片麻痺患者の歩行・杖介助
基礎看護学 / 体位・移動・活動
解説
片麻痺とは、脳卒中などにより体の片側に運動麻痺が生じた状態をいいます。今回は片麻痺患者の歩行介助と杖の使い方について解説します。看護師国家試験では、立ち位置・杖の持ち方・三点歩行・階段昇降の原則が繰り返し問われる頻出テーマですので、用語と手順を正確に押さえましょう。
患側と健側、転倒リスク
麻痺のある側を患側、麻痺のない側を健側といいます。片麻痺患者は患側の筋力低下や感覚障害により重心が患側に偏り、ふらつきや膝折れが起こりやすく転倒のリスクが高まります。そのため介助や自助具の使用は、健側で支えながら患側を補強するという原則で組み立てます。
歩行介助時の立ち位置
介助者は患者の患側のやや後方に立ちます。患側はバランスを崩しやすく転倒方向もこちら側になりやすいため、患側の腋窩や腰部を支えて体を起こせるようにします。健側には杖や手すり、壁などの支えがあるため、看護師は健側に立つ必要はありません。前方ではなく後方に位置するのは、視界を妨げず、後方への転倒も防ぎやすいためです。
杖の種類と長さ
杖にはT字杖、ロフストランドクラッチ、四点杖などがあります。長さは、杖を握ったときに肘が約30度屈曲する程度が適切で、立位で大転子の高さに杖の握りがくるのが目安です。長すぎると肩がすくみ、短すぎると前傾姿勢となり、いずれも安定性を損ねます。
杖の持ち方とつく位置
杖は健側の手で持ちます。患側に持つと体重を支えきれず転倒につながるためです。杖をつく位置は健側のつま先から前方外側約15cmで、足と杖で広い支持基底面をつくることで安定します。
三点歩行と二動作歩行
平地での基本は三点歩行で、「杖→患側→健側」の順に出します。常に2点以上が床に接しているため安全性が高く、片麻痺患者の標準的な歩行法とされます。これに対し二動作歩行は、杖と患側を同時に出してから健側を運ぶ方法で、歩調は速くなりますが安定性は三点歩行に劣るため、歩行能力が改善した段階で用います。
階段昇降の原則
階段では「上りは健側から、下りは患側から」が原則です。語呂合わせで「健上・患下」、または「行きは良い良い、帰りは怖い」と覚えます。上りでは健側の足を先に上の段に乗せ、健側で体を引き上げて患側と杖をそろえます。下りでは杖と患側を先に下の段に下ろし、健側で体重を支えながら下ります。いずれも体重を支える脚を健側にすることが安全のポイントです。
履物の選び方
履物はかかとを覆い、足にフィットし、適度な滑り止めのあるものを選びます。スリッパやサンダルは脱げやすく、つまずきや転倒の原因になるため避けます。
まとめ
片麻痺患者の歩行介助では、介助者は患側後方に立ち、杖は健側で持ち、三点歩行で「杖→患側→健側」と進めます。階段は健側から上り、患側から下ります。健側で支え患側を守るという原則を理解しておけば、応用問題にも対応できます。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
片麻痺患者で、麻痺のある側を( )という。
- 2.
歩行介助時、看護師は患者の( )のやや後方に立つ。
- 3.
杖は( )側の手で持つ。
- 4.
杖をつく位置は健側のつま先の前方外側約( )cmである。
- 5.
三点歩行では、杖→( )→健側の順に出す。
- 6.
階段を上るときは( )側の足から出す。
- 7.
階段を下りるときは( )側の足から出す。
- 8.
杖の長さは、握ったときに肘が約( )度屈曲する程度が適切である。
