StudyNurse

1型糖尿病とDKA

小児看護学 / 小児腎・内分泌・代謝系

解説

1型糖尿病とは、自己免疫の働きによって膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンがほとんど分泌されなくなる疾患です。インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンであり、これが絶対的に欠乏するため、生涯にわたってインスリン補充療法が必須となります。発症は学童期から思春期に多く、家族歴のない子どもにも突然発症する点が、生活習慣が関与する2型糖尿病との大きな違いです。今回は、1型糖尿病の特徴と、その急性合併症である糖尿病ケトアシドーシス(DKA)について解説します。

1型糖尿病の病態と診断

1型糖尿病では、何らかのきっかけで自己免疫反応が起こり、リンパ球が膵β細胞を攻撃して破壊します。診断補助として、血液中の抗GAD抗体(抗グルタミン酸脱炭酸酵素抗体)や抗膵島細胞抗体が陽性となることが多く、自己免疫機序を裏づける重要な指標です。インスリンが分泌されないために血糖が高値となり、腎臓の再吸収閾値を超えたブドウ糖が尿中に排泄されます。このとき水分も一緒に引き出されるため、浸透圧利尿が起こり、多尿となります。失われた水分を補うために多飲となり、それでも追いつかず脱水と体重減少が進みます。学童であれば、いったん消失していた夜尿が再び現れることも特徴的なサインです。倦怠感や易疲労感も加わり、これらの三主徴(多飲・多尿・体重減少)は国試でも頻出のキーワードです。

糖尿病ケトアシドーシス(DKA)の機序

DKAは、1型糖尿病の発症時やインスリン治療を自己中断したとき、また感染などのストレス時に起こりやすい急性代謝合併症です。インスリンが絶対的に欠乏すると、細胞はブドウ糖を取り込めず、代わりに脂肪を分解してエネルギーを得ようとします。脂肪分解が亢進すると肝臓でケトン体が大量に産生され、血液が酸性に傾いて代謝性アシドーシスとなります。診断は、血糖250mg/dL以上、動脈血pH7.3未満または重炭酸イオン(HCO3⁻)18mEq/L未満、尿中または血中ケトン陽性の三項目で判断します。重症度はpHで分類され、7.2〜7.3が軽症、7.1〜7.2が中等症、7.1未満が重症です。

DKAの症状

症状としては、まず高血糖と脱水による口渇・多飲・多尿・倦怠感が現れ、進行すると嘔気・嘔吐・腹痛が加わります。アシドーシスを呼吸で代償しようとして、深く大きな呼吸が連続するクスマウル呼吸が出現します。さらにケトン体のうちアセトンが呼気に混じることで、独特の甘酸っぱい果実様のアセトン臭(果実臭)を伴います。重症化すると意識障害から昏睡に至るため、早期発見が極めて重要です。

DKAの治療

治療の柱は輸液とインスリン投与です。まず生理食塩水による輸液を行い、最初の1時間は10〜20mL/kgを目安に脱水を補正します。続いて速効型インスリンを0.05〜0.1単位/kg/時で持続静注し、ゆるやかに血糖を下げます。血糖が250〜300mg/dL程度まで下がってきたら、輸液にブドウ糖を加えて低血糖を防ぎます。インスリン投与によりカリウムが細胞内へ移動するため、低カリウム血症に注意が必要で、心電図モニターと血清K値の確認を行いながらカリウムを補正します。アシドーシスに対して重炭酸ナトリウムを投与することは、急激なpH変化や脳浮腫を誘発するリスクがあるため、原則として推奨されません。特に小児では急激な血糖低下や浸透圧の変化により脳浮腫が起こり、致命的となるため、補正は慎重にゆっくり行うことが鉄則です。

インスリン療法と自己管理

標準的な治療は、持効型インスリンで一日の基礎分泌を補い、超速効型インスリンを各食前に追加する基礎-追加(basal-bolus)療法です。注射部位は腹部・大腿・上腕・殿部で、部位によって吸収速度が異なるため、毎回少しずつずらして打つ部位ローテーションを行います。同じ場所に繰り返し注射すると、皮下が硬く盛り上がるリポハイパートロフィー(皮下硬結)が生じ、吸収が不安定になります。自己注射の指導は、模型やシミュレーターを用いて段階的に習得を促し、小児糖尿病サマーキャンプなどのピアサポートも自己効力感を高めます。

シックデイと低血糖への対応

発熱や嘔吐などで食事がとれない日(シックデイ)でも、インスリンは自己判断で中止せず、頻回に血糖と尿ケトンを測定し、こまめに水分を補給して医師に連絡します。一方、低血糖では手指の震え・空腹感・冷汗・動悸が現れ、ブドウ糖10〜15gを経口摂取します。意識が低下した場合は経口摂取が危険なため、グルカゴンを筋肉内注射します。運動中・運動後は筋への糖取り込みが亢進し、数時間〜24時間後に遅発性低血糖が起こることもあるため、運動前の補食やインスリン減量を計画します。学校生活では食事や運動の制限は不要ですが、低血糖のサインと補食対応を教員と共有することが、安全な生活を支える鍵となります。

まとめ

1型糖尿病は自己免疫による膵β細胞破壊で生じる絶対的インスリン欠乏の疾患であり、抗GAD抗体陽性が診断の手がかりとなります。DKAは血糖250mg/dL以上・pH7.3未満・ケトン陽性で診断され、クスマウル呼吸とアセトン臭が特徴的な所見です。治療は生理食塩水による輸液と速効型インスリンの少量持続静注を基本とし、カリウムと脳浮腫に細心の注意を払って慎重に補正します。日常生活ではインスリンの基礎-追加療法、注射部位のローテーションによるリポハイパートロフィー予防、シックデイ対応、低血糖時のブドウ糖摂取など、自己管理の積み重ねが患者の人生を支えていきます。

確認問題(穴埋め)

空欄をタップすると答えが表示されます。

  1. 1.

    1型糖尿病は、自己免疫機序により膵細胞が破壊され、絶対的インスリン欠乏となる疾患である。

  2. 2.

    1型糖尿病の診断補助として、抗抗体や抗膵島細胞抗体の陽性が用いられる。

  3. 3.

    糖尿病ケトアシドーシス(DKA)は、インスリン絶対的欠乏により脂肪分解が亢進し、が産生されて代謝性アシドーシスをきたす状態である。

  4. 4.

    DKAの診断基準は、血糖mg/dL以上、pH7.3未満またはHCO3⁻18mEq/L未満、ケトン陽性である。

  5. 5.

    DKAでアシドーシスを代償するために出現する、深く大きな過呼吸を呼吸という。

  6. 6.

    DKAでは呼気に甘酸っぱい果実様の臭が認められる。

  7. 7.

    DKAの初期輸液にはを用い、最初の1時間に10〜20mL/kgを目安に投与する。

  8. 8.

    DKA治療中はインスリン投与により細胞内へ移動するため、血清の低下に注意する。

  9. 9.

    小児DKAでは急激な補正によりを起こすリスクがあり、慎重な管理が必要である。

  10. 10.

    同じ部位に繰り返しインスリン注射を行うと、皮下が硬く盛り上がるが生じる。

  11. 11.

    低血糖時には意識があれば10〜15gを経口摂取し、意識低下時はグルカゴンを筋注する。

1型糖尿病とDKA」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。