抗コリン薬の禁忌(緑内障)
成人看護学 / 薬理学(横断的)
解説
今回は抗コリン薬が緑内障で禁忌となる理由について解説します。
抗コリン薬とは
抗コリン薬とは、副交感神経の神経伝達物質であるアセチルコリンの作用を遮断する薬剤の総称です。アセチルコリンは効果器側のムスカリン受容体に結合して作用しますが、抗コリン薬はこの受容体を遮断するため「副交感神経遮断薬」とも呼ばれます。代表的な薬剤はアトロピンで、ほかにスコポラミンや鎮痙薬のブチルスコポラミンなどがあります。
抗コリン薬の主な作用
副交感神経が遮断されると、相対的に交感神経の作用が優位になります。具体的には、散瞳、唾液・気道分泌の抑制、心拍数の増加、消化管運動の抑制、膀胱排尿筋の弛緩などが起こり、口渇・便秘・尿閉・眼圧上昇などの副作用としても現れます。
散瞳が起こる仕組み
虹彩には瞳孔を縮める瞳孔括約筋と、瞳孔を広げる瞳孔散大筋があります。瞳孔括約筋は副交感神経に支配されており、アセチルコリンの作用で収縮して縮瞳が生じます。抗コリン薬を投与すると瞳孔括約筋が弛緩し、瞳孔散大筋の作用が優位となって散瞳が起こります。
緑内障で禁忌となる理由
緑内障とは、眼圧の上昇などにより視神経が障害され、視野が欠損していく疾患です。眼内では毛様体で産生される房水が、虹彩と角膜の間にある隅角を通って排出されることで眼圧が一定に保たれています。 緑内障は隅角の状態によって大きく2つに分類されます。隅角が広く保たれている開放隅角緑内障と、隅角が狭く房水の流出が妨げられやすい閉塞隅角緑内障です。 抗コリン薬を投与すると散瞳が起こり、厚くなった虹彩が隅角をふさいでしまいます。すると房水の流出が急激に妨げられ、眼圧が一気に上昇して急性緑内障発作を引き起こす危険があります。発作では眼痛・頭痛・悪心・嘔吐・霧視などが出現し、放置すれば失明に至ります。このため、特に閉塞隅角緑内障の患者では抗コリン薬は禁忌とされています。
そのほかの主な禁忌
抗コリン薬は膀胱排尿筋を弛緩させて尿の排出を妨げるため、前立腺肥大症の患者では尿閉を悪化させる恐れがあり禁忌または慎重投与となります。また腸管運動を低下させるため、麻痺性イレウスの患者にも禁忌です。なお抗コリン作用はアトロピンだけでなく、三環系抗うつ薬、第一世代抗ヒスタミン薬、過活動膀胱治療薬などにもあり、同様に閉塞隅角緑内障では禁忌となります。
まとめ
抗コリン薬はアセチルコリンの作用を遮断し、瞳孔括約筋を弛緩させて散瞳を起こします。散瞳によって隅角が狭まると房水の流出が阻害され眼圧が上昇するため、閉塞隅角緑内障では急性発作を誘発する危険があり禁忌となります。前立腺肥大症や麻痺性イレウスも重要な禁忌としてあわせて押さえておきましょう。
確認問題(穴埋め)
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- 1.
副交感神経の神経伝達物質であるアセチルコリンの作用を遮断する薬剤をという。
- 2.
抗コリン薬の代表的な薬剤で、散瞳作用や鎮痙作用をもつのはである。
- 3.
抗コリン薬は瞳孔括約筋を弛緩させることでを引き起こす。
- 4.
眼内で毛様体から産生され、隅角を通って排出されることで眼圧を保つ液体をという。
- 5.
緑内障のうち、隅角が狭く抗コリン薬の投与で急性発作を起こしやすいため禁忌となるのはである。
- 6.
抗コリン薬の投与により散瞳が起こり、隅角がふさがれて眼圧が急上昇する病態をという。
- 7.
抗コリン薬は膀胱排尿筋を弛緩させて尿閉を悪化させるため、の患者では禁忌または慎重投与となる。
- 8.
抗コリン薬は腸管運動を低下させるため、の患者にも禁忌である。
