薬物投与前の安全管理
成人看護学 / 薬理学(横断的)
解説
薬物投与前の安全管理とは、薬剤による有害事象を未然に防ぐために、投与の前段階で患者情報を収集し、薬剤と投与方法を多重に確認する一連のプロセスをいいます。今回は薬物投与前の安全管理について、有害作用の基礎から確認手順、治療薬物モニタリングまでを順を追って解説します。
薬物有害作用の基礎
薬物の作用には、治療目的となる主作用と、それ以外に生じる副作用があります。副作用のうち、生体にとって望ましくない反応を薬物有害作用と呼びます。
有害作用は大きく二つに分類されます。一つはA型(用量依存性)で、薬理作用の延長として現れ、用量を減らせば軽減する予測可能な反応です。眠気や血圧低下、消化器症状などが該当します。もう一つはB型(用量非依存性)で、特異体質や免疫反応によって生じるため少量でも発症し、予測が困難です。薬物アレルギーはこのB型に含まれ、発疹、呼吸困難、血圧低下を伴うアナフィラキシーショックを起こすと致命的になります。
投与前に収集すべき情報
有害作用を予測するために最も重要な情報は、過去の薬剤アレルギー歴です。同一薬はもちろん、同系統薬や交差反応を起こす薬剤でも再発しやすいため、薬剤名、出現した症状、発症までの時間まで具体的に聴取します。造影剤、抗菌薬、NSAIDsはアナフィラキシーの原因となりやすく特に注意が必要です。
あわせて、肝機能・腎機能(代謝と排泄への影響)、年齢、妊娠・授乳の有無、現在服用中の薬剤、市販薬、サプリメント、健康食品、嗜好品まで確認します。家族歴や遺伝的素因(薬物代謝酵素の多型など)も有害作用の感受性に関わります。
投与直前の確認 5Rと6R
投与時の取り違えを防ぐため、看護師は5Rまたは6Rを徹底します。正しい患者(Right Patient)、正しい薬剤(Right Drug)、正しい用量(Right Dose)、正しい時間(Right Time)、正しい経路(Right Route)の五つに、正しい目的(Right Purpose)を加えたものが6Rです。
患者確認はフルネームと生年月日を本人に名乗ってもらい、リストバンドやバーコードと照合します。ハイリスク薬や注射薬では指差し呼称とダブルチェックを行い、調製から投与までの一連の流れで複数回確認します。
治療薬物モニタリング
治療薬物モニタリング(TDM)とは、薬物の血中濃度を測定して投与量を調整する手法です。有効血中濃度域が狭く、中毒域と近接している薬剤で必要となります。代表例には、気管支拡張薬のテオフィリン、強心薬のジギタリス(ジゴキシン)、抗てんかん薬のフェニトインやバルプロ酸、気分安定薬のリチウム、抗菌薬のバンコマイシンやアミノグリコシド系(ゲンタマイシンなど)、免疫抑制薬のシクロスポリンやタクロリムスがあります。
たとえばテオフィリンは有効域をわずかに超えただけで悪心、頻脈、不整脈、痙攣などの中毒症状を起こすため、血中濃度測定が不可欠です。
ハイリスク薬と患者教育
抗悪性腫瘍薬、抗凝固薬、麻薬、インスリン、カリウム製剤、筋弛緩薬などはハイリスク薬とされ、重大な事故につながるため特に厳重な管理が求められます。患者には予測される副作用症状を説明し、自己判断で中断しないこと、異常時はただちに連絡することを指導し、服薬日誌の活用を勧めます。投与前の丁寧なアセスメントこそが、安全な薬物療法の出発点です。
確認問題(穴埋め)
空欄をタップすると答えが表示されます。
- 1.
副作用のうち生体にとって望ましくない反応をという。
- 2.
用量依存性で薬理作用の延長として現れる予測可能な副作用は副作用である。
- 3.
免疫反応を介し特異体質で生じる予測困難な副作用は副作用である。
- 4.
薬物有害作用を予測するために投与前に最優先で確認すべきは過去のである。
- 5.
薬剤投与時の確認事項である5Rは、正しい患者、正しい薬剤、正しい用量、正しい時間、正しいである。
- 6.
有効血中濃度域が狭い薬剤で血中濃度を測定し投与量を調整することを(TDM)という。
- 7.
TDMが必要な気管支拡張薬の代表例はである。
- 8.
アナフィラキシーショックを引き起こす重篤な薬物有害作用は薬物に分類される。
