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大腿骨頸部骨折術後の脱臼

老年看護学 / 運動器・転倒・リハビリ

解説

大腿骨頸部骨折は高齢者に多い骨折で、骨頭への血流が乏しいため骨癒合が得にくく、人工骨頭置換術(人工骨頭で骨頭を置き換える手術)が選択されることが多い疾患です。手術によって痛みは早期に軽減し歩行訓練も進められますが、術後にもっとも警戒すべき合併症が人工股関節脱臼です。脱臼は単なるトラブルではなく、再手術を要することもある重大な合併症であり、看護師は禁忌肢位と発生しやすい時期を正確に理解しておく必要があります。

人工骨頭置換術後に脱臼が起こる仕組み

人工骨頭置換術には大きく分けて前方アプローチと後方アプローチがありますが、現在もっとも多く行われている後方アプローチでは、皮膚を切開した後、股関節を後ろから支えている関節包と短外旋筋群(梨状筋など、大腿骨を外側に回す小さな筋肉の集まり)を一度切離して手術を行います。これらの軟部組織は手術中に縫合されますが、修復が進み関節が安定するまでにはおおむね3〜6週間を要します。この期間は関節を支える「後ろ側のストッパー」が弱い状態にあるため、特定の動きで骨頭が臼蓋(骨盤側の受け皿)から外れやすくなります。

禁忌肢位と脱臼を起こしやすい動作

後方アプローチ後の禁忌肢位は、股関節屈曲90度以上内転(脚を体の正中を越えて反対側へ動かすこと)、内旋(つま先が内側を向くように脚を回すこと)の3つです。これらが単独でも問題ですが、複数が組み合わさる動作はとくに危険です。具体的には、低い椅子やソファに深く腰かける、床の物を拾うために前かがみになる、靴下を自分で履く、横座りをする、和式トイレを使う、浴槽をまたぐといった日常動作が該当します。いずれも股関節を深く曲げながらひねる動きで、人工骨頭が後方へずれて脱臼を生じます。

もっとも警戒すべき時期

脱臼は術直後よりも、離床が進み歩行訓練が本格化する術後2〜3週間前後にもっとも起こりやすくなります。歩行時の疼痛がなくなりADLが拡大する時期は、患者自身の動作が大胆になりやすく、看護師の見守りも緩みがちです。痛みがないからこそ油断が生まれる時期だと理解し、注意深い観察と指導を続ける必要があります。

脱臼予防のための援助と環境調整

脱臼を防ぐためには、肢位制限を守るための具体的な工夫が欠かせません。患肢の間に外転枕を入れて内転と内旋を防ぐ、靴下は長柄のソックスエイドで履く、床の物はリーチャー(長柄のつかみ棒)で取る、椅子は高めに調整し便座には補高便座を使う、浴槽は座ったまま出入りできるバスボードを利用するといった環境調整を退院前から練習します。患者と家族に禁忌肢位を繰り返し説明し、自宅でも実践できるよう生活指導を行うことが看護師の重要な役割です。

まとめ

大腿骨頸部骨折に対する人工骨頭置換術後の脱臼は、後方アプローチ後の軟部組織が修復途上にある術後数週間に、屈曲・内転・内旋が組み合わさる動作で発生します。歩行が安定し痛みが消える時期こそ脱臼リスクがもっとも高い時期であり、禁忌肢位の遵守、補助具の活用、生活環境の調整を通じて、患者が安全に在宅生活へ移行できるよう支援することが看護の核心です。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    後方アプローチによる人工骨頭置換術後の禁忌肢位は、股関節屈曲度以上、内転、の3つである。

  2. 2.

    人工骨頭置換術後、軟部組織の修復によって関節が安定するまでにはおおむね週間を要する。

  3. 3.

    大腿骨頸部骨折はに多く、骨頭への血流が乏しいため骨癒合が得にくく、人工骨頭置換術が選択されることが多い。

  4. 4.

    人工骨頭置換術後にもっとも警戒すべき重大な合併症は人工股関節である。

  5. 5.

    後方アプローチ後の脱臼は、離床が進み歩行訓練が本格化する術後週間前後にもっとも起こりやすい。

  6. 6.

    脚を体の正中を越えて反対側へ動かす動きをといい、後方アプローチ後の禁忌肢位の一つである。

  7. 7.

    床の物を拾うときに用いる長柄のつかみ棒をといい、股関節の深い屈曲を避けるために使用する。

  8. 8.

    靴下を禁忌肢位を取らずに履くための自助具をという。

大腿骨頸部骨折術後の脱臼」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。