終末期の意思決定と脳死
基礎看護学 / 看護倫理・看護師法規
解説
終末期の意思決定とは、人生の最終段階においてどのような医療やケアを受けるかを、本人の価値観に基づいて決めていく営みのことです。今回は終末期の意思決定支援に関する基本概念と、脳死判定について解説します。
終末期の意思決定を支える考え方
医療の進歩により延命が可能になった一方で、本人が望まない医療が行われるリスクも高まりました。そこで、判断能力のあるうちに本人の意思を表明し、それを尊重する仕組みが整えられてきました。看護師は患者の意思を引き出し、家族や医療チームの間をつなぐ役割を担います。
リビングウィルと事前指示書
**リビングウィル(living will)**とは、人生の終末期にどのような医療を受けたいか、あるいは受けたくないかを、判断能力があるうちに文書で示しておくものです。延命治療の拒否や希望する緩和ケアの内容などが記され、本人の意思決定能力が失われた後でも意思を尊重する根拠となります。
このリビングウィルに、自分の代わりに意思決定を行う代理意思決定者の指名を加えたものが**アドバンス・ディレクティブ(事前指示書)**です。すなわち事前指示書は「リビングウィル」と「代理意思決定者の指名」の2要素から構成されます。
ACP(人生会議)とDNAR
**アドバンス・ケア・プランニング(ACP)**は「人生会議」とも呼ばれ、本人・家族・医療者が継続的に話し合いを重ねるプロセスを指します。厚生労働省は2018年に「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を改訂し、ACPの考え方を広めました。
**DNAR(Do Not Attempt Resuscitation)**は心停止時に蘇生を試みないという指示で、リビングウィル表明の一例にあたります。
共同意思決定(SDM)
**共同意思決定(Shared Decision Making;SDM)**は、医療者が専門的情報を提示し、患者・家族が価値観や生活背景を持ち寄って双方向で協議し、最適な方針を導くプロセスです。インフォームド・コンセントが医療者からの情報提供を軸とするのに対し、SDMは双方向性が特徴で、科学的優劣が明確でないエクイポイズの状況で特に有用とされます。
脳死とその判定
脳死とは、脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止した状態をいいます。日本では脳死は**臓器移植法(臓器の移植に関する法律)**に基づく臓器提供を前提とした概念であり、一般の臨床的脳死判定とは手続きが異なります。
法的脳死判定の5項目
法的脳死判定では、以下の5項目をすべて満たすことが必要です。第一に深昏睡(JCS III-300、GCS 3点)であること、第二に瞳孔径4mm以上で固定(瞳孔散大固定)していること、第三に対光反射や角膜反射などの脳幹反射の全消失、第四に平坦脳波、第五に無呼吸テストによる自発呼吸の消失です。補助検査として聴性脳幹反応(ABR)が用いられます。
判定の繰り返しと判定医
これらの検査は6時間以上経過後にもう一度繰り返し、不可逆性を確認します。6歳未満の小児では24時間以上の間隔をあけます。判定は脳死判定に必要な知識と経験を持ち、かつ臓器移植に関係しない医師2名以上が行うことと定められています。
まとめ
終末期の意思決定では、リビングウィルや事前指示書による意思表明、ACPによる継続的な話し合い、SDMによる双方向の協議が重視されます。脳死判定は臓器移植法に基づき、深昏睡・瞳孔散大固定・脳幹反射消失・平坦脳波・自発呼吸消失の5項目を満たし、6時間以上(小児は24時間以上)後に再検査して確定します。看護師は患者の価値観に寄り添い、意思決定支援と家族ケアを担う重要な存在です。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
人生の終末期にどのような医療を受けたいかを判断能力があるうちに文書で示しておくものをという。
- 2.
リビングウィルとの指名の2要素から構成される事前指示書を、アドバンス・ディレクティブという。
- 3.
本人・家族・医療者が終末期医療について継続的に話し合うプロセスを(ACP)といい、「人生会議」とも呼ばれる。
- 4.
心停止時に蘇生を試みない指示を、略語でという。
- 5.
医療者と患者・家族が双方向で協議し最適な方針を導くプロセスを(SDM)という。
- 6.
法的脳死判定の5項目には、深昏睡、瞳孔径mm以上で固定、脳幹反射の全消失、平坦脳波、自発呼吸の消失がある。
- 7.
法的脳死判定では、判定を時間以上経過後に繰り返して不可逆性を確認する。
- 8.
6歳未満の小児における脳死判定では、判定の間隔を時間以上あける必要がある。
- 9.
法的脳死判定は、脳死判定に必要な知識と経験を持ち、かつ医師2名以上で行う。
- 10.
脳死判定の補助検査として用いられる聴性脳幹反応の略語はである。
