尿路感染症(腎盂腎炎)
成人看護学 / 腎・泌尿器
解説
尿路感染症とは、尿の通り道(尿道・膀胱・尿管・腎盂・腎実質)に細菌が侵入して炎症を起こす病態の総称です。今回はそのうち上部尿路感染症の代表である腎盂腎炎について解説します。
尿路感染症の分類と腎盂腎炎
尿路感染症は感染部位によって、膀胱や尿道に限局する下部尿路感染症(膀胱炎・尿道炎)と、腎盂や腎実質に及ぶ上部尿路感染症(腎盂腎炎)に分けられます。腎盂腎炎は下部尿路から細菌が逆行性に上行して発症することが多く、発熱を伴う全身症状を呈する点で膀胱炎と区別されます。
感染経路と性差
腎盂腎炎のほとんどは、外尿道口から侵入した細菌が尿道・膀胱を経て尿管をさかのぼり、腎盂・腎実質に達して炎症を起こす上行性感染です。女性は男性に比べて尿道が短く、また外尿道口が肛門に近いため、女性に圧倒的に多くみられます。
主な原因菌
原因菌の大半は腸内に常在するグラム陰性桿菌で、なかでも**大腸菌(Escherichia coli)**が70〜80%を占めて最も多い起因菌です。そのほかKlebsiella、Proteus、Enterobacterなどの腸内細菌科の細菌が原因となります。
臨床症状と身体所見
典型的な症状は、38℃以上の高熱、悪寒戦慄、片側性の**腰背部痛(側腹部痛)**です。多くは片側性に出現します。さらに先行または併発する膀胱炎症状として、頻尿・排尿時痛・残尿感・尿混濁などがみられます。
身体所見で特徴的なのが肋骨脊柱角(CVA:costovertebral angle)の叩打痛です。CVAとは背部で第12肋骨と脊柱がなす角のことで、患者の背側からこの部位を軽く拳で叩いて誘発される圧痛をCVA tendernessといい、腎盂腎炎を強く疑う所見となります。
検査
診断には中間尿の細菌培養が重要です。中間尿は外尿道口を清拭したうえで、排尿開始後の中間部分を採取することで雑菌の混入を防ぎます。尿沈渣では膿尿・細菌尿・白血球円柱が確認され、血液検査では白血球増多やCRP上昇など炎症反応の上昇がみられます。
治療と看護
治療の中心は感受性のある抗菌薬の投与で、経験的にはセフェム系やキノロン系などが用いられ、培養と感受性結果に基づいて調整します。加えて十分な水分摂取で尿量を確保し、細菌を尿とともに洗い流すこと、安静、解熱・補液が基本です。
看護では、水分摂取の促進、尿意を我慢しない・性交後に排尿するなどの排尿習慣の指導、陰部の清潔(拭く方向は前から後ろへ)、抗菌薬は症状が軽快しても自己判断で中断しないよう確実な服用を支援します。発熱に対するクーリングや、解熱・症状改善による効果判定も重要です。
複雑性腎盂腎炎と自己導尿患者への指導
基礎疾患や尿路の異常を背景に発症するものを複雑性腎盂腎炎といい、妊婦、糖尿病、尿路結石、神経因性膀胱、尿路カテーテル留置、尿路奇形、男性、高齢者などがリスク因子です。重症化や敗血症を起こしやすく注意が必要です。
広汎子宮全摘術後など排尿障害をきたす患者では自己導尿が行われますが、尿道からの細菌侵入により逆行性に腎盂腎炎を起こす危険があります。清潔操作、カテーテルの適切な交換、十分な水分摂取を指導します。
まとめ
腎盂腎炎は大腸菌を主因とする上行性感染で、発熱・悪寒戦慄・片側性の腰背部痛・CVA叩打痛が特徴です。中間尿培養で診断し、抗菌薬と水分摂取が治療の柱となります。再発予防には排尿習慣・陰部清潔・自己導尿時の清潔操作の指導が欠かせません。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
尿路感染症のうち、腎盂や腎実質に炎症が及ぶものをといい、上部尿路感染症に分類されます。
- 2.
腎盂腎炎の感染経路は、外尿道口から侵入した細菌が膀胱を経て尿管をさかのぼる感染が大半を占めます。
- 3.
尿道が短いため、腎盂腎炎はに多くみられます。
- 4.
腎盂腎炎の原因菌として最も頻度が高いのは(Escherichia coli)で、全体の70〜80%を占めます。
- 5.
腎盂腎炎では38℃以上の発熱、悪寒戦慄に加え、多くは片側性の(側腹部痛)がみられます。
- 6.
背部で第12肋骨と脊柱がなす角を(CVA)といい、この部位の叩打痛は腎盂腎炎を強く示唆します。
- 7.
細菌培養のための尿は雑菌混入を防ぐため、外尿道口を清拭してから排尿開始後のを採取します。
- 8.
複雑性腎盂腎炎のリスク因子には、妊婦、糖尿病、尿路結石、、尿路カテーテル留置などがあります。
- 9.
自己導尿を行う患者には、逆行性感染を防ぐため操作と十分な水分摂取を指導します。
- 10.
腎盂腎炎の治療では症状が軽快しても自己判断で中断せず、を確実に服用することが重要です。
