脈拍測定の手技
基礎看護学 / バイタル・フィジカルアセスメント
解説
今回は脈拍測定の手技について解説します。
脈拍とは
脈拍とは、心臓の拍動によって生じた血液の拡張波が動脈壁を伝わり、体表近くの動脈で触れる拍動のことです。心臓が1回収縮するごとに大動脈へ血液が押し出され、その圧力の波が末梢の動脈まで届くことで指先に感じられます。正常であれば心拍数と脈拍数はほぼ一致しますが、不整脈などで心臓が収縮しても十分な血液が駆出されない場合は脈として末梢に伝わらず、心拍数より脈拍数が少なくなることがあります。この差を脈拍欠損といいます。
橈骨動脈での測定手技
意識のある成人で最も一般的に用いられる測定部位は、手関節の親指側を走る橈骨動脈です。測定者は示指・中指・薬指の3指をそろえ、指腹を動脈の走行に沿って平行に当て、軽く圧迫して拍動を触知します。位置は手関節よりやや中枢側で、橈骨の上を意識すると探しやすくなります。圧迫が強すぎると動脈をつぶしてしまい触知できなくなるため、拍動が最もよく触れる強さに調整します。
このとき母指(親指)は使いません。母指には測定者自身の母指動脈の拍動があり、これを患者の脈と取り違える危険があるためです。また、手関節の小指側には尺骨動脈が走りますが、深部にあって触知しにくく測定部位としては不適当です。
観察項目
脈拍を測定する際は、1分間あたりの回数だけでなく複数の項目を観察します。リズムが規則的か不規則か(整・不整)、拍動の大きさが大きいか小さいか(大・小)、動脈壁の硬さである緊張度(硬・軟)、そして左右の橈骨動脈で差がないかを確認します。左右差は大動脈解離や閉塞性動脈疾患の手がかりとなる重要な所見です。
正常値・頻脈・徐脈
成人の脈拍の正常値はおおむね60〜80回/分です。100回/分以上を頻脈、60回/分未満を徐脈と呼びます。発熱・脱水・出血・不安などでは頻脈、睡眠時やスポーツ心臓、房室ブロックなどでは徐脈となります。
計測時間と脈拍欠損
計測時間は原則1分間です。リズムが整であれば15秒測って4倍する方法もありますが、不整脈が疑われる場合は必ず60秒間連続して測ります。さらに不整脈の患者では、聴診器で心尖拍動を聴きながら同時に橈骨動脈の脈を触れ、心拍数と脈拍数の差から脈拍欠損の有無を確認します。
その他の触知部位と臨床的意味
橈骨動脈以外にも触知可能な動脈は複数あります。総頸動脈は頸部で太く触れやすいため、心停止の確認など救急時の脈拍チェックに用いられます。上腕動脈は血圧測定の際の聴診部位として重要です。大腿動脈・膝窩動脈・後脛骨動脈・足背動脈は下肢の循環評価に使われ、糖尿病や閉塞性動脈硬化症の所見をみる際に欠かせません。
また、触知できる動脈の部位から収縮期血圧をおおまかに推定できます。橈骨動脈が触れれば収縮期血圧は約80mmHg以上、大腿動脈が触れれば約70mmHg以上、総頸動脈のみ触れる状態であれば約60mmHg以上と判断されます。ショック時にどこまで触知できるかは、循環状態を素早く評価する重要な指標になります。
まとめ
脈拍測定は橈骨動脈で示指・中指・薬指の3指を用い、母指は使わずに1分間測定するのが基本です。回数だけでなくリズム・大きさ・緊張度・左右差を観察し、不整脈があれば脈拍欠損を確認します。救急時は総頸動脈で確認し、触知できる部位からおおよその収縮期血圧を推定できることも押さえておきましょう。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
脈拍測定で最も一般的に用いられる動脈はである。
- 2.
脈拍を測定する際は示指・中指・の3指をそろえて動脈に当てる。
- 3.
測定者自身の動脈拍動と混同する恐れがあるため、脈拍測定には使用しない。
- 4.
成人の脈拍が100回/分以上である状態をという。
- 5.
成人の脈拍が60回/分未満である状態をという。
- 6.
心拍数より脈拍数が少ない状態をという。
- 7.
救急時や心停止の確認ではで脈を触知する。
- 8.
橈骨動脈が触知できれば収縮期血圧は約mmHg以上と推定できる。
- 9.
不整脈がある患者では脈拍を必ず秒間測定する。
- 10.
脈拍の観察項目には回数・リズム・大きさ・緊張度・が含まれる。
