、発熱・倦怠感・頻回の下痢があるため、入浴は循環動態への負担や排便コントロールの困難から避け、清拭による清潔援助を選択します。ステロイド使用中は易感染性が高まるため、陰部洗浄や口腔ケアを併せて行います。退院指導では、寛解維持のための服薬アドヒアランス、過労やストレスの回避、再燃の早期徴候(血便増加、発熱、頻回下痢)のセルフモニタリングを伝えます。再燃予防には、患者自身の生活パターンを振り返り、悪化の誘因を協働的に特定して修正していく姿勢が支援的です。
まとめ
潰瘍性大腸炎は大腸に限局した連続性・粘膜層の炎症で粘血便と癌化リスクが特徴であり、クローン病は全消化管に非連続性・全層性の炎症が及び瘻孔・狭窄や低栄養が問題となります。両者の鑑別は国試頻出であり、病変部位・深さ・症状・合併症・食事療法の違いを整理して押さえておきましょう。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
潰瘍性大腸炎の炎症はに限局し、病変はから口側へ連続性に広がる。
- 2.
潰瘍性大腸炎はとを繰り返す慢性疾患であり、厚生労働省のに指定されている。
- 3.
発症から10年以上経過した全大腸炎型の潰瘍性大腸炎ではの発生リスクが上昇するため定期的な内視鏡サーベイランスが推奨される。
- 4.
クローン病の病変はまでの全消化管に生じ、病変が飛び飛びに分布する病変(skip lesion)が特徴である。
- 5.
クローン病の炎症はに及ぶため、瘻孔・狭窄・膿瘍などを併発しやすい。
- 6.
潰瘍性大腸炎の薬物療法の基本は(メサラジン)製剤である。
- 7.
再燃期の潰瘍性大腸炎では血液漏出によると、炎症によるがみられる。
- 8.
クローン病の食事療法の原則は高カロリー・高蛋白・・であり、活動期にはによる経腸栄養が第一選択となる。
- 9.
クローン病では再燃リスクを高めるためを避けるよう指導する。
- 10.
炎症性腸疾患の急性増悪期で発熱や倦怠感が強い患者には、身体的負担を考慮し入浴ではなくを選択する。
