血圧測定の手技
基礎看護学 / バイタル・フィジカルアセスメント
解説
血圧測定は看護師が日常的に行うバイタルサインの基本ですが、手技を一つ誤るだけで数十mmHgの誤差が生じ、診断や治療方針に影響を与えてしまう非常に繊細な技術です。ここでいう血圧とは、心臓が血液を全身に送り出すときに血管壁にかかる圧力のことで、心臓が収縮したときの最高値を収縮期血圧、拡張したときの最低値を拡張期血圧と呼びます。国家試験では、マンシェット(カフ)のサイズ、巻く位置、減圧速度、測定部位の高さなど、細かい数値や原則が繰り返し問われますので、根拠とともに正確に押さえていきましょう。
血圧測定の基本原則
血圧は重力の影響、すなわち静水圧の影響を強く受けます。腕の位置が心臓より低ければ血液が下に引かれて測定値は高くなり、逆に心臓より高ければ低く表示されてしまいます。そのため、マンシェットを巻いた部位は必ず心臓(右心房レベル)と同じ高さに保つことが大原則です。座位で測定する場合は、肘関節を机や枕で支えて筋肉の緊張を解き、心臓の高さに合わせます。
また測定前には、背もたれのある椅子に腰かけて5分以上の安静をとり、会話や食事、運動、入浴、喫煙の直後を避けることも重要です。直前の活動は交感神経を刺激して血圧を一過性に上昇させるためです。
マンシェットの選択と装着
マンシェットの幅は対象に合ったものを選ばなければ正確な値が得られません。JIS規格では成人の上腕用マンシェットの幅は13〜17cm(標準は約14cm)と定められています。幅が狭すぎると圧が十分に伝わらず実測値は高めに、幅が広すぎると低めに表示されます。小児では年齢に応じて5cm、7cm、9cm、12cmを使い分け、大腿で測定する場合は18cm幅を用います。
装着の際は、肘窩から2〜3cm中枢側にマンシェットの下端がくるように巻き、ゴム嚢の中央を上腕動脈の真上に当てます。マンシェットと上腕の間に指が1〜2本入る程度のゆるさが目安で、きつすぎても緩すぎても誤差の原因となります。
触診法と聴診法
触診法は、橈骨動脈などの脈拍を指で触れながらマンシェットを加圧・減圧し、脈が再び触れ始めた圧を収縮期血圧として読み取る方法です。減圧速度は1拍動につき2〜4mmHg程度が推奨され、速すぎると過小評価、遅すぎると静脈うっ血で過大評価となります。触診法では拡張期血圧は測定できませんが、ショック時や騒音下、コロトコフ音が聴取困難な場面で簡便に使え、聴診法での加圧上限を決める前段階としても用いられます。
聴診法では、まず触診法で脈が消失する圧を確認し、そこからさらに20〜30mmHg加圧します。続いて毎秒2〜3mmHgの速度で減圧しながら聴診器でコロトコフ音を聴取し、第Ⅰ相(最初に聞こえた音)を収縮期血圧、第Ⅴ相(音が消失した点)を拡張期血圧として記録します。
まとめ
血圧測定の精度は、マンシェットの幅、巻く位置、腕の高さ、減圧速度といった一つひとつの手技に支えられています。成人上腕用マンシェットは13〜17cm、ゴム嚢は上腕動脈上、肘は心臓の高さ、減圧は毎秒2〜3mmHg、聴診前には触診法で得た値プラス20〜30mmHgまで加圧、という基本セットを身体で覚えておくことが、臨床でも国試でも正確な解答につながります。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
触診法による血圧測定で、再び脈が触れ始めた圧をとして読み取る。
- 2.
触診法での減圧速度は1拍動につきmmHg程度が推奨される。
- 3.
JIS規格における成人上腕用マンシェットの幅はcmと定められている。
- 4.
マンシェットのゴム嚢の中央はの真上に当てる。
- 5.
血圧測定では静水圧の影響を排除するため、測定部位をと同じ高さに保つ。
- 6.
聴診法では触診で脈が消失した圧からさらにmmHg加圧してから減圧を開始する。
- 7.
聴診法における減圧速度は毎秒mmHgが基本である。
- 8.
聴診法ではコロトコフ音の第Ⅰ相を収縮期血圧、第相を拡張期血圧として記録する。
