加齢の生理機能変化
老年看護学 / 加齢に伴う生理機能変化
解説
加齢の生理機能変化とは、年齢を重ねるにつれて全身の臓器や組織に生じる機能の低下や形態の変化のことです。今回は高齢者の身体に起こる生理的な変化と病的な変化、そして主要な臓器ごとの変化の方向性について解説します。
生理的老化と病的老化
老化は大きく生理的老化と病的老化の二つに区別されます。生理的老化とは、加齢に伴って誰にでも起こる不可逆的な機能低下のことで、肝臓の萎縮、動脈壁の肥厚、水晶体の硬化、心筋の弾性線維の減少、膀胱平滑筋の線維化などが含まれます。生理的老化には四つの特徴があり、誰にでも起こる「普遍性」、遺伝的要因によって進行する「内在性」、不可逆的に進む「進行性」、機能低下をもたらす「有害性」が挙げられます。
一方の病的老化とは、生理的老化が著しく加速した状態、あるいは疾患として現れた状態を指します。代表例には動脈の粥状硬化(アテローム硬化)、骨粗鬆症、アルツハイマー病、パーキンソン病、肺気腫などがあります。動脈硬化のうち粥状硬化は脂質異常症、高血圧、糖尿病、喫煙といった危険因子が関与して進行するため、病的老化として位置づけられます。
加齢で低下する機能と上昇する機能
加齢に伴う変化は臓器ごとに方向性が異なります。減少・低下するものとして、腎臓の糸球体数、糸球体濾過量(GFR)、心拍出量予備、肺活量、骨密度、筋量、免疫機能、唾液分泌量、短期記憶などがあります。逆に増加・上昇するものとして、視覚・聴覚・味覚・嗅覚などの感覚閾値、前立腺重量、収縮期血圧、血管壁の硬さ、体脂肪率、肺の残気量、重心動揺が挙げられます。
機能残存率と最も低下する機能
Shockらの古典的研究では、30歳時の生理機能を100%としたときの老年期の残存率が示されています。神経伝導速度は約85〜90%とよく保たれ、基礎代謝率は約80〜85%、細胞内水分量は約75〜80%と比較的維持されます。これに対して最大換気量(肺活量)は約40〜50%と最も著しく低下し、腎血漿流量も約50%まで低下します。最大換気量が大きく低下する理由は、肺胞壁の弾性低下、胸郭コンプライアンスの低下、呼吸筋力の低下が複合的に進行するためで、高齢者で肺炎や術後の呼吸器合併症が多い背景にもつながります。
高齢者の薬物動態
加齢により肝血流量と肝細胞の代謝酵素(CYP450系)活性が低下し、さらに腎機能低下により薬物の排泄も遅延します。その結果、薬物の血中濃度が高くなりやすく、作用増強や副作用が出現しやすくなります。また体内総水分量の減少と体脂肪量の増加によって薬物の分布容積が変化し、脂溶性薬物の作用が遷延しやすくなる点も特徴です。
まとめ
加齢の生理機能変化では、生理的老化と病的老化の違いを押さえ、機能の低下と上昇の方向性を体系的に理解することが重要です。特に最大換気量の著しい低下と、肝・腎機能低下による薬物動態の変化は国試で繰り返し問われる重要事項です。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
老化のうち、加齢に伴って誰にでも起こる不可逆的な機能低下をといい、疾患として現れたり著しく加速した状態をという。
- 2.
生理的老化の四つの特徴は、普遍性、、進行性、有害性である。
- 3.
動脈硬化のうち、脂質異常症や高血圧などの危険因子が関与して進行する(アテローム硬化)は病的老化の代表例である。
- 4.
加齢に伴い腎臓ではの数が減少し、糸球体濾過量(GFR)も低下する。
- 5.
加齢により視覚・聴覚・味覚・嗅覚などのは上昇する。
- 6.
30歳時を100%としたとき、老年期で機能残存率が最も低下するのは(肺活量)である。
- 7.
高齢者では肝血流量となどの薬物代謝酵素活性が低下し、薬物の血中濃度が高くなりやすい。
- 8.
加齢に伴う筋量・筋力の低下をという。
