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尿失禁の種類と対応

老年看護学 / 排泄機能と援助

解説

今回は尿失禁の種類と対応について解説します。尿失禁とは、自分の意思に反して尿が漏れてしまう状態のことで、日常生活や社会活動に支障をきたす排尿障害の一つです。原因や発生機序によっていくつかのタイプに分類され、それぞれに第一選択となる治療法やケアが異なります。看護師国家試験では、各タイプの定義と特徴、適応となる治療・看護介入、そして失禁に伴う皮膚トラブルへの対応までが繰り返し問われます。基本となる解剖生理から順に整理していきましょう。

排尿の仕組みと畜尿

排尿は、膀胱と尿道の働きが自律神経・体性神経により協調して行われます。蓄尿期には膀胱の排尿筋が弛緩して尿をためる一方、内尿道括約筋(不随意筋)と外尿道括約筋(随意筋)が収縮して尿の漏れを防いでいます。排尿期には逆に排尿筋が収縮し、括約筋が弛緩して尿を体外に排出します。

尿道や膀胱頸部を下方から支えているのが骨盤底筋群で、肛門挙筋・尾骨筋・尿道括約筋などから構成されます。骨盤底筋群が緩むと尿道を支える力が低下し、腹圧がかかったときに尿が漏れやすくなります。妊娠・出産、加齢、肥満、閉経による女性ホルモン低下などが骨盤底筋を弱らせる代表的な要因です。

尿失禁の分類

尿失禁は発生機序によって主に四つに分類されます。各タイプの特徴と原因を正確に区別することが、適切な看護介入を選ぶうえで不可欠です。

腹圧性尿失禁

腹圧性尿失禁は、咳・くしゃみ・笑い・重い物を持ち上げるなど腹圧が急に高まった瞬間に、少量の尿が漏れるタイプです。骨盤底筋群の支持力が低下することで尿道の閉鎖圧が不十分となり、腹圧上昇に対抗できなくなることが原因です。出産経験のある女性や閉経後の中高年女性に多くみられます。第一選択の保存療法は**骨盤底筋訓練(ケーゲル体操)**で、肛門・腟・尿道を意識的に締めて緩める運動を継続的に行います。難治例には中部尿道スリング手術などの外科的治療が選択されます。

切迫性尿失禁

切迫性尿失禁は、強い尿意(尿意切迫感)を感じてからトイレに間に合わず尿が漏れるタイプです。膀胱に十分な尿がたまっていないにもかかわらず排尿筋が勝手に収縮してしまう過活動膀胱が主な原因です。頻尿や夜間頻尿を伴うことが多く、加齢、脳血管障害、パーキンソン病などの神経疾患でも生じます。看護では、徐々に排尿間隔を延ばして膀胱の容量を増やす膀胱訓練が行動療法の中心となります。薬物療法では抗コリン薬やβ3作動薬が用いられますが、高齢者では口渇・便秘・認知機能への影響に注意が必要です。

溢流性尿失禁

溢流性尿失禁は、排尿困難で膀胱に大量の残尿があふれ出るように少しずつ漏れるタイプです。前立腺肥大症などによる下部尿路閉塞や、糖尿病・脊髄損傷などによる排尿筋収縮力の低下が原因で生じます。対応としては、原因疾患の治療に加え、間欠的自己導尿(CIC)や留置カテーテルによる排尿管理が行われます。

機能性尿失禁

機能性尿失禁は、膀胱・尿道自体には異常がないにもかかわらず、認知機能低下や運動障害によってトイレに間に合わずに漏れてしまうタイプです。認知症や脳血管障害後の片麻痺などでみられます。排尿パターンを把握してタイミング誘導排尿(時間排尿誘導)を行ったり、ポータブルトイレの設置や着脱しやすい衣服に変更したりといった環境調整が中心となります。

なお腹圧性と切迫性が合併する混合性尿失禁も実臨床では頻度が高く、両方のアプローチを組み合わせて対応します。

失禁関連皮膚障害(IAD)への対応

尿失禁が持続すると、尿失禁用パッドやおむつ内の湿潤環境と尿中アンモニア・便中酵素の刺激により、皮膚バリアが障害されて発赤・びらん・掻痒感などが生じます。これを**失禁関連皮膚障害(IAD)**といい、外陰部掻痒症や接触性皮膚炎を引き起こす原因となります。

予防・改善の基本は三つです。第一に、パッド交換頻度を増やすことで尿と皮膚の接触時間を短縮し、清潔・乾燥を保ちます。第二に、弱酸性の洗浄剤を用いてこすらずに優しく洗い、ぬるま湯で十分にすすぎます。第三に、ワセリンや撥水性クリームなどの皮膚保護剤を塗布して尿便から皮膚を保護します。これらに加えて、尿失禁そのものの原因評価と骨盤底筋訓練などの根本治療を並行して進めることが重要です。

まとめ

尿失禁は、腹圧性・切迫性・溢流性・機能性の四つに分類され、それぞれ原因と第一選択の対応が異なります。腹圧性尿失禁には骨盤底筋訓練が第一選択で、骨盤底筋の弛緩が原因となる中高年女性に多くみられます。切迫性尿失禁は過活動膀胱が背景にあり、膀胱訓練と薬物療法で対応します。溢流性は導尿、機能性は環境調整が中心です。また失禁用パッドの長時間装着による失禁関連皮膚障害には、こまめなパッド交換と皮膚の清潔・保湿・保護が基本となります。タイプごとの病態と看護介入をセットで整理しておきましょう。

確認問題(穴埋め)

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  1. 1.

    咳やくしゃみで腹圧がかかった瞬間に尿が漏れる尿失禁をといい、第一選択の保存療法は(ケーゲル体操)である。

  2. 2.

    強い尿意を感じてからトイレに間に合わず尿が漏れるタイプをといい、その主な原因疾患はである。

  3. 3.

    過活動膀胱に対する代表的な行動療法で、排尿間隔を少しずつ延ばして膀胱の蓄尿能力を高める方法をという。

  4. 4.

    前立腺肥大症などの下部尿路閉塞や排尿筋収縮力の低下により、大量の残尿があふれて少しずつ漏れる尿失禁をという。

  5. 5.

    膀胱や尿道に異常はないが、認知機能低下や運動障害によりトイレに間に合わず漏れてしまう尿失禁をという。

  6. 6.

    腹圧性尿失禁の原因となる、肛門挙筋などから構成され尿道や膀胱頸部を下方から支える筋群をという。

  7. 7.

    尿失禁用パッドの長時間装着により尿が皮膚に接触し続け、湿潤とアンモニア刺激で皮膚バリアが障害されて生じる皮膚炎をという。予防には頻度を増やし皮膚を清潔・乾燥に保つことが重要である。

尿失禁の種類と対応」の過去問演習

※公式問題・正答は厚生労働省公開資料をもとに整理しています。